映画コラム

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2018年11月28日

変幻自在の名俳優・大泉洋!『恋は雨上がりのように』をプレイバック

変幻自在の名俳優・大泉洋!『恋は雨上がりのように』をプレイバック




© 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館



バラエティタレントと呼ぶべきか、いまや名俳優と呼ぶべきか。北海道が生んだスター・大泉洋の大活躍が続いている。12月28日公開の映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』では、筋ジストロフィーを患った実在の人物を演じる大泉。首と手しか動かせないにも関わらず、図々しくワガママで惚れっぽいというちょっと自由すぎる性格の持ち主だ。10kgの減量で挑んだその演技への熱量は、予告編からも十分なほど伝わってくる。

ほかにも大泉が出演する作品としては、主人公の吹き替えを担当した『グリンチ』(12月14日公開)や「北海道映画シリーズ」第3弾となる『そらのレストラン』(2019年1月25日公開)がスタンバイ。その“復習”というわけではないが、小松菜奈との共演で話題を呼んだ主演作『恋は雨上がりのように』が11月21日に発売・レンタルが始まったところなので、今回改めて紹介していきたい。

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Blu-ray スペシャル・エディション © 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館




抑えた演技で光る大泉洋の魅力



今年5月に公開された『恋は雨上がりのように』は、眉月じゅん原作の同名マンガを『世界から猫が消えたなら』『帝一の國』などの永井聡監督が実写映画化した作品。大泉・小松のほか清野菜名・磯村勇斗・葉山奨之・松本穂香・山本舞香・濱田マリ・戸次重幸・吉田羊が顔を揃えた。

本作はズバリ言ってしまえば、バツイチ・子持ちの中年男性に恋をした女子高生の物語だ。ファミレス店長の近藤を大泉が演じ、近藤を好きになる女子高生・あきらに小松が扮している。怪我で陸上の夢を絶たれたあきらがファミレスで近藤に優しく声をかけられ、それがきっかけとなりあきらはファミレスでバイトを始めることに。近藤への淡い想いは恋心へと変わり、気持ちを抑えられなくなったあきらは真っ直ぐにその想いを伝える。45歳・バツイチ・子持ちの近藤は高校2年生、17歳であるあきらの恋心に応えられないまま、ひたむきに想いをぶつけてくる彼女と向き合っていく。



© 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館



女子高生が中年男性に恋をするという内容で、聞きようによってはセンセーショナルに捉えられかねない。公開時にはその設定に対する批判が見られたのも事実だが、劇場に足を運んだ多くの観客は近藤とあきらの関係性について正当な見方をもって評価している。実際に近藤という男は女子高生に告白されたからといって浮かれるような人間では決してなく、あきらと真摯に向き合った上で答えを出している。年の差がピックアップされがちだが、作品の核にあるのは、結局のところ人間として互いを尊重し合った男女の物語だったのだ。

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DVD スタンダード・エディション © 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館



思えば実写映画化が発表されたときから、本作は批判に晒されていた。その矢面に立たされたのが大泉本人だ。俳優としての地位は確立していたものの、どうしても大泉のキャラクター性が(あるいは風貌も)先行してしまうために、“原作キャラとかけ離れている”という指摘がほとんどだった。人気マンガほど実写化の際に背負いやすい宿命であり、こればかりはその批判を覆すほどの演技を見せるほかない。公開までつきまとう呪詛のようでもあるが、これを大泉は見事に打ち破ったことになる。

もちろんビジュアルまではどうこうできないものの、大泉は普段の印象とは変わって抑えた演技で近藤を体現してみせ、肩肘の力を抜いた絶妙な空気感を醸し出すことになった。時として飄々とした雰囲気をまとう大泉だが、近藤という役を通して“現状維持”に留まり続けてきた中年男性の悲哀をしっかりと漂わせてみせたのだ。あきら以外のファミレスのスタッフから低く見られがちな近藤にリアリティを持たせることになり、我を押し殺した大泉の姿はまさに“芸達者”な一面を証明したものだった。



