映画コラム
『ブレードランナー 2049』を観る前に知ってほしい9つのこと!ネタバレなしで魅力を全力で語る!
『ブレードランナー 2049』を観る前に知ってほしい9つのこと!ネタバレなしで魅力を全力で語る!
10月27日(金)より、『ブレードランナー 2049』が公開されます。どのように楽しめば良いのか? また事前に知っておくべき情報とは? ネタバレなしで、解説いたします!
1:前作『ブレードランナー』とは? 愛された理由の1つは“奥深さ”だった。
本作は、35年前(1982年)に公開された『ブレードランナー』の正当な続編です。今でこそSF映画の金字塔と呼ばれる作品ですが、実は当時の興行成績は決して成功と呼べるものではありませんでした。
その理由は一概には言えませんが、単純に“内容が難しい”ことも一因でしょう。哲学的な思考を促す場面が多く、物語や画のトーンも暗く、その少し前に大ヒットした『スター・ウォーズ』のような胸躍るアドベンチャーも、同時期に公開された『E.T.』の親しみやすさも、ほとんどなかったのですから。
しかし、『ブレードランナー』は現在に至るまで、カルト・ムービー(一部で熱狂的なファンを持つ映画)として、世界中で愛されています。それは、(詳しくは後述しますが)後世のありとあらゆるSF作品に影響を与えたほどの革命的な内容であったことと、“観るたびに新しい発見がある”という奥深さがあったためでしょう。
シーンの1つ1つに至るまで「あれはこういうことだ」などと議論が活発化し、製作上のミスや矛盾点を含めて様々な考察がなされています。日本のテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』がそうだったように、あえて“想像や考察の余地を残す”ことにより、さらなる面白さを生み出しているのが、この『ブレードランナー』という作品なのです。
2:前作が後世のSF作品に与えた影響とは?
『ブレードランナー』が革新的であったのは、ひとえにその世界観の構築にあります。雨の降りしきる夜のビル群、貧富の差が広がっている“ダークな近未来”は後のSF作品に多大な影響を与えました。
その一例を挙げるのであれば、日本のマンガ(それを原作としたアニメ映画)の『AKIRA』や『攻殻機動隊』、ゲームの『ファイナルファンタジーVII』などです。いずれも大都会がメインの舞台になっていますが、そこにはまったく華やかさはなく、無機質で暗い背景がほとんど。いずれの作品も希望に溢れた物語ではなく、むしろ“望まれない未来”が描かれているからでこそ、その世界観が大きな魅力となっていました。
35年という月日が経った今『ブレードランナー』を観ても、その世界観の独創性、完成度に圧倒されます。新宿歌舞伎町を参考にしたという日本語の看板や食文化、リアリティのある“有り得そうな未来”の描写の数々を観ているだけで、存分に楽しめるでしょう。
3:前作の魅力はそのまま、いや、さらに“深化”をしていた!
さて、前作『ブレードランナー』の魅力は、以上に挙げたように、
(1)何度観ても新しい発見がある奥深さ
(2)独創的な近未来の世界観
この2つが非常に大きくなっています。
では、今回の『ブレードランナー 2049』はどうか? と問われれば、「その魅力を完璧に踏襲している、いやさらに“深化”をしている!」と断言できます。
物語上のネタバレは一切できませんが、新たな主人公“K(ライアン・ゴズリング)”の抱えている問題と、前作から時が経ったことによる、新たに生まれた世界の脅威……それら全ての要素が有機的に絡み合い、先が読めない面白さを構築し、かつ様々な思考を観客に投げかけてくるので、グイグイと物語に引き込まれることでしょう。
ビジュアルの美しさ、荘厳さも、リアリズムも筆舌に尽くしがたいものがあります。衣装、セット、ライティングなど、どれもが一級品で、シーン1つ1つが絵画のような仕上がりになっていました。大ベテランの撮影監督ロジャー・ディーキンスの仕事ぶりも、ここに来てキャリア随一と言って良いほどに完璧!
