濡れ場を映画のスタンダードに近づけた作品─紗倉まな原作『最低。』
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我々のような濡れ場を生き甲斐にしてる男にとって、いい意味で目を覚めさしてくれる。
これからの邦画における濡れ場の位置を明らかに高めた作品。
『最低。』
(C)2017 KADOKAWA
人気AV女優の紗倉まなによる同名小説を、『ヘヴンズ ストーリー』、『64 ロクヨン』などを手がけた瀬々敬久監督が映画化した作品。
平凡な日常に耐えきれず、新しい扉を開く34歳の主婦・橋本美穂。ギクシャクした関係性の家族たちから逃げるように上京し、AV女優として多忙な毎日を送る25歳の彩乃。奔放な母親に振り回されながらも、絵を描いている時だけは自由になれる17歳の女子高生・本間あやこ。境遇も年齢も性格もバラバラながら、それぞれAVと関わりを持つという共通点のある3人の女たち。ある出来事をきっかけに彼女たちの運命が大きく動き始める。
全体的に濡れ場があるが、ある種、上品。そしてしっかりと地に足のついた作品。
人気AV女優の原作。そしてAVというテーマが根底にあるストーリー。この2点のみで今までなら誰だってエッチでB級の匂いがしたはず。
例えるなら、「アスミックエース」では絶対配給しないような…(これも違うけど)。
しかしこの作品。
登場人物の葛藤や切なさ悩みなどがきっちりと描かれていて、心にしっかりと突き刺さるストーリー。
そして驚くべきは、全編を通してお洒落な雰囲気。
「は? 何がお洒落!?」と言われるかもしれません。
この場合…お洒落というのは僕の中で映画の中に「映画の中のメッセージ性の出し具合」だと思ってます。
分かりにく過ぎたら、それはお洒落を超えてただの難解になるし(それをお洒落と言う人もいる)、分かりやす過ぎたら、映画好きから舐められがちになる。
(C)2017 KADOKAWA
そういう意味でこの作品はとてもいいバランス。
ここまで全編に濡れ場がふんだんにある。
ただそこの濡れ場はただ単純に「エロい」と思わせないように、きちんとその人物の心の闇がわかるので、濡れ場が切なかったり、悲しかったり、やるせなかったり、そしてエロかったり…。
「全くもって濡れ場に違和感がない」
言うなればこれです。ここのセックスの描写は映画に必須項目。
(C)2017 KADOKAWA
なのでエロいはエロいんだけども、「エロい」よりも先にストーリーの道理が通ってて違和感がない。
無駄にエロいと思わせず、この濡れ場の数は演者とスタッフのすごさじゃないでしょうか?
これから濡れ場を撮る上で、かなりの基準値を上げたはずです。
近年ではなかなかった「濡れ場ハイ」
そして特に濡れ場を演じた2人。森口彩乃さん、佐々木心音さん。
とてもよかった。純粋でアホな意見です。
森口さんの優等生でありながら、女性としての幸せがうまく掴めず悩んでる女性と、佐々木さんのAVに自分の居場所を見つけて、けだるくも必死に生きる女性。
全く違う女性がAVという特殊な状況下で抱く思いがめちゃくちゃ伝わって来たので、途中、
「おっぱいとか・・・もういいや・・・」
という精神状態。
「濡れ場ハイ」になりました。
これは近年ではなかなかないですよ。
特に佐々木心音さんは濡れ場ありきの女優から、確実にあがりかけである。(頼む…まだ脱いでいて…)
この2人と山田愛菜さんの3人。きっとこれからも良い映画に出て来ますよ!!
あと最後に、AVというものの撮影現場やマネージャーがきちんとしているという表現も地味によかったです。
AV撮影そのものを悪としてなかったのが、原作者の生業たる所以なんでしょう。
皆様その辺りも是非。
(文:南川聡史)
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