映画コラム
“宇宙ものロス”はこれで埋められる!『ヴァレリアン』の魅力!
“宇宙ものロス”はこれで埋められる!『ヴァレリアン』の魅力!
© 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION
この数年、年末になると多くの人々を楽しませてくれるのが「スター・ウォーズ」新三部作シリーズ。今年の6月には人気キャラクターの若き日を描く『ハン・ソロ』も公開されますが、本丸のシリーズ第3弾はまだ先になります。
そんな“スペース・オペラロス”を埋めるのにぴったりの映画がフランスからやってきました。
原作は「スター・ウォーズ」にも大きな影響を与えたバンド・デシネ
映画史に残る一大SF叙事詩「スター・ウォーズ」には「指輪物語」や“黒澤明監督作品”、世界各地の神話や伝承、ルーカスが見て育った冒険活劇など、多くの原典があることが知られています。
この映画の原作のバンド・デシネ(=フレンチコミック)「ヴァレリアン」もまた、その「スター・ウォーズ」の原典の一つです。
「ヴァレリアン」は67年ピエール・クリスタン原作&ジャン=クロード・メジエール作画の作品で、「スター・ウォーズ」から遡ること約10年前に誕生した作品です。惑星やスペースステーション、エイリアンのデザイン、ヴァレリアンのスターシップなどを見ると、確かに「スター・ウォーズ」に通じる部分があります。
監督はエンタメ職人のリュック・ベッソン
メガホンをとったのはフランスのきってのエンタメ職人リュック・ベッソン。
『サブウェイ』『グラン・ブルー』でアート系監督として世界から注目を浴びると『レオン』でハリウッドデビューして、これが世界的に大ヒット。
そして、自分が16歳の時に思い描いた物語を大々的に映画化したSFアクション『フィフス・エレメント』を発表、ここから一気にエンタメ職人路線の人となりました。
その後、監督業の一方で、プロデューサー業・脚本家業でフル稼働するようになると、まずはハリウッドリメイクもされた『TAXⅰ』がシリーズ4作目まで続く大ヒット。
続いて、今やハリウッドきってのアクションスターとなったジェイソン・ステイサムを真っ先に主演に抜擢した『トランスポーター』『アルティメット』の2シリーズが大成功。
そして、まさかまさかあのリーアム・ニーソンにアクションスターとしての道を示した『96時間』シリーズが、シリーズ3作品とも全米興行収入ランキング1位を飾り問答無用のヒットメイカーとなりました。
「ヴァレリアン」は『フィフス・エレメント』パート2?
リュック・ベッソンがエンタメ職人路線へ大きく舵をきった作品が97年の『フィフス・エレメント』です。
当時はまだ無名の存在に近かったミラ・ジョヴォヴィッチがヒロインのリー・ルーに抜擢され、また元軍人のタクシー運転手をブルース・ウィリスが演じていて、この二人のW主演映画となりました。
そして『レオン』でキレキレの悪役演技を見せたゲイリー・オールドマンがそのさらに上を行くキャラクターで登場。また、この後ジャッキー・チェンと共演した『ラッシュアワー』シリーズ大ブレイクすることになるクリス・タッカーも顔を出しています。
リュック・ベッソンはこの『フィフス・エレメント』で当時最高のSFXテクニックをフル活用して“今までに見たことのない未来”を全力で表現しました。
バンド・デシネ(=フレンチコミック)の世界や、それまでの多くのファンタジー映画、SF映画を換骨奪胎&フルシャッフルした世界観は、当時世紀末ということもあってどうにも暗い風景の未来像ばかりが続く映画が多かった中で、極端に明るく陽性な『フィフス・エレメント』の未来像は観客の目にとても新鮮映り大ヒットしました。
この世界観を支えた衣装はあのジャンピエール・ゴルチエが全面協力。このことも話題になり、映画の衣裳をメインにした企画展が開催されたりもしました。
こんな具合に当時の想いと夢を全部ぶちまけたおもちゃ箱のような映画を創り切ったリュック・ベッソンですが、その一方で様々な面で限界を感じてもいました。
お金の面はもちろんどれだけ時間と労力を費やして頑張ってみても、彼の頭の中の“理想の夢”は描き切れませんでした。
それから20年が経ち、とうとう彼の理想の世界を描くことが可能になり、バンド・デシネの古典と言われる『ヴァレリアン千の惑星の救世主』の完全映画化に結実しました。つまり『ヴァレリアン千の惑星の救世主』は20年越しの『フィフス・エレメント』パート2ともいえる作品なのです。
© 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION
主演はアメコミ映画出身の若手スター候補!
