『SUNNY 強い気持ち・強い愛』、安室奈美恵の名曲と広瀬すずの水着姿に感謝!



(C)2018「SUNNY」製作委員会 



日本でも2012年に公開され、女性を中心に多くの観客の心を掴んだ韓国映画、『サニー 永遠の仲間たち』。オリジナル版の舞台を80年代の韓国から、90年代の日本に置き換えてリメイクした作品、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』が8月31日より全国公開された。

高校時代と現在の主人公たちを演じるキャスト陣の顔ぶれを見ても、正にこれぞ適役!としか思えない本作を、今回は初日の夜の回で鑑賞して来た。やはり女性中心に多くの観客が来場していた本作だったが、果たしてその内容はオリジナル版と比べてどうだったのか?

ストーリー


日本中の女子高生がルーズソックスを履き、空前のコギャルブームに沸いた90年代。そんな時代に青春を謳歌した女子高生の仲良しグループ"サニー"のメンバー6人は、20年以上の時を経てそれぞれ問題を抱える大人になっていた。

専業主婦の奈美(篠原涼子)は、ある日、久しぶりにかっての親友・芹香(板谷由夏)と再会するが、彼女は末期ガンにおかされていた・・・・・・。

「死ぬ前にもう一度だけ、みんなに会いたい」。芹香の願いを叶えるため、奈美が動き出す。梅(渡辺直美)、裕子(小池栄子)、心(ともさかりえ)、そして奈々(池田エライザ)・・・・・・、かっての仲間は無事、芹香の前に再結集できるのか?


予告編


原典への愛に満ちた、これこそ正に最良のリメイク版!


実は今回の鑑賞前、オリジナル版の知名度に頼った安易なリメイクでは?そんな不安を抱いて鑑賞に臨んだ本作。

しかし、そんな心配は全くの無用だった。

なぜなら本作は、日本人観客やオリジナル版を未見の方にも違和感無く受け入れられる様に、充分配慮して製作されているからだ。

もちろん、本来は80年代の韓国が舞台である映画を、文化も習慣も違う90年代の日本に移行する以上、オリジナル版とは全く別の表現に置き換えなければならない部分が出て来るのも事実。それでも後述する様に、日本では再現が難しいと思われた終盤の重要なシーンを、ほぼオリジナル版のまま再現しているなど、製作側の原典へのリスペクトと愛情が随所に感じられるのは見事!

中でも、奈美の過去と現在が交錯するという、正に映画のマジックを存分に味わせてくれるあの名シーンをそのまま再現した点は、オリジナル版のファンにとっても嬉しい選択だったと言える。こうして、ファンが見たい部分にはあえて手を加えず、あくまでも原典と観客側の想いを第一に考えて製作された、今回のリメイク版。

ラストシーンの独自のアレンジも含めて、最良のキャスト陣と監督に恵まれた正に最良のリメイク版である本作の魅力と面白さは、是非劇場でご確認を!



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アラフォー世代には懐かしすぎる名曲の数々が登場!


オリジナル版で印象的に登場する"ヘッドフォン"シーンに流れる曲を、果たして90年代の日本でどう置き換えるか?鑑賞前にかなり気になっていたこの部分のアレンジは、是非劇場で確認して頂ければと思うが、オリジナル版の様に80年代を代表する青春映画の名シーンへのオマージュという効果は無くなったものの、90年代の日本という時代背景を考えれば、まずは賢明な曲の選択だったと言えるだろう。

この他にも、同じ大根監督の『モテキ』で見せたモブシーンを連想させる様な、140人のコギャルが見事なダンスを披露するOPシーンに流れる「LA・LA・LA LOVE SONG」や、予告編でも使用されている安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」「Don`t wanna cry」。そして何と言ってもタイトルにその曲名が使用されている、小沢健二の「強い気持ち・強い愛」など、本作では音楽担当にあの小室哲哉を迎えただけに、90年代に青春を送った世代には正に涙物の選曲となっているのが見事!もちろん世代に関係なく、今の若い観客にも充分に楽しんで頂ける名曲の数々なので、是非劇場でその歌声に触れて頂ければと思う。



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とにかく、出演キャストがハマり役揃い!


現在と高校生時代のキャストの違和感の無さが見事だったオリジナル版だが、実は今回の日本版も全く負けてはいない!

