青春映画としてもグッとくるものになった─『デメキン』佐藤現プロデューサー独占インタビュー
2017年12月2日(土)公開の映画『デメキン』。本作は、注目の若手俳優を起用し、芸人のバットボーイズ・佐田正樹さんの自伝的小説を実写化したもの。
この度、今作を手がけた佐藤現プロデューサーのインタビューが到着。シネマズby松竹独占で掲載する。
──そもそも佐田さんの原作を映画にしよう、できると思われたのは?
佐藤現プロデューサー(以下、佐藤):2年くらい前、ヤンキーものというと『クローズ』とか『ドロップ』といったヒット作がある中で、これはまた違った面白さ、魅力がある原作だなと思いました。
──どんな点からこれはイケると思われたのでしょう。
佐藤:ただ単にケンカをして、誰が一番強いみたいなものには、僕自身は乗り切れないんです。もちろんそういう作品があってもいいんだけど。
佐田正樹さんの小説は実話で、生の言葉で書かれていますが、もともといじめられっ子だった少年が、自分を変えようとして拳を握って立ち上がったところから仲間が増えていく。
そうした初期衝動、原点みたいなところに共感できたんですね。そこがおもしろい、グッとくるなと。
──いじめられて…という部分は時代を超えますが、暴走族に関しては、実際には今はほとんどいませんよね。
佐藤:そうですね。我々の時代だと暴走族も身近にあったものでしたが、今の子たちには一種のファンタジーで、憧れがありつつ、ちょっと引いたところから俯瞰で見ているみたいな感じがあるかもしれませんよね。
ただ、この作品の場合は実話がベースですし、当時の彼らのリアルな気持ち、人間くさいものを持ちこめたら、今の若者にも共感してもらえると思いました。
──脚本は『百円の恋』でも組まれた足立紳さんです。
佐藤:『百円の恋』や『14の夜』を一緒にやってきました。足立さんの脚本の根底にある、自分のことを嫌いな人間が何かアクションを起こして、少し変わろうとする瞬間を捉えたようなところにすごく共感するんです。
今回、佐田さんの原作を足立さんが、と聞くと、一見、ミスマッチだと感じる人もいるかもしれません。でも僕としては主人公の少年の初期衝動を大事にしたいという思いがあったので、足立さんにお願いしました。
佐田さんとしては、そこも大事にしてほしいけれど、ヤンキー映画としてのカタルシスを感じたいという考えも強かったので、すり合せながら進めていきました。
──山口義高監督に期待したところは。
佐藤:山口監督は、三池崇史監督をはじめ、数々の名監督の現場を助監督として支えてきた優秀な方でもあり、監督として着実にキャリアを積んでこられた、非常に現場からの信頼の厚い人。
そして、彼が本質的にこうした男のドラマをやりたいと思っていたということも知っていたので、ぴったりくるなと。山口さんがもともと原作を読んでいて、非常に感銘を受けてやりたいと言っていた熱もありましたしね。
──映画的な脚色もあります。ラーメン屋さんの設定など、とても好きです。
佐藤:ラーメン屋さんね。坂田聡さん演じる店長がいいですよね。どこか大人との接点もつけたかったんです。
彼らにとっては、今目の前にあることが全てで、真剣なんですが、やはり彼らの世界の中での出来事でもある。そうしたなかで、先んじて厚成が大人になっていくわけですが、成長していく彼らを俯瞰で見守っている大人をひとり作ろうと思ったんですね。そうすれば大人の目線から観ても響くものになると。
──厚成(演:山田裕貴)の役もかなり厚いものになりました。
佐藤:そうですね。正樹と厚成、ふたりの絆の物語にしようと。小説でも漫画でも、さまざまな登場人物が出てきますが、群像劇にするより、彼らふたりのバディ感を大事にしていったほうがおもしろくなると思ったんです。あまり散漫にならないように、1対1の関係を軸にしようと考えました。
──映画初主演の健太郎さんは現場ではいかがでしたか?
佐藤:素晴らしかったですね。期待以上でした。当時彼はまだ19歳で、周りは、ほとんど同世代以上だった。山田くんも年上ですし。
フィクションという映画の世界で役を演じるとはいえ、疑似的な族のようになっていくなかで、彼は頭で居続けなければならない。芝居プラス座長としてのプレッシャーが相当あったと思う。それをすごく頑張ってくれたし、芝居もよかった。命がけでやってくれたと思います。
厚成がやられて、鏡の前で覚悟を決めて顔つきが変わっていくシーンなんて、特に好きですね。
全員が集まった本読みのときに、健太郎くんが挨拶をしたんです。「みんなの頭として引っ張っていくので、付いてきてくれ」と。年上も多いなかで宣言した、とても男らしい瞬間だったし、覚悟を決めたのが伝わってきた。
それに対してみんなが、役のうえだけでなく、彼が総長で頭なんだという意識で応えていました。アップの瞬間には、みんなで健太郎くんを胴上げして、彼は男泣きしてました。そういうチーム感が素晴らしかったです。
──ビジュアルの面などで意識されたことはありますか?
佐藤:いま見て、「古いな」という感じにはしたくなかったので、バランスは考えましたね。ただ特攻服なんかは、完全に再現しているし、実際の当時の暴走族の人が見ても懐かしいと思うはずです。
バイクも旧車会の皆様にご協力いただいて撮影して、音にも本物を求めました。その辺のリアリティと今のかっこよさの両面を抑えるようにしました。
──出来上がった作品で特に満足している部分は? また、観客にメッセージをお願いします。
佐藤:見せ場というところでいうと、ラストの大立ち回りみたいなものは、あれだけの人数でやれることってそうはないし、やりきった感があります。そうして見応えのあるアクションにできました。
あとはやはり最初の出発点でもある、もともと自分を変えようとして、自ら拳を握ってアクションを起こしたところから、仲間が集まってきて、周りも変わっていくという人間ドラマ、健太郎くん演じる正樹の成長物語としてきちんと描けたなと。そこはヤンキーものを観たい人だけじゃなく、青春映画としてもグッとくるものになったと自負しています。
すごく魅力的な若いやつらが、自分のなかの熱いものをぶつけ合って輝いている。その瞬間を見てあげてほしいし、見た人も、一緒に熱くなれるんじゃないかなと思います。
映画『デメキン』は、12月2日(土)より、シネマート新宿ほか全国ロードショーです。
(C)よしもとクリエイティブ・エージェンシー/ワニブックス/秋田書店・ゆうはじめ (C)2017 映画『デメキン』製作委員会
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