映画コラム

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2018年07月12日

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』解説!時系列は?過去作の印象はこう変わった!

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』解説!時系列は?過去作の印象はこう変わった!



(C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights reserved 


海外での公開から約1ヶ月、ついに日本でも公開されたシリーズ最新作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』。

本作は、シリーズの人気キャラクターとしておなじみのハン・ソロ(オールデン・エアレンライク)を主人公に、その若き日を描いた作品。

彼が相棒のチューバッカと出会い、愛用のDL-44ヘビーブラスターピストルを手にし、愛機ミレニアム・ファルコンに乗り込んで、我々がよく知る「ハン・ソロ」になるまでが語られた映画です。

この記事では、シリーズ全体の中で本作が位置する時系列や、本作によって新たな意味が加わった過去作のシーンといった本作をより楽しめるポイントをご紹介します。

『ハン・ソロ』のシリーズ中での時系列は


まず、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』がいつ頃の出来事を描いているのか、シリーズの中での時系列を解説します。

ハン・ソロの若き日を描いていることはプロモーションでも全面に出されていたものの、終盤の「あるキャラクター」のサプライズな登場もあって、これまでの作品の時系列の中において本作がどこに位置するのか、疑問を持たれる声が多く見受けられましたので、その点を解き明かしていきます。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は『エピソード3/シスの復讐』と『エピソード4/新たなる希望』の間の時期の話です。主に描かれている時期は、『エピソード4/新たなる希望』の10年前(『エピソード3/シスの復讐』からは9年後)となっています。

これは、『エピソード4/新たなる希望』で200歳という設定のチューバッカが、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の劇中で190歳であると明かされることからわかります。

また、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は序盤で3年の時間経過がありますので、そのオープニングシーンは『エピソード4/新たなる希望』の13年前が舞台となります。

『エピソード4/新たなる希望』までの実写映画作品を時系列で並べてみると、以下となります。


『スター・ウォーズ』の時系列
●32年前:『エピソード1/ファントム・メナス』

●22年前:『エピソード2/クローンの攻撃』

●19年前:『エピソード3/シスの復讐』

●13年前(オープニング)/10年前:『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』

●13年前(オープニング)/0年前:『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

●起点:『エピソード4/新たなる希望』


『ローグ・ワン』は、基本的に『エピソード4/新たなる希望』の直前を描いていますが、そのオープニングシーンは13年前の出来事となります。つまり、『ローグ・ワン』の主人公のジン・アーソが父と離れ離れになった時期と、ハンがコレリアを旅立った時期はほぼ同じということになります。

「あるキャラクター」のサプライズな登場により、『ハン・ソロ』が『エピソード1/ファントム・メナス』以前の出来事だと思われた方々もいらっしゃるようですが、実際の時系列は上記の通りです。

ちなみに、ハン・ソロは『エピソード4/新たなる希望』の32年前に産まれたという設定なので、『エピソード1/ファントム・メナス』の頃のハンは出生前後の時期となります。

ここから考えると、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のオープニングのハンは19歳、その3年後にチューバッカと出会った頃は22歳ということになります。



(C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights reserved 



『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』鑑賞後に
印象が変わる、既存作品の見どころ


『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、知られざる若き日のハン・ソロの物語を知ることによって、シリーズ過去作でのハンやミレニアム・ファルコンの描写に新たな意味を見出すことが出来るようになっているのも見どころのひとつ。

長年、よく知っている作品に新しい視点が加わる仕組みは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』も同様で、『エピソード4/新たなる希望』の見方が変わる作品となっていました。

『エピソード4/新たなる希望』以降の作品で、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』鑑賞後に見ると新たな印象が加わるシーンを順番に見ていきましょう。

『エピソード4/新たなる希望』


スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 (字幕版)



まず、『エピソード4/新たなる希望』では宇宙船をチャーターしに来たルーク・スカイウォーカーとオビ=ワン・ケノービに、ミレニアム・ファルコンはケッセル・ランを12パーセクで飛んだとハン・ソロが豪語するシーンがあります。

『エピソード4/新たなる希望』公開から41年の時を経て、そのケッセル・ランがどのようなものだったのか映像で明かしたのが、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』!

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を見た後にこのシーンを見ると、ケッセル・ランでの冒険が脳裏によみがえり、ドヤ顔のハン・ソロにもニヤりとさせられます…

また、再リリースの度に修正されていることで有名な、ハンを狙いに来た賞金稼ぎのグリードとの対決シーン。

1977年のオリジナル版ではハンが先にグリードを撃ったように描写されるも、ハン・ソロが冷酷な殺人者となってしまうことを懸念したジョージ・ルーカスによって、1997年公開の『スター・ウォーズ 特別篇』ではグリードが先に撃っているように修正。しかし、これが不評で2004年に発売されたDVD版からは、2人が同時に発砲しているように再修正されたという経緯で、ファンの間で大きな論争を起こしました。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では、ハン・ソロは相手の動きを察知して先制してブラスターを撃つシーンがあり、ハンは先に撃つ男であることがわかります。

そして、レイアを助けた謝礼金をもらって反乱軍によるデス・スターへの攻撃には加わらないと思いきや、最後の最後でルークを助けに戻ってくるという憎めない人柄もハン・ソロの魅力のひとつ。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では、キーラ(エミリア・クラーク)から「いい人」とその本質を見抜かれていたり、終盤の展開でも利益よりも義を選ぶ選択をしたりと、『エピソード4/新たなる希望』のラストのハンの行動がより説得力を増したと思えるようになります。

『エピソード5/帝国の逆襲』


スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲(字幕版)



ランド・カルリジアンとハン・ソロの『エピソード5/帝国の逆襲』での再会は、最初はギクシャクした感じでした。

2人の出会いを描いた『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を見てからこのシーンを見ると、ヒドい目にあったランドがハンに対して複雑な思いで接していることがよくわかります!

