映画コラム

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2018年05月24日

五月病!学校も会社も行きたくない!それでも世界は愛おしい!『ボーイズ・オン・ザ・ラン』

五月病!学校も会社も行きたくない!それでも世界は愛おしい!『ボーイズ・オン・ザ・ラン』

松竹芸能で芸人やっております、じなんぼ~いずシギハラと申します!


気づけばもう五月、毎日襲ってくるモヤモヤの元凶を「五月病」という病に無理矢理擦り付ける季節、皆さんどうお過ごしでしょうか!

ここは一つ、6月から始まる2018FIFAワールドカップ ロシア大会を楽しみに乗り越えるしかありませんね!

とは言え、僕も人生が上手くいっていない自信はあります(笑)!
「人生上手くいっていない日本代表」があったら、ベンチ入りぐらいはしてW杯に出場を果たしているでしょう!
皆さんも日々、本意ではない日本代表入りをしてるかと存じます!

いや、こんな事言ってる場合じゃないんです!
最近、脱線し過ぎで怒られてるんで、最短距離で進みます!

五月病と相まって、そんな憂鬱な現状、目の前の疎ましい問題、思わず目を背けたい未来。それでも、この世界が愛おしいと思える、思わせてくれる作品が『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010)です!

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』


ボーイズ・オン・ザ・ラン



原作は、2016年に大泉洋さん主演で映画化もされた『アイアムアヒーロー』の作者、花沢健吾さんの同名漫画。

現在公開中の『娼年』も監督し、近頃その名があちらこちらで轟いている、劇団「ポツドール」主宰である三浦大輔さんの商業映画の初監督作品!

主人公の田西敏行を演じるのは『アイデン&ティティ』(2003)に出演する等、役者としても活躍する、言わずと知れた銀杏BOYZの峯田和伸さん。
ヒロインの植村ちはるを黒川芽以さん、ちはるを弄ぶライバル会社の社員に松田龍平さん。
その他、YOUさん、小林薫さん、リリー・フランキーさん、でんでんさん、渋川清彦さんなどなど、一癖も二癖もある個性派俳優が集結しております!

ストーリー概要


ガチャガチャ専門の玩具メーカー斎田産業に勤務する田西敏行(峯田和伸)。
営業成績はいまひとつで、職場で良い雰囲気だった同僚のちはる(黒川芽以)とは一度の過ちがきっかけで最悪な状況に。
そんなある日、田西はちはるがライバル会社の青山(松田龍平)に弄ばれた事を知って、会社に殴り込みに行くと奮起。ボクシングを見よう見まねで始め、いざ決闘の日を迎えるが…。

人気の高い漫画ですが、自分は原作は読んでおりません!
ですので、漫画の内容とは若干異なっているっぽいですが、これから書く事はあくまで映画版の事なので悪しからず!

自分が思う、この映画の愛おしいポイント!

主演・峯田さんのハマり具合が愛おしい!



主人公の田西は、容姿端麗・成績優秀とは真逆の存在。仕事も出来るわけではない、女にモテるわけではもない。愛想もいいわけでも、世渡り上手でもない。そして素人童貞。不器用で無骨でまっすぐ熱くしか生きられない。

そんな主人公を、銀杏BOYZの世界観と重ねてしまうのは僕だけではないはずです!

「性的接触はございません!」と叫ぶ結婚式でのスピーチ、カラオケでの岡村孝子さんの「夢をあきらめないで」の熱唱は、まるでライブさながらのエモーショナルなシーン!愛おしい!

激走!疾走!迷走!走る姿が愛おしい!



ゆきずりのテレクラ嬢から追いかけられて走る!3時間かけてAVを取りにチャリで走る!ちはるが風邪で寝込んだとあれば、お見舞いに走る!決闘に備えボクシングして走る!レンタル返却で走る!最後、走る!

この映画、タイトル通り主人公の田西が走るシーン多いです!
人間、「突っ走る」とはよく言いますが、このシーンが心の状況、情熱、誠実さをよく物語っています!
演技指導が入ってるかは分かりませんが、峯田さんの走り姿は非常に美しい!
「最近走ってないな~!」「なんか走りたいなー!」と純粋に思わせてくれます!愛おしい!

「世の中そんなすぐに変わるもんじゃない!」が愛おしい!



田西は、青山を殴る為に決闘を申し込む。勝つ為に、いつも仕事中に缶ビールを飲んでいてやばいけどボクシングに精通している社員の鈴木さん(小林薫)に、ボクシングを教わり始めます!

しかし、最近ヒットした『百円の恋』(2014)や『あゝ、荒野』(2017)などの様に、ボクシングをやっても人生はびた一文も変わったりしません!
ちはるも結局は青山の事が気になって裏切られたり、田西は青山にマウントポジションを取られてボコボコにされながら侮辱的に言われるんです。「結局何の為に戦ってるんですか?」と。

この時にこの二人が、それぞれ対極にいる異なる人間なのがよく分かります!
青山は「結果」にしか興味がない人間。田西は「過程」そのものを大事にする人間です!

この映画は、世の中そんなに変わるもんじゃない!と現実を冷たく叩きつけながらも、その「過程」に情熱を捧げた人間達を認めようじゃないか、愛を送ろうじゃないか!という賛美歌的映画なのです!愛おしい!

「そうは言っても、世の中捨てたもんじゃない!」が愛おしい!



前項で言った通り、飲んだくれ社員の鈴木さんも決闘に協力してくれます。

グッとくるシーンの一つに、電話で田西が青山に「必ずぶん殴りに行きますから!待っててくださいよ!」と伝えると、青山は「会社クビになるんじゃないですか?」と言います。
そこで、普段は何も話さない無関心な斎田産業社長(リリー・フランキー)が受話器を取り上げ、「田西はクビにしませんから。存分にやってもらいますよ」と言うんです!

普段は、やる気ない、無関心に思えても、熱い人間の熱に呼応するように変わってくれる人間がいる!世の中捨てたもんじゃない!愛おしい!

黒川芽以さん!単純に愛おしい!


これ、愛おしいカウントに入れて良いでしょうか(笑)?しかし、本当に愛おしいです!

ムチムチした肉感的なところも、素人童貞・田西のどストライクっぽいですし、軽いのか重いのか、純粋なのか腹黒いのか、掴みどころがない役柄も本当に上手いです!

『ドライブイン蒲生』(2014)のヤンキーも良いですし、『愛を語れば変態ですか』(2015)のわがままな役も良い!
個性派女優さんは良くも悪くも個性派のオーラが出てると思うのですが、黒川芽以さんは独特のオーラはあまりなし、ナチュラルなのに個性的って素晴らしいですね!愛おしい!

結局何も起こらない!何も変わらない!でも愛しさに溢れた世界!



世界を変えたい、何か吹っ切りたいと鼻息荒くいくよりも、ダメな自分、目の前の現実を、それで良いんだとそっと認めてくれる。
走れる時に走ったら良い、肩の力を少し抜いたら世界がちょっと愛しく思える、そう思わせてくれる『ボーイズ・オン・ザ・ラン』、オススメです!

(文:じなんぼ~いず・シギハラ)

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