『ミックス。』、ガッキーをコメディエンヌへと導いた二人のキーマンとは?
(C)2017『ミックス。』製作委員会
新しいステップを踏む、新しい扉を開く、人にそんな転機を与えるのはやはり人です。それは、たとえどれほどの人気者であっても、どれほどの実力者であっても変わることはありません。“ガッキー”こと新垣結衣にももちろんその転機と思われる時期がありました。
これまでの清純派・正統派美少女から30歳を前にしてコメディへ。見事に転身した影には二人のキーマンの存在がありました。
逃げ恥から早くも一年
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昨年、一大ブームを引き起こしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」、通称“逃げ恥”。
“ムズキュン”“ハグの日”そして“恋ダンス”と多くの流行語を生みだしました。
このドラマの主演を務めたのが“ガッキー”こと新垣結衣。
その後もフジテレビが月9枠復権をかけた「コード・ブルー 3rd SEASON」もヒットを記録、来年の映画化も決まっています。
タレントパワーランキング女優部門や、恋人にしたい女優部門などでトップを飾り、いつにも増して輝きを放っているガッキーが“逃げ恥”からちょうど一年、「リーガル・ハイ」のチームと組んだ新作映画が『ミックス。』です。意外にもここまで純正なコメディ映画は彼女のキャリアの中でも初めてのジャンルです。
最初は清純派・正統派美少女キャラ
(C)2017『ミックス。』製作委員会
実は最初期に出演していたドラマ「ドラゴン桜」や「ギャルサー」ではゴリゴリのギャル系JK役でした。ちなみに、『ミックス。』の回想シーンで本人かどうかわからないほどのガングロギャル姿を披露しています。
そんな彼女がブレイクしたのが映画『恋空』。
実は『恋空』の内容自体は高校生なのに身籠ったり、流産したり、暴行されたり、恋人が末期ガンだったり、また身籠ったり、元カレ元カノなどが入り乱れたりとかなりドロドロなストーリーだったのですが、どういうわけか映画自体は“純愛映画”というパブリックイメージが定着しました。
それもあってか新垣結衣にも=清純派・正統派美少女のイメージが定着していくことに。
その後、ドラマは「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」「パパとムスメの7日間」 (この時のセーラー服は“逃げ恥”で再登場) 「スマイル」、映画なら『フレフレ少女』『BALLAD名もなき恋のうた』『ハナミズキ』『麒麟の翼』などで、そのパブリックイメージそのままの役どころを演じていきます。
転機となったコメディ進出、そしてそれを支えた二人のキーマン
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そんなガッキーがラブコメディーに挑戦したのが、単独初主演作となった月9ドラマ「全開ガール」。かつてポッキーのCMで見せていた彼女の笑顔がやっと映像作品でも見ることができました。
ちょうど実年齢的に学生役から卒業をするタイミングとも重なりました。まぁ、今でもセーラー服姿はちょくちょく披露していたりしますが…。
そして2012年にはそれから足掛け2年以上続く「リーガル・ハイ」シリーズに出演。この「リーガル・ハイ」シリーズの脚本家が今回の「ミックス。」の脚本も担当している古沢良太。この古沢良太がガッキーのコメディエンヌ開花の最初のキーマンです。
映画なら『キサラギ』から『ALWAYS三丁目の夕日』、ドラマでいえば『相棒』に『デート~恋とはどんなものかしら~』までこなすオールラウンドプレイヤーで、“名前が売り”になる脚本家の一人です。最新作『探偵はBARにいる3』も12月に公開されます。
そしてもう一人が「リーガル・ハイ」の合間に出演した「空飛ぶ広報室」の脚本を担当した野木亜希子。その後もガッキー主演作「掟上今日子の備忘録」そして、昨年あの“逃げ恥”こと「逃げるは恥だが役に立つ」を担当しました。
他の野木作品となるとドラマなら「ラッキーセブン」「重版出来!」、映画なら『図書館戦争』シリーズ『アイアムアヒーロー』などヒット作を手掛け、佐藤信介監督とのコラボも多いです。
二人ともまだ40代前半でフットワークも軽く、作品も魅力的に弾けています。
そして『ミックス。』
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コメディ作品の合間で「コード・ブルー」シリーズや映画化もされた「S―最後の警官―」などのシリアスものもこなしているガッキー。“逃げ恥”後も「コード・ブルー 3rd SEASON」に出演していますが、シリアスの中にも少しのズレをさり気なく盛り込むなど、演技の振り幅は確実に広がっているように思います。
そして満を持してコメディに帰ってきたのが映画『ミックス。』です。
古沢良太がオリジナル脚本を書き下ろした完全新作で、監督も「リーガル・ハイ」シリーズでチーフディレクターを担当してきた石川淳一。ガッキーにとっても純正コメディ映画はこれが初めてです。
古沢脚本、野木脚本のどちらにも言えることが、負け組、失敗を抱えている組、戻ろうとしても戻れない組の落とし方が絶妙なところ。決して不快に感じない程度の惨めさが、後々自分の新しい道筋を見つけていくなかで輝き出すキャラクターの魅力を何倍にもしてくれます。
『ミックス。』もまたそんな映画です。ガッキー演じる多満子は元天才卓球少女。会社の卓球部のエースである恋人にも振られ、仕事も辞め仕方なく地元に戻り、かつて自分がしごかれた卓球クラブのコーチをすることになります。
この最初のガッキーの落ちっぷりが最高です。合コン要員からもはずされ、イケメン恋人ができたと思ったら浮気され、その後も悪口・影口言われ放題です。
それを支えるのは瑛太が演じる萩原、ボクシングの元日本ランカーです。と言っても萩原もボクシングでトップを取り切れず、その後のもめ事で妻子から見放されている男。今は工事現場で働いています。この落ちこぼれ二人と周りの仲間たちが誰かを見返すとか、認め直してもらうなどの不純な動機を捨てて、自分たちが新しい一歩を踏み出すためにラケットを振り切り始めると、一気にキャラクターたちが輝き出します。
ちなみびっくりするような豪華キャストが集結して、かなりの大物が1シーンだけの出演で終わったりします。なかでもお薦めはこれまた珍しい姉御肌の元ヤンで現セレブ妻を演じる広末涼子と、中華料理店の店員(日本語片言の中国人)を演じる蒼井優。ともに今までになかった弾けたキャラクターで新境地開拓か!?と期待してしまいます。
半ばガッキーを当て書きしたと言ってもいい映画『ミックス。』は手に汗握って、大いに笑って、ちょっとほろっとさせられたりと多幸感あふれる映画になっています。
(文:村松健太郎)
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