© 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館



大泉の演技を引き立てた小松菜奈&戸次重幸



大泉の好演が光ったのは、あきらを演じた小松の存在も大きな影響を与えていたように思える。どこかツンとした表情を見せながらも、実はどこまでも真っ直ぐに近藤を見つめているあきらの視線は、小松が持つ目力が遺憾なく発揮された部分でもあった。そういった意味では大泉とは対照的に、キャスティング発表時から小松は原作ファンに好意的に迎え入れられていたフシがある。さらに小松の目力は、陸上を諦め無為に日常を過ごす中で陰りを帯びた目の色や、あきらのことをライバル視していた他校の陸上部員・みずきにハッパをかけられた際に闘志を宿していく姿を見せる中で、この上ない役割を果たしている。あきらは二次元という世界から小松という表現者を得たことでその眼差しに生命を宿し、彼女の瞳に映る近藤の姿にもまた人間らしさを与えたのだ。



© 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館



大泉といえば演劇ユニット“TEAM NACS”のメンバーとしても有名だが、本作では同じくTEAM NACSメンバーである戸次との共演シーンがファンにとって嬉しいサプライズとなったのではないか。戸次は近藤の同級生で人気小説家の九条を演じており、近藤は学生時代に九条とともに小説家を目指していたときもあった。九条だけがその目標を達成したことになるが、それでも2人が酒を酌み交わす場面は旧知の仲である柔らかな空気感が印象を残す。良きライバルでもあるからこそ本音で語り合い、ふざけては笑い合う。男の友情というと少し堅苦しいかもしれないが、近藤と九条が作り上げる独特な空気感は、実際に大泉と戸次が長い時間を共有してきた間柄だからこそ出すことができた名場面でもある。それにしても戸次は九条役でウェーブのかかった長髪姿を披露しているが、本来の短髪姿からガラリと雰囲気を変えて大泉との共演に挑んでいるのも面白い。



© 2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館




作品を彩った多彩な音楽



せっかくなので『恋は雨上がりのように』の音楽にも触れておきたい。本作はメインコンポーザーにギタリストの伊藤ゴローを迎えたほか、インターネットロックバンド「神聖かまってちゃん」のの子&mono、「忘れらんねえよ」のボーカルギター・柴田隆浩、ソロプロジェクト「スカート」の澤部渡が参加。それぞれの持ち味を活かした楽曲が提供されたほか、主題歌は鈴木瑛美子×亀田誠治のタッグで神聖かまってちゃんの「フロントメモリー」をカバーしている。

オリジナル・サウンドトラック「恋は雨上がりのように」



中でも伊藤の手掛けた「走るあきら!」「みずき」「恋は雨上がりのように~夜明け~」で聞こえてくるピアノとドラムセットを中心としたメロディは、あきらの瑞々しくも情熱的な青春が軽快なリズムで刻まれた楽曲となっている。特に「恋は雨上がりのように~夜明け~」では弦楽も加わってメロディを牽引し、物語の“その先”へと向かって走り出していくあきらを彷彿とさせる爽快感溢れる名曲に仕上がっているので、ぜひ耳を傾けてほしい。


まとめ



こう書くと失礼なところではあるが、言ってみれば小松と大泉の組み合わせは美女と野獣ならぬ“美女と珍獣”のようなもの。それでも2人の共演による“ミスマッチ感”は、少女と中年男性の恋模様を描いた作品の中で見事プラスに作用することとなった。大泉&小松というコンビだから生み出せた相乗効果を、この機会に改めてチェックしてみては?

(文:葦見川和哉)

『恋は雨上がりのように』Blu-ray&DVD リリース情報


■発売中
Blu-ray スペシャル・エディション:6,800円+税/2枚組/SBR28339D
DVD スタンダード・エディション:3,800円+税/SDV28340D
■レンタル中
Blu-ray/DVD

発売元:小学館/博報堂 DY ミュージック&ピクチャーズ 販売元:東宝



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