映画コラム
たまには趣向を変えたクリスマス。ややコア向けのクリスマス映画6選
たまには趣向を変えたクリスマス。ややコア向けのクリスマス映画6選
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年末の最大のイベント、クリスマス。家族や恋人、友人と楽しく過ごすこの時期に欠かせないのが、そのムードを盛り立ててくれる映画。
というような触れ込みで、毎年この時期になると様々なところで、同じような作品がピックアップされた“クリスマス映画選”のようなものが紹介されているわけだが、たまには少し違う作品を観てみるのもいいだろう。
本稿では“クリスマス映画”を6本取り上げるのだが、キャプラのあの作品や、置き去りにされた子供のお留守番映画や、あのストップモーションアニメは選ばずに、少し変わったチョイスを織り交ぜながら、紹介せずにはいられない作品をピックアップしていこうと思う。
<〜幻影は映画に乗って旅をする〜特別篇:たまには趣向を変えたクリスマスを。ややコア向けのクリスマス映画6選>
『ポンヌフの恋人』
まず1本目は、90年代前半にミニシアターブームを牽引した、レオス・カラックス監督の代表作。ポンヌフ橋で出会った孤独で不眠症の青年アレックスと、失明の危機を抱えた画学生のミシェルが織りなす、鋭利なラブストーリー。
クリスマスっぽさは無いとはいえ、終盤で2人が再会する雪のクリスマスシーンをはじめ、荘厳な花火のシーンに、何と言っても映画会社を倒産に追い込んだ巨大なオープンセット。
まさにカラックスの執念と、フランス映画界の芸術意識の高さをまざまざと見せつけられる驚異的な作品で、一度観たら目に焼き付いて離れないショットが数えきれないほど登場する。
『スモーク』
こちらもミニシアターブームの代表作で、恵比寿ガーデンシネマで驚異のロングランを記録した、心温まるヒューマンドラマ。タバコ屋の店主オーギーや、作家のポールをはじめとした登場人物たちの些細なドラマを、夏からクリスマスに向けてじんわりと掬いあげていく文学的なスタイルは、少し不思議な感覚に陥るはず。
昨年12月に、21年ぶりにデジタル・リマスター版として再上映され、つい先日ブルーレイがリリースされたばかりだ。
『クリスマス・キャロル』
数えきれないほど映画化されてきた、クリスマスストーリーの定番であるディケンズの有名な小説を原作にした本作。そんな数多ある中で、このロナルド・ニーム版をチョイスした理由は、ミュージカル映画としての娯楽性の高さと、名優アルバート・フィニーとアレック・ギネスの存在感。
そして、最近デジタル化の潮流に抗うようにブームが到来している70mmフィルムを駆使した圧倒的に美しい映像。誰もが知っている物語といえども、新たな魅力を発見できる作品と言ってもいいだろう。
『セレンディピティ』
一周回って定番のような作品でありながら、案外フィーチャーされることの少ない本作。ジョン・キューザックとケイト・ベッキンセール共演で、ピーター・チェルソムがメガホンをとった2001年の公開作。デパートで古典的な出会いを果たした男女が、“運命”を信じて再会するまでを描いたロマンティックすぎる一本なのだ。
素敵すぎるボーイ・ミーツ・ガールに、ユーモラスな展開。21世紀に作られた作品ではあるが、どことなく50年代のロマコメ作品を彷彿とさせるところが魅力的。
『君は僕をスキになる』
日本映画からは、斉藤由貴と山田邦子のW主演で89年に公開されたバブリーな本作をチョイス。クリスマス・イブを彼氏と過ごしたことのない2人の女性を主軸に、2人の男性との四角関係が描かれる本作は、企画に秋元康、脚本には本作で初めて映画脚本を手がけた野島伸司と、現代にも通用する豪華な布陣。
それに加え、主題歌には山下達郎の歌うこの季節の定番曲「クリスマス・イブ」となれば、何故この映画がクリスマス映画の定番として語り継がれていないのか、不思議に思わずにはいられないほどだ。
『ラブ・アクチュアリー』
最後を飾るのは、もうここ最近のクリスマス映画の定番にもなっている、2003年制作のオールスタームービー。クリスマス前の数週間を過ごす19人の男女の物語が巧みに交錯し、クリスマス・パーティーと空港のシーンでそれらがすべて繋がる典型的“グランド・ホテル形式”。
イギリス屈指の大スターが集ったキャスティングもさることながら、使われている音楽のチョイス、そしてエンドロールの最後まで徹底した愛に溢れた本作は、何年経っても色褪せない魅力に溢れた、21世紀最高のクリスマス映画なのである。
(文:久保田和馬)
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