繰り返しになりますが、『ブレードランナー』の大きな魅力であった“物語の奥深さ”と“近未来の世界観”を本作『ブレードランナー 2049』にも期待するのであれば、それが裏切られることはまずありません。本作が批評家から絶賛されているのは、この前作の多大なリスペクトがあったおかげでもあるのでしょう。
ちなみに、本作『ブレードランナー 2049』を手掛けたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によると、今回の気候は自身の出身地であるカナダで過ごした“最悪の日々”が元になっているらしく、前作にはない“雪”や“ぬかるみ”という要素も登場しています。前作の世界が、さらに“広がり”を見せたというのも、ファンには嬉しいところです。
4:人造人間“レプリカント”とは?
本作および前作『ブレードランナー』には“レプリカント”と呼ばれる人造人間が登場します。このレプリカントは、物語を読み解くための、最も重要なキーワードと言っても過言ではないでしょう。
フィリップ・K・ディックの原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』では、実はレプリカントという言葉は使われておらず、人造人間はアンドロイドと呼ばれていました。なぜ映画化する際に新たな造語を作ったかと言えば、「アンドロイドでは、まるで“ロボット”のように無機質な存在であるかのような先入観を与えてしまうから」というのが理由だったようです。
前作を観てみると、レプリカントは限りなく人間に近い存在として描かれていることがわかるでしょう。人間との違いは、肉体的に強靭であることや、他者の共感能力に乏しいため“検査(質問の繰り返し)”により識別できる程度のことなのです。
また、前作においてレプリカントは、地球上では違法な存在として、彼らを取り締まる捜査官“ブレードランナー”に追われ続けなければならなくなっていました。
前作の物語を追っていくうちに「人間とレプリカントに違いはないのではないか?」「レプリカントたちを容赦なく処刑する主人公(ブレードランナー)のほうがよっぽど非人道的なのではないか?」といった疑問がふつふつと湧いてくるのではないでしょうか。
この“疑問”こそが、物語の最も重要なものと言ってもいいでしょう。そのような疑問に対して、観客それぞれが考えた“答え”こそが、例えようもないほどの感動をもたらしてくれる。それが『ブレードランナー』という作品なのですから。
疑問からさまざまな“答え”が導きだされる面白さは、本作『ブレードランナー 2049』でも健在です。今回の主人公であるブレードランナー“K”が何者であり、また彼の恋人の正体は……? 彼らは人間なのか? レプリカントなのか? それとも……? ネタバレになるので一切言えませんが、それらを“知っていく”過程には、上質なミステリーを観たかのような満足感が得られるでしょう。
5:前作は観ておくべき? 本作だけでも物語は理解できる?
これまで書いてきたように、本作は『ブレードランナー』の35年ぶりの続編であり、劇中でそれとほぼ同じ時間(30年)が経過している、物語としても完全に“続き”になっている作品です。ともすれば、「前作を観ていないと話がわからないのでは?」と危惧している方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、「なるべく前作を観ておいたほうが良い」でしょう。設定や世界観が理解しやすくなることもさることながら、前作からあったさまざまな哲学的な疑問、今回から登場する新たな設定の謎も、さらに“解き明かしやすく”なるのですから。
もっとも、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は先日の記者会見にて「今回の映画だけを観ても分かるように作られています(が、できれば若い世代にも前作を観て欲しいです)」と発言していますし、物語自体は“不可解な事件の謎を解く”という一種の刑事もののようなシンプルさがあるので、本作だけ観ても話そのものは十分に理解できます。本作を先に観て、後から前作を復習する、という見かたもアリなのかもしれません。
しかし、個人的にはやはり「前作を先に観て欲しい」と強く願います。映画評論家の町山智浩さんも「本作を観る前に、『ブレードランナー』の一作目は絶対に観ておいてください。それは理解のためというより、“心の問題”です。観ていると、泣けるんです」とラジオで発言されており、筆者もこれに完全に同意します。前作で起こった出来事を知っているからでこその、“心を揺さぶる”感動が、そこにはあったのですから。
ちなみに、『ブレードランナー』には5つのバージョンが存在しています。「ファイナル・カット」が最も高画質かつ、細かいミスも修正されている最新版なのですが、初めて観る場合は主人公のナレーションが追加されている「オリジナル劇場公開版」を選んだほうが、とっつきやすいかもしれません。
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