どの主要キャストも一目で高校時代と現在の面影がバッチリ重なる名キャスティングは、再会するまでの長い歳月を経ても変わらぬ彼女たちの友情に、絶対の説得力を与えてくれている。

例えば、渡辺直美演じる"梅"の違和感の無さや、小池栄子演じる"裕子"も顔が似ているのはもちろん、確かにこれだけの歳月が経ったらこうなるだろう、そう思わせて実にハマり役なのだ。



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更には、広瀬すずに負けない存在感を発揮する山本舞香といい、池田エライザが見せる"クールビューティー"と屋台で大泣きする可愛さとの落差など、出演キャストの名演を挙げていたらキリがないほど!



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そんな中でも強烈に印象に残るのは、やはり奈美の祖母のキャラクターだろう。オリジナル版での霊に取り付かれたフリ、という設定を日本的に上手く変換させた影の功労者であるこの祖母。実はこの役を演じる女優さんが、実に見事な演技を見せてくれるのだ!前回紹介した『検察側の罪人』の酒向芳や、『劇場版コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命–』での脇役俳優陣の起用など、最近の邦画にはこうした無名?の俳優さんを意識的に起用する傾向があるようだ。

確かに我々観客にとっては、「え、こんな俳優さんがいたの?」という驚きと共に映画への興味が更に増すだけに、是非これからもこうした傾向が続いてくれることを願って止まない。

最後に


1980年代後半の韓国から1990年代の日本へ。その大胆な舞台設定の変更が、実は予想以上に違和感無く成功していた本作。

中でもオリジナル版の重要なシーンであり、日本では再現が難しいと思っていた文化祭での大事件が、ほぼそのまま再現されていた点は見事としか言いようが無い。

更に、今回のリメイクで最もハードルが高いと思われた、タイトルにもなっている彼女たちのグループ名"サニー"の由来を、果たして90年代の日本でどの様にアレンジしてくるのか?という点。この部分は確かに若干苦しいアレンジなのだが、このシーンの雰囲気と将来への希望に溢れていた高校時代の彼女たちを表現する上では、最良の選択だったと言えるだろう。



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ここまで述べてきた様に、日本への移行に関してかなりの努力を感じさせる本作だが、オリジナル版にあった様な政治的背景の部分の再現は、やはり日本では無理だったようだ。その代わり、90年代の日本を席捲していた"コギャル文化"のパワーと、当時の流行歌をあの時代共通の記憶として上手く使い、日本人にも受け入れられる様に翻訳した大根仁監督の選択は、実に正しかったと言える。

ただ、それでもネットの感想やレビューには、女子高生同士が相手を裸にして写真を撮るリンチが酷い!とか、文化祭での展開が酷い!などの反応が見られたのも事実。しかし前者の意見に関しては、単なる硬派の半不良グループに思えたオリジナル版の"サニー"の面々に対して、90年代の日本の"コギャル文化"を描く以上、やはり"ブルセラ"や"援交"などの性的部分を描く必要はあったと思うし、後者に関してもオリジナル版の展開へのリスペクトや挑戦と受け止めて頂ければ、恐らく納得して頂けるのではないだろうか。

今回のリメイク版で個人的に非常に残念だったのは、奈美の家庭描写が意外と表面的だった点だ。娘の制服を着て安室奈美恵の曲を歌っていた奈美が娘に見つかるシーンなどは、もっと面白く膨らませられるはずなのだが、ただ見つかって終わりなのはあまりに残念!"サニー"の仲間との再会が現在の奈美の家族関係にも良い影響を与える、出来ればオリジナル版の様にそこまで見せて欲しかった、そう思わずにはいられなかったと言っておこう。

しかし、これらの点を補ってあまりあるのが、日本版におけるラストの処理の仕方だ。オリジナル版で多くのファンが不満を抱き、その先が見たい!と思ったであろう部分を、果たして今回のリメイク版がどう描いてくれているのか?実はこの部分への挑戦だけで、今回のリメイク版は充分見る価値があると言えるのだ。更には、水着姿の"サニー"のメンバーが夏のプールで敵対グループと対決する!という眼福過ぎるシーンの登場も、正に観客目線の大サービスとなっているので、ここも是非お楽しみに!

公開当時に観て感動した方も、オリジナル版を未見で今回初めて観るという方も、幅広い世代の方が自身の青春時代に置き換えて楽しめることは確実の本作。世代を超えて多くの観客の心に残る名作なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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