アツい人間ドラマが堪能できるバレエ映画5作
アツい人間ドラマが堪能できるバレエ映画5作
(C) 2016 MITICO – GAUMONT – M6 FILMS – PCF BALLERINA LE FILM INC.
8月12日より、映画『フェリシーと夢のトウシューズ』が公開になりました。バレリーナを夢見るフェリシーの物語です。
現在、他にもバレエに関連するドキュメンタリー映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン』、『パリ・オペラ座 夢を継ぐものたち』が全国で順次公開中。8月下旬にかけて、『ボリショイ・バレエ in シネマ』の上映もあります。
バレエを知るきっかけになる作品が揃っていますので、この機会に新しい世界に触れてみるのも良いかもしれません。
今回は、公開中の3作品と、huluやNetflixで鑑賞できる2作品をご紹介します。
『フェリシーと夢のトウシューズ』 《劇場公開中》
(C) 2016 MITICO – GAUMONT – M6 FILMS – PCF BALLERINA LE FILM INC.
舞台は19世紀末のフランス。施設に育ったフェリシー(土屋太鳳)がバレリーナになる夢を叶えるため、施設を抜け出すところからストーリーは始まります。
あの手この手でなんとかオペラ座のバレエ学校へ入学するものの、バレエの経験はゼロ。先生からもオーディションですぐに落とすと告知される始末。気落ちしていたところ、オペラ座掃除係のオデット(黒木瞳)がかつて世界で一番とも言われるバレリーナだったと知ります。オデットにバレエをイチから教わり猛特訓し・・・。フェリシーは夢をつかんで舞台に立つことができるのでしょうか。
小さい子どもにもわかりやすい、ひねりなしのまっすぐなお話です。「夢を叶えること」が作品のテーマになっていますが、家族のいないフェリシーに、手を差し伸べてくれる大人の存在や味方になってくれる友人の言動にあたたかい気持ちになれる映画でもあります。
フェリシーの努力だけでなく、ずっとフェリシーに手を焼いていた施設の職員がフェリシーの踊りをみて心を動かされる場面も印象的です。
『リトル・ダンサー』(2000) 《huluで視聴可能》
※huluの視聴可能日は2017年8月17日現在のものです。
いま、日本でもミュージカル『ビリーエリオット』が公演中ですが、その元になった映画です。
イギリス北部の炭鉱町に住むビリーが、プロのバレエダンサーを目指します。時代は1984年。当時は、バレエは女性のものだと考えられており、ビリーの父親も大反対しますが、ビリーに才能を感じた地元のバレエの先生が個別でレッスンを続けてくれることに。実際に踊っているところを見た父親も、「夢を叶えてやりたい」と思うようになります。
ついに、ビリーはオーディションを経て名門ロイヤル・バレエ学校に入学を決め、14年後、白鳥の湖を踊るというサクセスストーリーです。
たしかに主役は間違いなくビリーですが、注目したいのはビリーの父親や先生など、ビリーの周りの人たちです。「バレエなんて」と言っていた父が、ビリーの自由な踊りをみて感動し、心を動かされる様子、そこから、お金が必要だと働きに出る様子は涙なしには観られない場面です。
本人の努力こそ成功の秘訣かもしれませんが、周りの支えや応援なしには達成できないことを強く感じさせられる作品です。ビリーの才能を見い出し、無償で指導した先生との出会いもビリーの人生を大きく変えました。
そういった、本人をとりまく環境や周りの人々の強さに感動できる作品になっています。世界中でミュージカルとして上演されていますが、その元になったこの映画も見逃せません。
『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン』《全国順次公開中》
(C) British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016
ここからは、ドキュメンタリー作品の紹介になります。
タイトルにもある、セルゲイ・ポルーニンは実在する人物であるどころか、現在27歳。
それでもすでに、世界のトップと言われているロイヤル・バレエ団の最年少男性プリンシパルを19歳で経験し、22歳のときに電撃退団をするという波乱の人生を送っています。
(“プリンシパル”とは、バレエ団のトップのことです。任命されて就任し、基本的には主役しか踊りません。)
