錦戸亮の繊細な演技が光る!『羊の木』は衣装にも注目を
山上たつひこさん(原作)、いがらしみきおさん(作画)の漫画作品が原作で、今回初めて映像化されました。
監督は『桐島部活やめるってよ』(2012)、『紙の月』(2014)などの吉田大八さん、そして錦戸亮さんが主演を務めています。錦戸さんは、『抱きしめたい-真実の物語-』(2014)以来、4年ぶりの映画出演、主演となりました。
今回の「シネマズ女子部」では、錦戸さんをはじめ、『羊の木』に出演した注目の男性キャストをご紹介します。
映画『羊の木』あらすじ
過疎対策として仮釈放された元受刑者(登場するのは全員人殺し)たちを受け入れる制度を実施した、架空の町・魚深(うおぶか)が舞台になっています。
主人公である市役所職員の月末(錦戸亮)は、元受刑者6名の受け入れを命じられ、関わりを持つことになります。その6名は、一見目立った部分のない人たちですが、絶妙に感覚がズレていたり、普通なら考えにくいちょっとしたきっかけで大騒ぎになったりします。
そして、6名のなかでも月末ともっとも近しい、宮腰(松田龍平)にも異変を感じるようになり…。
月末一(つきすえ はじめ)役 錦戸亮
まずは主演の錦戸亮さんです。押しの弱いタイプのキャラクターですので、いかにも主人公らしい主人公ということはなく、ごく普通の職員で、人のよさが雰囲気からにじみでていました。
架空の町、架空の制度を根底にストーリーが展開している今作で、空想的な部分と、心情や人間関係といったリアルな部分をうまく取り持っていたのが錦戸さん演じる月末でした。この世界の人間関係におけるバランサーの役割を担っていましたね。
錦戸さんは、関ジャニ∞、引いてはジャニーズのなかでも“演技派”と言えるでしょう。ドラマ『パパドル!』(2012)では本人役を演じている、俳優としても異色の経歴の持ち主です。
元受刑者6名が奇抜な分、普通であることに徹底した錦戸さんのお芝居は受け入れやすかったです。その中でも今回注目したいのは、服装です。月末は、主人公ながら多くを語るタイプではなかったので、服装の違いと、本人の心情を重ね合わせて注目するとより面白く、わかりやすく映画が楽しめる気がします。
市役所で務めていることから基本的にスーツ姿ですが、仕事以外のプライベートな時間でも、スーツ姿でいる場面がいくつかあります。
密かに好意を寄せている文(木村文乃)や同級生の須藤(松尾諭)とバンド演奏をする場面でも、私服とスーツ両方ありました。どちらもベースの演奏を楽しんでいる様子ではありましたが、鑑賞後に考えてみると、月末の心情を表していたのではと感じます。
とくにクライマックスの場面では、身に危険を感じながらうたた寝してしまう一面も覗かせながら、スーツ姿だったのは象徴的でした。
ただ服装が違うだけでなく、お芝居でラフな様子を醸し出す一方で、仕事のときには表情が引き締まっていたのも見どころです。さらに、関ジャニ∞として、ギターやベースの演奏をしている場面を見たことがある人も多いと思いますが、劇中ではそれとはまた違った印象を受けたので、楽しめました。
宮腰一郎役 松田龍平
宮腰について語ってしまうと、多くがネタバレになるのが残念ですが、序盤の登場シーンから結末まで異様な雰囲気を漂わせています。
そのオーラに戸惑いながらも、月末なりに宮腰を受け入れようとする様子や、文との関わりも描かれていて、後半になるにつれてハラハラさせられる展開でした。
最初から妙に噛み合わない会話のテンポや、声のトーン、テンション、服装、月末らのバンドへの参加、どれをとっても違和感があって、後味の悪さも松田さんさすがでした。
杉山勝志役 北村一輝
もっとも<殺人犯>らしかったのが北村一輝さん演じる杉山です。
不穏な空気感を漂わせているのですが、鑑賞していると完全にその雰囲気に騙されてしまうので、作品の結末でおどろかされることになります。
歩き方、服装、そして常にカメラを持ち歩きゴシップ好きな一面があるなど、視聴者が勝手に怪しく感じてしまうものですが、自分が普段、どんな要素で他人を判断しているのか気づかせてくれる存在になっているかもしれません。
田代翔太役 細田善彦
個人的に注目したのが、月末の同じ課の後輩にあたる田代です。本来、元受刑者の受け入れプロジェクトは月末と課長しか知りませんでしたが、田代が課長のパソコンを盗み見て、この問題に介入してきます。
ミーハーなテンションに態度、行動は、現代の世間を象徴しているようにも受け取ることができます。
偶然かもしれませんが、演じた細田さんは長身で、元受刑者6名とまっすぐに向き合おうとする月末と、身長差から物理的に俯瞰する構図になったのもキャラクターに合っていて効果的でした。
『羊の木』は鑑賞後に考える時間が必要
主人公・月末を演じた錦戸亮さんは、劇中でも素朴なかっこ良さがあるのですが、映画『羊の木』は、ビジュアル的なことにとどまらず、一つひとつの行動や言動を振り返ってじっくりと考え、自分なりの解釈を楽しみたい作品でもあります。
ちなみに、原作である漫画も全5巻で完結していますが、映画は、完全オリジナルの結末になっているそうです。映画での疑問点や、もう少し深堀して欲しかったという部分は、原作を読むとスッキリするかもしれませんね。
公開がはじまったばかりですので、ぜひ劇場でご覧ください。
(文:kamito努)
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