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2018年06月16日

最新韓国型ノワール映画『V.I.P. 修羅の獣たち』パク・フンジョン監督インタビュー

最新韓国型ノワール映画『V.I.P. 修羅の獣たち』パク・フンジョン監督インタビュー



(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


『新しき世界』でセンセーションを巻き起こしたパク・フンジョン監督最新作『V.I.P. 修羅の獣たち』 が、本日6月16日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー。公開に合わせ、監督のインタビューが到着した。

本作は、韓国の国家情報院とCIAの企てにより、北から亡命したエリート高官の息子が連続殺人事件の有力な容疑者とされ、これを隠蔽しようとする者、捕らえようとする者、復讐しようとする者、それぞれ別の目的を持つ男たちの物語。チャン・ドンゴン、キム・ミョンミン、パク・ヒスンといったベテラン俳優に加え、人気・実力共に若手No.1俳優のイ・ジョンソクも出演。豪華な顔ぶれが揃ったクライム・アクション大作となっている。

パク・フンジョン監督インタビュー




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──『V.I.P. 修羅の獣たち』で企画亡命者という題材を選択された理由について教えてください。

分断国家である韓国だからこそ扱うことのできる題材だと思いました。韓半島を取り囲む国際情勢のジレンマを描くのにピッタリだと思ったところからスタートしています。内容やスタイル、全体のトーンについても、前例のない作品なので、ストーリーは明確にしなければならないと考えました。企画亡命を素材として扱ったこと自体は、それほど難しいことではありませんでした。

──3つの国家が絡み合う話だけに、撮影は苦労したのでは。

初めて海外で撮影をした。撮影自体はそれほど苦労せずに済んだが製作費が高額であったり撮影場所の交渉も大変で、多くの試行錯誤が必要だった。特に北朝鮮の村の再現がとても難しかった。韓国には北朝鮮の雰囲気を感じられる場所がない。それでも一番雰囲気的に近いだろうと思う所を探し出し、セットを作り、残りはCGで作った。香港のレストランも同じだ。元々の設定はレストランではなかったが、セットを作って撮影した。

──3カ国が目前に存在する悪人を見て見ぬ振りをするという設定は、観客に息苦しさを抱かせるが。

必要に応じて連れてきた人物が怪物だった…。どんな社会でもそのような怪物に対する備えと処置システムがあるはずだ。だがある時、各国の事情や政治的な利害関係によりそのシステムが正常に作動しなくなった。そうしている間に、より深刻さを増した怪物が大手を振って歩き回るというジレンマに関する物語を作ってみたかった。このような状況下において、国家が傍観者となり、むしろその怪物をかばう側に回ってしまった時に起きる出来事を描こうと思った。

──これまで監督はカン課長、チョン・チョン、そして今回の映画のキム・グァンイルなど、観客の脳裏に焼き付くキャラクターを作り出してきたが、 人物について構想を練る過程が気になります。

優先すべきは事件や状況だ。 それを描いてから、そこに最も適合する人物を作り出す。 その次に、そのキャラクターがその状況に置かれた時どう行動するか考えてみる。この性格、この職業の人物ならどう行動するかというところから考える。 今回も同じように“企画亡命者”というキーワードを考えた時、“韓国国家情報院”というワードが一番最初に思い浮かぶ。チャン・ドンゴン演じる国家情報院要員パク・ジェヒョクの例を挙げるなら、海外に駐在経験のある、それなりのベテランであること。本局勤務を望むならエリートであるはずだ。このようにディテールを1つ1つ積み上げていく。



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──キム・グァンイルのキャラクターは今まで韓国映画になかった新しい類型の悪役だという声もあったが。

サイコパスのキャラクターは韓国映画の中に多く登場している。キム・グァンイルは北からのVIPという点が他のキャラクターと違う。サイコパスの犯罪者は各国の社会的なシステムを利用して完全犯罪を目論むが、キム・グァンイルはいまだ王朝国家の様相を呈するいびつな国家で生まれた特権階級に属する人物だ。サイコパスの本能を道徳的に制御してくれる人がいないため、人の命を軽視する傾向にあり、犯罪の概念自体が最初からない。「僕がやったけど、何か?」という感じだ。サイコパスの中でもハイレベルなサイコパスだ (笑)

──イ・ジョンソクさんを連続殺人犯役にキャスティングした理由と、劇中で最も印象深かった演技はどんなものだったのでしょうか。

イ・ジョンソクさんについては、彼から先に“キム・グァンイルを演じてみたい”と連絡が来たんです。 俳優としての欲がある人で、好印象でした。 積極的で心がけもいいと。 若手スターで、こんな役ではなくても、いくらでも素敵な役をもらえるのに、俳優としての欲があるようでした。イ・ジョンソクさんの演じたキム・グァンイルは、海外暮らしの長い北朝鮮のエリート高官の息子で、元々、そのイメージに合った貴族的な雰囲気のある俳優を望んでいました。幼いころから何不自由なく育ち、すべての人々を見下すような怖い物知らずのキャラクターです。



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──チャン・ドンゴンさんをパク・ジェヒョク役にキャスティングした理由と、その演技についてどういう感想をお持ちになりましたか?

ジェヒョク役にぴったりだと思いました。ただそこにいるだけでキャラクターが表現されるというか。素晴らしい俳優なので特に指示したことはありません。作品を見て頂ければ分かると思いますが、とてもよく演じてくださったので感謝しかありません。

──キム・ミョンミンさんをチェ・イド役にキャスティングした理由と、その演技についてどういう感想をお持ちになりましたか?