主役の連邦捜査官のヴァレリアンを演じるのは『アメイジング・スパイダーマン2』でグリーン・ゴブリン/ハリー・オズボーンを演じた若手イケメン俳優デイン・デーハン。そしてヒロインのローレリーヌを『スーサイド・スクワッド』でスーパーナチュラルな存在のエンチャントレスを演じたカーラ・デルヴィーニュが演じています。
この二人を囲む形でキャラクターにはクライブ・オーウェン、イーサン・ホークの二人の演技派にベテランのジョン・グッドマンやルトガー・ハウアーなどが出演。
また『フィフス・エレメント』のオペラ歌手ディーヴァをほうふつとさせるキャラクターとして、姿かたちを自由自在に変えることのできるパフォーマー“バブル”が登場。演じるのは近年『オーシャンズ8』などなど映画出演の機会も増えているアメリカの歌姫リアーナで、短い時間ながらさすがのパフォーマンスを見せています。
ストーリーはこんな感じ
西暦2740年。人類は宇宙に進出。宇宙空間に建造された“アルファ宇宙ステーション”で多くの宇宙人と遭遇。やがて“アルファ宇宙ステーション”は“千の惑星の都市”として銀河にその名を知られるように。
連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌは宇宙の平和を守る任務に就き、銀河をパトロールしている。腕利きだがプレイボーイ気質(この辺りは“ハン・ソロ”っぽくもあります)のヴァレリアンは相棒のローレリーヌを任務の隙を縫っては口説いて回るお気楽ぶり。一つの任務を終えた二人は“アルファ宇宙ステーション”へと向かう。
そこで二人は宇宙ステーションの最深部で謎の放射線汚染が広がっているということを知らされる。これには邪悪な陰謀と、宇宙の歴史から抹殺されようとしていた“秘密”が絡んでいた。果たしてヴァレリアンとローレリーヌは“千の惑星の都市”と銀河の危機を救うことができるのか・・・?
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ヒロイン発掘職人、リュック・ベッソン
リュック・ベッソン監督は屈指のエンタメ職人であると同時に、ヒロイン発掘職人でもあります。2作目の長編作品『サブウェイ』で当時長期休業中だったフランスの人気女優イザベル・アジャーニを復帰させ再ブレイクさせたのを皮切りに、アメリカで映画やドラマにリメイクされた『ニキータ』ではアンヌ・パリローをヒロインに起用して成功しました。
その後を追えば『レオン』で当時12歳のナタリー・ポートマンを発掘。
それ以来、彼女は一線級の女優として活躍し続け『ブラック・スワン』でアカデミー賞女優となりました。
その直後に前述の『フィフス・エレメント』でミラ・ジョヴォヴィッチを見つけ出しました。同じミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『ジャンヌ・ダルク』の後はしばらく監督業から遠ざかりますが、プロデュースした『TAXi』ではヒロインにマリオン・コティヤールを抜擢。フランス語圏の女優ですが、彼女はそれから約10年後『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でアカデミー賞女優になりました。同じプロデュース作品『ヒットマン』のヒロイン、オルガ・キュリレンコはその翌年には『007慰めの報酬』でボンドガールになっています。
最近ではミシェール・ヨー、ミシェル・ファイファー、スカーレット・ヨハンソンとすでに実績のある女優を立て続けに起用していましたが、執念の企画『ヴァレリアン千の惑星の救世主』ではその作品の命運を新進スターのカーラ・デルヴィーニュに託しました。
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カーラ・デルヴィーニュは12年に女優デビューしたばかりですが15年には『PAN~ネバーランド、夢のはじまり~』、16年にはDCコミック映画化大型企画“DCエクステンデッド・ユニバース”の第3弾『スーサイド・スクワッド』にも出演するなど大作出演ラッシュが続いています。今回の「ヴァレリアン」のサウンドトラックにシンガーとしても参加しました。
ヒロイン発掘職人リュック・ベッソンが『フィフス・エレメント』以来20年間思い描き続けてきた世界のヒロインに抜擢したカーラ・デルヴィーニュ。
作品と合わせて彼女の名前と顔も覚えておくとよいかもしれません。
(文:村松健太郎)
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