映画コラム

REGULAR

2017年11月01日

『彼女がその名を知らない鳥たち』松坂桃李の愛撫は最高、それ以外は最低最悪(※褒め言葉)の傑作を見逃すな!

『彼女がその名を知らない鳥たち』松坂桃李の愛撫は最高、それ以外は最低最悪(※褒め言葉)の傑作を見逃すな!


2:映画史上最悪の食事シーンを見逃すな!


彼女がその名を知らない鳥たち


(C) 2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会



前述した通り、阿部サダヲが演じている役は、その出で立ちだけで嫌悪感がいっぱい、勝手に愛情を叫び続ける一方で、食事の食べ方が無神経極まりないという最悪な人間です。原作でも彼のイヤすぎる食事シーンや、病的なまでの不器用さがねちっこく書かれていましたが、映画でも(原作からアレンジが加えられていた)阿部サダヲの“食べる時の行動”が本当に汚らしくて、心の底からゲンナリできるでしょう。

特筆すべきは、「映画史上最悪なのではないか」と思ってしまうほどの、凶悪な食事シーンが劇中に登場すること! 映画における食事には、登場人物の人間性や、その時の状況を表していることがよくありますが、本作にいては“食べるもの”も“タイミング”も、これ以上なく最悪なのです。

これまでも、『かしこい狗は、吠えずに笑う』や『二重生活』(2016年)、そして『葛城事件』など、最悪な食事シーンが描かれた、良い意味でイヤな気分になれる日本映画はありましたが、本作では“見た目”のインパクトも相まって本気で吐き気がしました。ここまで来るといっそスガスガしく、むしろその食事を食べたくなるほどですよ!(ちなみに、『葛城事件』の監督である赤堀雅秋は、本作で刑事の役を演じていました)

この食事シーン以外にも、白石和彌監督の細かい演出は行き届いています。たとえば、たびたび登場人物の背景には、“関係のない一般人”が映るのですが、それが登場人物の行動との“対比”になっていたりするのです。これは原作小説にも少し描写されていたことですし、間違いなく意図的なものでしょう。

蒼井優演じる最低女が、嫌悪感でいっぱいのはずの男(阿部サダヲ)から離れらないという状況も、映像だからこその説得力で見事に描かれています。部屋の暗くてイヤな雰囲気、なかなか換気もしないという状況は、そのまま彼女の“嫌いなのに一緒にいてしまう”という心理を表しているかのようでした。

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