キム・ミョンミンさんは以前から一緒に仕事をしてみたかった俳優です。皆さん、彼の代表作は「白い巨塔」(07年ドラマ)だと言いますが、私は「お熱いのがお好き」(00年ドラマ) から見てきましたからね。その時は助演でしたがすでに俳優としての存在感がありました。なので“いつか必ず一緒に仕事をするぞ“と思っていたんです。これまでもシナリオを何度か送ったことはありましたがスケジュールが合わず…今回は幸いにも日程が合いました。



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──ピーター・ストーメアの出演は映画ファンの期待を膨らませました。実際に仕事をした感想は?

ピーター・ストーメアが『悪魔を見た』と『新しき世界』を見たと言っていた。キム・ジウン監督のハリウッド進出作に出演していたのを思い出しシナリオを送ってみたら、“喜んで出演する”との返答がきた。思いも寄らぬことだった。我々の製作費は十分とは言えない、とも伝えたが快諾してくれた。言語的な障壁はあったが気兼ねなく仕事をすることができた。ハリウッド俳優とはいえ、特別に大変だとも思わなかった。彼は特別待遇を受けるのを嫌った。個人トレーラーの代わりにコンテナでも準備すべきかと考えたが皆と一緒でいいと言ってくれた。現場であれこれ口を出す姿はまるで町内の世話焼きおじさんのようだった。スタッフと一緒に組み立て椅子に座って、お菓子を食べたりもした(笑)

──俳優たちが“パク・フンジョン監督との作業は容赦がなかった”と口をそろえて話した。 明確な設定が監督にあったようだと。

出演者は経歴が20年を越える俳優ばかりだった。演技については私が口を出すことでもない。彼らのほうが演技の専門家だからだ。だが、キャラクターが一連の状況下でどのような行動を取るかにについては、すべての設定が私の頭の中にあった。私は一定のラインを設定し、その中で最も良いものを選んだ。つまり、その線を越える設定が出れば、容認できないというわけだ。そういう時は“それは違う気がするな”という程度のことを言ったと思う。そこまでキッパリと否定したことはないと思うが(笑)

──撮影時、最も苦労したシーンとその理由は何ですか?

人を殺める場面は撮影と編集過程において非常に悩んだ部分でした。恐ろしさを見せつけるという一方で観客がどのように受け取るかということもありますし、表現する程度について、非常に悩みました。私としても明らかに不快を感じる部分についてはカットしようとも考えましたし、短めのシーンにしてみたりと色々試しましたが、そうなるとキム・グァンイルの行為が鬼畜の所業には見えなくなり、悪行の程度が弱まる気もしました。

──韓国ではジェンダーにまつわる話題も過熱しました。キム・グァンイルの残忍さを示すために、劇中で犠牲となった女性のシーンについてです。

例のシーンは私たちも非常に悩んだ。観客が不快に感じ、震え上がるに違いないとも思っていた。 だが、キム・グァンイルの魔物性を見せつけるに相応しい代案が他になかった。 主人公の恐ろしさをしっかり伝えてこそストーリーの原動力が確保されるのだ。 悩んだ末にあの場面を入れたが、女性客が観ると、より暴力的に見えるのかもしれない。私のジェンダーに対する感性が鈍いせいだと思う。もっと言えば、ジェンダーに対する知識不足なのかもしれない。

──今回の論争を機に、何かを変えるつもりはあるか?

今後も作品を作るたび、いくつもの悩みを抱えるだろう。ジェンダー問題をさらに注意深く学び、考える必要性を感じた。どちらかというと私の周囲には女性が少なく、そのため、韓国の男性の大部分がそう思っているように“男らしさ”に対する先入観が暗黙のうちに存在するようだ。自分ではそれほどこだわっているつもりはなかったが、今回の件で、世間とのギャップを感じた。



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──監督は本作を通じて単調ではない独特なノワール映画を試みたのだと思われますが、監督ご自身はどうお考えですか?

『新しき世界』が味付けのしてあるスパイスの効いたノワール映画であるとするなら、『V.I.P. 修羅の獣たち』はスパイスの入っていないドライなノワール映画だと言えます。『新しき世界』には男たちの友情と裏切り、対立や嫉みなど感情面を描いた面白さがありましたが、本作にはそのような関係性から生じる面白さはなく、ひたすら事件の様相を描いています。私は個人的にドライなノワールを好む方なので、『V.I.P. 修羅の獣たち』は私の好みが反映されている作品ですね。

──観客に向けて、メッセージをお願いします。

怪物のような1人の男によって国家システムが機能不全に陥る様子から、私たちが置かれている現実を思い起こしてもらえると、様々な問題が深刻化する社会が自然に思い浮かぶのではないでしょうか。 また韓国映画によく出てくる男の友情や仁義など熱いエネルギーを放出するノワール映画ではなく、それとは正反対の冷たくて背筋の凍るようなドライなノワール映画があるということも知ってもらえれば幸いだ。

ライター:Lee Youna
引用元メディア:singlelist

https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=TUb3P-N6eaU

ストーリー概要


韓国国家情報院と米CIAの企てにより、北から亡命させられたエリート高官の息子キム・グァンイルが連続殺人事件の有力な容疑者として浮上する。彼が犯人であることを本能的に確信した警視のチェ・イドはグァンイルを追うが、国家情報院の要員パク・ジェヒョクの保護により捜査網を潜っていくのだった。さらには保安省所属の工作員リ・デボムまでが介入し、事態は思いもよらない方向へと進んでいく。


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