『真・仮面ライダー 序章』まるで怪人? バッタ感丸出しライダー【篠宮暁の特撮辞典・第52回】
■オジンオズボーン・篠宮暁の特撮辞典
ヒーローには見えない? 生々しく生物感丸出し
テレビでもなく、映画でもなく、オリジナルビデオとして制作された作品。幾度となく原点回帰を謳い、制作されてきた仮面ライダーですが、これぞ原点回帰という作品が『真・仮面ライダー 序章』です。
異形の姿になってしまった主人公が苦しみ、葛藤する姿はまさに初期の本郷猛に重なるものがあります。
しかし、ここまでヒーローらしくない仮面ライダーもめずらしく、主人公の仮面ライダーシンは、仮面ライダーには欠かせないライダーキックも持っていませんし、スーパーバイクも当然持っていません。「変身」と、口にすることもなければ、変身ベルトすら巻いていません。
変身過程はまるでバッタの怪人に変身するかのごとく、恐ろしい感じで描かれ、変身後の姿も到底ヒーローには見えない、生々しく生物感丸出しな感じになっています。それでもカッコよく見えてしまうのは、仮面ライダーマジックのなせる技でしょうか。
大人向けでハードなストーリー
平成仮面ライダーシリーズは大人も楽しめる、ストーリーの深さが魅力のひとつとなっていますが、その原点として、この作品も当然影響を与えていると思います。
大人向けに作られた作品だからか、とにかくストーリーがハードで、平成仮面ライダーシリーズでもここまで描いてない、というシーンがちらほら出てきます。
小学生の自分が初めてこの作品を見た時には、怖さとグロさから途中で見るのをやめたほどでした。大人になって見返してみると、この攻めの姿勢にワクワクを感じ、「俺、成長したんだな」としみじみ思ったことを覚えています。
序章というだけあって、この後も続きがありそうな設定があったりしますが、残念ながら序章以降の「真・仮面ライダー」は制作されていません。評判がすこぶるよかったのが逆に映画制作につながり、翌年、『仮面ライダーZO』が制作されることになります。
続編がもし制作されたりしたら、多くの特撮ファンは歓喜の声をあげると思うのですが、作られていないという事実や、ZOにつながったことを含めて、これはこれで完結したのだと思います。
石ノ森章太郎先生の逸話
「真・仮面ライダー」で、やっぱり石ノ森章太郎先生ってすげーな、というエピソードをひとつ。
企画段階で、仮面ライダーのコスプレで楽しんでいた主人公が、本当の怪人の事件に遭遇してしまうという設定があったのですが、当時のスタッフの反対にあい、企画を変更したという逸話が残っています。
この設定でピンと来られる人、結構いるのではないでしょうか? そうです。2010年にスマッシュヒットした映画『キック・アス』に被るものがあります。制作されてないので比べようがないのですが、『キック・アス』よりも20年近く早く、この設定を編み出している石ノ森章太郎先生に感服せざるを得ません。
『真・仮面ライダー 序章』を見て皆さんの血圧をぐいぐいジョウショウさせてみてください。
(文:オジンオズボーン・篠宮暁)
※この記事は、WEBサイト「WB」にて以前連載していたものを、再編集したものです
以前の記事はこちらから
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