この「電撃退団」があまりに大きくな話題だったようですが、セルゲイ・ポルーニンが生まれてからロイヤル・バレエ学校に入学するまでの経緯や、家族構成、家族関係などにも迫りながら、再び注目を集めたミュージックビデオ出演など、彼のこれまでの人生を描いています。
一見、”普通の人”に見えてしまうセルゲイ・ポルーニンですが、踊り出すと、目を見張るほど解き放たれて、自由な動きをするのが素人からでもわかります。
作品の中でも描かれているトップオブトップとしての苦労や苦難は、想像することはできても、理解するのは難しいです。
それでも、こんな風に世界で戦っている人がいることを知ることができるという点で、観る人の大きな収穫になるのではないでしょうか。
『パリ・オペラ座 夢を継ぐものたち』 《全国順次公開中》
(C)DelangeProduction 2016
あくまで筆者の意見ですが、様々なリハーサルやインタビューに飛び飛びで進むため少々難しく感じました。
ドキュメンタリー映画というと、セルゲイ・ポルーニンのように人生を描くことで時間の流れを表現していたり、一つの物事を軸に置きながら、様々な角度から見たことを映像化していたりすることがほとんどですが、この作品は、舞台裏のリハーサル風景と、指導者のインタビューが繰り返されるのみ。
バレエのことを知らない中で鑑賞したのもあって、それがどの公演のどの舞台裏なのかということすら把握できませんでした。
それでも、自分の知らない世界で情熱を注ぐ人がいるということを目の当たりにすることができました。わからないけれど見入ってしまうほどのパワーが画面から伝わってきました。
そして、二作品に共通して出てきた「ヌレエフ」という存在。
ルドルフ・ヌレエフはソ連生まれのバレエダンサーです。1938年に生まれ、1993年に亡くなっていますが、いまのバレエダンサーが憧れ、目標にするような、名実ともに素晴らしい人だったようです。
17歳でバレエ学校に入学し、その後自身もバレエダンサーとして活躍しますが、反抗的な態度で政府に警戒されることもあり、一度亡命をしています。オーストリア国籍を取得してからは振り付けやパリ・オペラ座の芸術監督に就任してバレエに携わりました。
どちらの作品も、ドキュメンタリーではありますが、バレエそのものや、ダンサー自身に注目することができます。
ただ、専門用語が出てきたり、それぞれ80分強ありますがものすごく単調だったりと、バレエに全く興味がない!という方には難しい作品になっているかもしれません。しかし、バレエを知らないと楽しめないわけではなく、バレエにいま生きている人たちを、画面を通じて知ることができる貴著な作品です。
『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』(2011) 《Netflixで視聴可能》
※Netflixの視聴可能日は2017年8月17日現在のものです。
もうひとつ紹介したいのがこちらの作品。 世界中でバレエを頑張る10代が、バレエ団への入団権、バレエ学校への奨学金をかけてコンクールに挑むドキュメンタリーです。
2時間ほどの作品で、全部で6名を追っているのでそれほど深堀りはされていませんが、バレエにかける想いや、練習風景が記録されています。
5,000人規模の大会、最終選考に残るのは300人弱というなかで、6名とも最終選考に残るので、少し出来すぎた感じが否めませんが、故郷を離れて生活している人や、アフリカの孤児院から養子でアメリカに来た人、ケガ、親からのプレッシャーなど、それぞれの境遇で、それぞれが力を尽くします。
熾烈な争いにはゾっとしてしまいますが、一人ひとりが奮闘する様子には胸がアツくなりますよ。
まとめ
筆者はこれまでバレエに触れることがほとんどありませんでしたが、今回、こうして5つの作品を鑑賞し、バレエに生きる人々のアツさに圧倒されました。つい先日まで「バレエには興味がない!」と思っていたけれど、人生をかけて、時間をかけて、ひとつのものに没頭する人たちはみなパワーがあり、強さがありました。さらには、家族や先生といった周りの人たちが、夢を重ね合わせて奮闘する様子にも、心が動かされます。
もちろんこれはあくまで一例ですが、まだまだ暑い日は続きそうですし、外に出たくないという方も、ぜひ映画を鑑賞して心をアツくしてください!
(文:kamito努)
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