見たら誰かと話したくなる!エマ・ワトソン主演『ザ・サークル』公開記念トーク
2017年10月24日(火)、『ザ・サークル(11月10日公開)』の公開に先立ち、ブロガー向け試写会&アフタートークイベントが開催されました。トークゲストは、さまざまなSNSを活用しながら活躍の場を広げている作家・ブロガーのはあちゅう氏と、映画ソムリエの東紗友美氏。司会はシネマズ松竹編集長の柳下修平が務めました。
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本作は全米で大ベストセラーを記録した同名小説『ザ・サークル』が原作。監督はサンダンス映画祭でその才能が認められ、『人生はローリングストーン』でインディペンデント・スピリット賞2部門にノミネートされた気鋭の監督、ジェームズ・ポンソルト。
まず、本作を見た感想について、お2人から感想をいただきました。
東紗友美(以下、東):最初に思ったのは、めちゃくちゃバランスがいい映画だなということ。これまでSNSが物語の重要な役割を担った映画は幾つかありましたが、SNSの悪い部分ばかりを取り上げていたり、善悪をテーマにした作品がほとんどでした。
でも、『ザ・サークル』はSNSの良い部分も散りばめられていて、バランス良く描かれているところが良かったと思います。
はあちゅう:私はSNSにのめり込んでしまうとこうなってしまうんだという点で、リアリティがあるなと思いました。特に主人公のエマ・ワトソンは最初SNSに慣れていない役で、慣れていない人が真面目にSNSを更新していくと逆にハマってしまい、SNSと現実の区別がつかなくなっていくのが、すごく生々しかったですね。
シネマズ松竹編集長 柳下修平(以下、柳下):お2人はSNSにハマってしまう危険性について、どう思いますか。
東:私は基本的に、SNSをやって良いことばかりだなと思っています。Instagramのおかげで普段の自分なら絶対に行かないような場所に行くキッカケになったり、自分の中で「ちょっと背伸びした思い出」ができるようになりました。
ただ1つだけダメだったなと思うのが、Facebookにのめり込んでいた頃、元カレのストーカを明け方まで毎日やっちゃっていたこと。
元カレを全員チェックしていたから、すごく大変で。どういう人にタグ付けされたかとか、どんな人に誕生日コメントをもらっているかをチェックしていると、本当に10時間くらい経っちゃう。
はあちゅう:でも、元カレが誰に誕生日を祝われているかを知って、どう思うの? ふーん、で終わらない(笑)?
私も同級生や元カレを検索したことはあるけど、SNSを使っていない人のほうが気になるかな。ググって出てくる人は近況が分かるけど、出てこない人は今どこで何をしているんだろうと思って。
SNS中毒レベルがわかる!?
柳下:はあちゅうさんは、SNSを使う上でのバランスについて、どうお考えですか。
はあちゅう:私は自分にとってバランスの良い感覚で使っているんですが、たぶん普通の人の「のめり込んでいる状態」が私の普通なんだと思います。
旅行中でもずっとネットを見ていたり、Twitterでつぶやこうと思ったりするけど、旅番組に出演したときに同じように過ごしていたら「旅行中もネットに触っている」と批判されたことがありました。
私にとってネットで情報を仕入れてシェアしたりするのが、自分の趣味だし楽しみだから、それが自分にとっての旅の楽しみ方なんですけどね。ただ、「いいね!」数が気になったり、ネットのために行動を変えることはないかな。
SNSのフォロワーが多いと、自分の発言が思ってもいなかった方向で取り上げられたり、切り取って使われたりしてしまうことがあるんですね。なので、例えば3連続のツイートであれば、1つだけが切り取られても文脈が変わらないように、前後のツイートがあることが分かるような接続詞を付けたり、いろいろ気をつけています。
柳下:自分の中にSNSの価値観があればバランスは取れると思いますが、『ザ・サークル』で描かれているのはバランスが取れないマジメな主人公ですよね。SNSの価値観を持っていない人は、もしかしたら映画を見ても消化しきれないかもしれません。
はあちゅう:たぶんSNSにのめり込んでいない人が見ると、「やっぱりSNSって怖いものなんだ」と距離を感じてしまうと思います。
この映画は、自分の「SNSへの中毒具合」がある意味わかる作品なのかなと感じました。「私はここまでしないな」というように、自分と照らし合わせることができるからこそ、楽しめる映画なのかもしれないですね。
東:私は結構のめり込んでいるほうだと思いますが、この映画を見てSNSリテラシーを再認識しました。
前半にあるシーンで、鹿の角のシャンデリアが出てきましたよね。「あ、コレは絶対に動物愛護団体系のネタになるから、載せないほうがいいな」ってすぐ思ったんです。『ザ・サークル』では、SNSの怖さと群集心理の怖さ、両方が描かれていたように思います。
はあちゅう:私はあのシーンを見て、炎上度合いが甘いなって思っちゃいました(笑)。
ネットに出して初めて「これは違反なんだ」「私って普通じゃないんだ」と分かることもあると思うんです。ただ知らなかっただけで、悪気ない人が責められる世の中になってしまう怖さも、『ザ・サークル』では描かれていると思います。
正義感を振りかざしてしまうのは、すごく気持ち悪いなと思いました。自分が圧倒的に正しいと思っている人が暴走したとき、歪んだ世界になっていくんだなって。
「この人とSNSについて話したい」という人と一緒に見てほしい
参加したブロガー・インフルエンサーからも、「映画が進むにつれて、別世界というか”透明化”を強いられる感じが気持ち悪くなってしまった」という声や、「人は”みんな”の意見に流されてしまいがち。例えば99対1で意見が分かれたら、その1人の発言は黙殺されてしまうのでは。そういうことを考えるフックになった作品」というような感想をいただきました。
はあちゅうさん・東さんにも、最後に「この映画はどんな人にオススメか?」という質問に答えていただきました。
東:「この人とSNSについて話し合いたいな」と思っている人と一緒に、見に行ってほしいなと思います。
はあちゅう:正直なところ、ラストには納得いかないんですよね。それまで結構リアリティがあったのに、「こうなると怖いでしょ」みたいなメッセージをもらってしまったんです。それを正直に受け止めちゃう人は、あまり見ないでほしいなと思いました。
『ザ・サークル』は、おそらく問題提議の映画なので、「結局テクノロジーって怖いよね」で終わるともったいないと思うんですよ。そういう単純な話ではないので、そこをちゃんと考えられる人に見てほしいなと思います。
(取材・文:筒井智子)
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