『ニワトリ★スター』は超必見の傑作!成田凌の濃厚濡れ場を見逃すな!
(C)映画「ニワトリ★スター」製作委員会
全国公開前の段階で、既に観た人からの評価やレビューがほぼ5点ばかり!という、その作品への高評価ぶりが話題の映画『ニワトリ★スター』。
今回は非常に気になるこの作品を、公開初日の最終回で鑑賞してきた。実は公開直前になって上映劇場が一気に増えるなど、観客の口コミが大きな後押しとなって本作の宣伝や興行に貢献している現象は、正に最近の映画のヒット法則そのものだと言える。それだけにかなりの期待で鑑賞に臨んだ本作だったが、ポスターデザインや出演者の顔ぶれから、多少の不安を抱いていたのも事実。
さて、果たしてその内容と出来は、評判通りのものだったのか?
ストーリー
東京の片隅にある奇妙なアパート“ギザギザアパートメント“、深夜のバーでアルバイトをする草太(井浦新)と楽人(成田凌)は自堕落な共同生活を送っていた。草太の秘密、それは大麻の半端な末端売人である事。天真爛漫で自由気まま、破天荒な楽人。これといった人生の目標もなく、大都会東京の底辺でだらだらと日々を過ごす二人。様々な登場人物が織りなす群像。そして物語は破滅と再生へ。突如、草太達に訪れる“あいつら”の恐怖。街の不良を影で操り暴力団の新たなる形態を司る爬虫類型ヤクザ・八田(津田寛治)と爬部井(阿部亮平)。草太に大麻を卸す不良ラッパーJAY(ペロンヤス)が禁断の扉を開けた時、不穏な影が草太と楽人の運命を捻じ曲げる。
予告編
これこそ傑作!絶対に今すぐ観に行くべき作品だ!
いや、これはとにかく凄いの一言、確かに評判通りの素晴らしい作品だった!ネットの高評価も納得の内容と出来には、鑑賞前は長いのでは?と思っていた134分の上映時間も、文字通りあっという間だった。
とにかく今回圧巻だったのは、タイトル部分と序盤の30分間の展開やポスターデザインから受ける印象を、いい意味で完全に裏切るその見事な展開だ。なにしろ一本の映画の冒頭とラストで、全くテイストが異なってしまうのには驚いた!普通ならこれだけ最初と最後の振れ幅が大きければ、観客に違和感や無理な感じを与えてしまいそうなものだが、本作では、かなた狼監督の繊細かつ大胆な演出により、全く無理な感じを観客に与えないのが見事!
かなた狼監督自身が書かれた同名小説を自ら映画化した本作には、激しいバイオレンスや濡れ場、下ネタがふんだんに盛り込まれていて、それが大きな魅力の一つとなっている。ところが、本来それらとは間逆な要素のはずの、純愛や家族愛、友情も同時にちゃんと描かれているのだ。しかもこの両方の要素がどちらか一方に振り切れることなく、絶妙なバランスを保ちながら最終的に誰も予期していなかった泣ける感動作へ着地するその瞬間や、エンドクレジット後の映像に託された確かなメッセージのおかげで、これなら多くの観客の心を掴むのも無理は無い、そう思わせるに十分な内容となっているのが凄い!
実際劇場で鑑賞した時も、観客層は男女のカップルや若い女性の来客が非常に多い印象を受けた本作。上映後に売店でパンフを購入する人々の列には、本作への熱気とヒットへの確信を感じた、と言っておこう。
後述するが、成田凌の熱演による激しすぎる濡れ場と、中盤の悪意に満ちたバイオレンスシーンに躊躇せず、ぜひ女性の方にも劇場に足を運んで頂いて、ラストの感動を味わって頂ければと思う。
(C)映画「ニワトリ★スター」製作委員会
とても一言では表せない、そのあまりに複雑な中身とは?
バイト感覚で大麻の売人をしながら、気ままな同居生活を続ける草太と楽人。映画の序盤は、彼らの勝手気ままな日常が描かれて行く。昼間から大麻をキメて寝転んでいる楽人と、昼間は大麻の売人として活動する草人。夜バイトしているバーの二階で共同生活している彼らの生活は、ある日訪れた最悪の出逢いにより、予想もしなかった方向へ捻じ曲げられて行くことになるのだが・・・。
一つのジャンルには到底絞りきれないその複雑な内容、これこそが本作の最大の魅力だと言えるだろう。
中でも二人の日常を描いた序盤の30分は、目まぐるしく変化し続ける映像の洪水が観客を襲うので必見!特にアニメーションを使用した二人の夢の中のシーンは、今までに無かった斬新な映像でありながら、強烈な暴力や夢でうなされる程悪趣味なイメージに満ちている。
更に、冒頭でいきなり観客の意表を突いて強烈な印象を残すのが、成田凌演じる楽人と、彼らが住む“ギザギザアパートメント“の管理人を演じるLiLiCoとの、下手なAV顔負けの強烈過ぎる濡れ場シーンだ!それまでのイメージを覆す様な成田凌の濡れ場演技も見ものだが、それを受けて更に熱い演技を見せるLiLiCoがスゴい!この部分だけでも入場料の元は取れるので、是非劇場でご確認を!
今年の助演男優賞は、本作の鳥肌実で決まり!