さらに、この後ランドは自身の保身のためにハンたちを帝国軍に渡すことになり、おかげでハンはあの有名なカーボナイト冷凍をされるハメになるのですが、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ではベケット(ウディ・ハレルソン)がハンに、「誰も信じるな」という教えを語っています。

『エピソード5/帝国の逆襲』で裏切りにあうシーンを見ると、ベケットが語っていたことが頭をよぎります。

そして、小惑星帯に避難したミレニアム・ファルコンのコンピューターと対話したC-3POが、「独特な訛りがある」と発言している点にも注目。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では、なぜミレニアム・ファルコンが銀河最速の宇宙船となり得たのか、その秘密が明かされますが、それは「彼女」がミレニアム・ファルコンの船内に居続けているからですね…

『エピソード5/帝国の逆襲』の何気ないシーンに、新たな意味がもたらされました。

『エピソード6/ジェダイの帰還』


スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還(字幕版)



『エピソード6/ジェダイの帰還』では、ランド・カルリジアンがかつて所有していたミレニアム・ファルコンに再び乗り込み、第2デス・スターの攻撃に参加します。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を見ていると、上述のように「彼女」がいるミレニアム・ファルコンで再び飛ぶということに、ランドはきっと特別な思いを抱いていたのではないかと想像出来るようになるのです…

結果として、ミレニアム・ファルコンは第2デス・スターを破壊し、帝国軍の圧政を終わらせることに大きく貢献します。ケッセルで自由を叫んでいた「彼女」の声は、ついに銀河中に広がったかのように思えます。

『フォースの覚醒』


スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (字幕版)



『エピソード6/ジェダイの帰還』から30年後を舞台にした『フォースの覚醒』の主人公のレイは、辺境の惑星ジャクーで廃品回収をしながら暮らしていました。

そんな中、導かれるように乗り込んだ宇宙船はあのミレニアム・ファルコン。そして、ミレニアム・ファルコンの行方を追っていたハン・ソロとチューバッカと出会います。

宇宙船のメカニックにも詳しいレイを見て、ハンはクルーに誘うほど気に入っていたようですが、ハンの生い立ちを知ると、家族もおらず一人でサバイバル生活を送っていたレイに、若き日の自身の姿を重ねていたようにも思えてきます。

また、ハンがレイにブラスターを授けるシーンも、今見るとかつてハン自身がベケットからブラスターを受け取ったことを彷彿とさせられます。

ちなみに、『エピソード4/新たなる希望』から34年が経った銀河の辺境で暮らすレイにすら、ケッセル・ランとミレニアム・ファルコンの伝説は知れ渡っていたことからも、その偉業が伺い知れます(「14パーセク」と少し誤って伝わっていましたが)。

さらに、ハン・ソロとカイロ・レン、つまり息子であるベン・ソロとの関係は、これまでも良好なものではなかったことが『フォースの覚醒』から伺えます。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で、ハンはすでに亡くなっている自身の父について語ります。ハンとその父親との関係は、どのようなものだったのでしょうか。

そしてハン・ソロの人生は、自身の息子であるベンによって幕を閉じることになります。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では、ハンをならず者の世界へと導いた男を、ハンは彼に裏切られる前に先に銃を抜いて撃ちます。

これほど抜け目ない男も、息子のことは信じ切っていたのでしょう。父親のような存在の男を葬ったハンは、長い年月を経て自身もまた、息子に乗り越えられる対象となっていたのです。

『最後のジェダイ』


スター・ウォーズ/最後のジェダイ (字幕版)



ハン・ソロ亡き後の銀河を描く『最後のジェダイ』でも、彼の残した足跡を感じることが出来ます。

ミレニアム・ファルコンのコクピットに付けられていた、ハンのサイコロは『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』にて、若き日からの持ち物であり、とりわけキーラとの思い出のアイテムであることが明かされました。

こうなると、『最後のジェダイ』で感動的だったハンのサイコロをレイアに渡すルークのシーンが、今見るとハンの元カノとの思い出の品を渡すというイメージが付いてしまい、なんだか複雑な感じに…

『スター・ウォーズ』シリーズならではの、過去作への新たな見方




(C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights reserved 


このように、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を見る前、また見た後に過去作を見ると、それぞれの作品にこれまでとは違った意味合いが見いだせるようになります。

おなじみの過去作に新たな意味がもたらされることは、賛否があるかも知れませんが、40年以上続いている映画シリーズからまた新たな感じ方が出来るようになるのは、『スター・ウォーズ』ならではの体験と言えます。

(文:藤井隆史)

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