本作のもう一つの見所は、やはり随所に登場するリアルに嫌なバイオレンスシーンにある。とにかく他人の尊厳や人格など最初から眼中に無い、本当にクズな人間たちによる拷問シーンが描かれる本作。しかも、それがゲーム感覚で行われるという描写は、「うわ、絶対こういう目には遭いたくない!」と思わずにはいられない程。
その中でも、津田寛治演じるヤクザ八田の凶暴さとヤバさは、過去最悪のレベル!完全に他人の痛みや苦しみを理解しないどころか、もはやそうした共感の感情が完全にマヒしてしまった男を、観客の感情を逆なでするかの様に軽快に演じるその名演技は必見だ。
八田たちヤクザが何故これほど残忍な行為に走れるのか?それは、自分には絶対にこうした痛みや暴力が降りかからないと思っているからだ。彼らは、自分達は虫ケラ同然の弱者を高みから見物しながら搾取し、その命も自分達の自由に出来ると思っている存在、そう、ある意味八田たちは自分が神だと錯覚している人間たちなのだ。
八田たちヤクザが繰り返す壮絶な暴力や拷問シーンからの印象により、いつしか観客も楽人たち親子が悲惨な目にあって、草太がその復讐に戻る、そう予想するのだが・・・。
断言しよう、観客のその予想は完全に裏切られる!しかも、そこに展開する光景はあまりに衝撃的で予測不可能なものとなっているのだ。
エンドクレジットの役名にもある通り、このシーンに「神の男」として登場するのが鳥肌実。この男こそ楽人にとっては救世主であり、ヤクザにとっては悪魔(但しどう考えても天罰だが)、そして警察にとっては単なる凶人の異常者という、この複雑な男を見事に演じた鳥肌実の存在感と演技こそ、今年の助演男優賞で間違いなし!
正直、下手な監督がやると完全に映画そのものを破壊し、観客の失笑と失望を買いかねないこの展開だが、かなた狼監督の見事な演出力のお蔭で、これが最高に面白い見せ場となり、後の展開への重要な意味を持つのが素晴らしすぎる!
実はこの部分の展開に関しては、あまりに唐突過ぎる登場との否定的な意見も見られるのだが、良く見て頂ければタイトル映像の中で既にあの男が登場しているのがお分かり頂けるはずだ。
そう、実は本作のタイトル部分の映像には、大量の情報やヒントが隠されているのだが、残念ながら観客がそのことに気が付くのは鑑賞後なのだ。そのため、やはり二度・三度と繰り返しての鑑賞が、より本作を深く楽しむためにはオススメの方法と言えるかも知れない。
リピーター鑑賞やソフト化の際には、是非タイトル部分にも注目してご鑑賞頂ければと思う。
(C)映画「ニワトリ★スター」製作委員会
最後に
将来への希望は無いが、穏やかに流れていた二人の日常の時間。そこに突然入り込んで来た暴力と悪意により、草太と楽人の友情は壊れ二人はついに分かれて暮らすことになってしまう。帰るべき場所がある草太に対し、養父の虐待により帰るべき家も家族も持たない楽人だったが、ようやく心のより所となる家族を手に入れる。だが、今までの気楽な暮らしか知らない楽人に世間の風は冷たく、普通の職に就けるはずも無い。もはや選択の余地が無く、家族のために八田たちヤクザの仕事に手を貸した楽人に訪れる運命とは?
前述した様に、序盤の才気溢れる編集とイメージの洪水に圧倒され、その後に続くヤクザの登場や過激過ぎるバイオレンス描写から、てっきり破滅に向かって突き進む二人の物語が描かれると思われた本作。だが、中盤から映画は緩やかに方向性を変えて行く。それも観客が直ぐには気付かないほど徐々に1カットの時間が長くなり、何気ない日常に存在する幸福とやがて訪れる草太と楽人の別れが描かれて行くのだ。
本作がこれほど観客の心を掴み、多くの絶賛評が寄せられている理由。それは、過激な描写を挟みつつも、常に弱者への暖かい眼差しを忘れることなく絶妙なバランスを保っている点。そして、観客の予想を完全に裏切って最終的に全く予想していなかった感動作に着地するという、その驚きと快感に尽きる。
一見若者向けのガチャガチャしたうるさい内容の様に見えるが、実は本作で描かれているのは、世代を越えて共感出来る「家族愛」や「友情」といった普遍的な物なのだ。
子供の成長にとって、親の愛情がいかに大切か?そして不幸にして愛情を得られない子供時代を過ごしたとしても、自分の子供に愛情を注ぐことで自身の過去は報われるということ。更には、子供の将来に待っている無限の可能性など、本作が伝えようとするテーマは観客全てに勇気とヤル気を注入してくれる。そんな素晴らしく熱気に溢れた作品に、多くの観客の熱狂的な支持が寄せられているのも、当然のことだと言えるだろう。
草太と楽人の無責任に交わした約束が、最終的にある奇跡を呼ぶというエンドクレジット後の展開には、子供の無限の可能性に対する監督の非常に前向きなメッセージが込められている。
これからご覧になられる方は、どうかエンドクレジットが終わるまでは席を立たずに、是非彼らの人生に起こった奇跡を見届けて頂ければと思う。
ネットのあまりの高評価を疑って、逆に鑑賞を迷っている方にこそ全力でオススメします!
(文:滝口アキラ)
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