2019年1月1日に生誕100周年を迎える小説家J.D.サリンジャーの半生を描いた映画『ライ麦畑の反逆児　ひとりぼっちのサリンジャー』ほか、誰もが知る傑作小説の誕生秘話を描いた作品が年末年始に立て続けに公開される。作家の知られざる裏側・創作の裏側にせまる注目の新作を3作品紹介する。

『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』（公開中）

作家：イギリスの文豪チャールズ・ディケンズ
小説：「クリスマス・キャロル」

©BAH HUMBUG FILMS INC & PARRALLEL FILMS (TMWIC) LTD 2017

1843年10月、スランプに陥っていた英文学作家のチャールズ・ディケンズは、家族のためにもベストセラーを生み出したいと思い、クリスマスを題材にした小説を書くことを思い付くが、残された執筆期間はわずか6週間しかなかった。執筆に没頭するあまり、いつの間にか小説の世界に入り込んでしまった彼は、「クリスマス・キャロル」の登場人物であるスクルージとの不思議な出会いを経て、心の奥にしまっていた幼少期の記憶や自らの問題と対峙していくことに――。その創作過程とディケンズの心の旅を、ユニークに描いたファンタジー作品。

『メアリーの総て』（12/15公開）

作家：イギリスの女性作家メアリー・シェリー
小説：「フランケンシュタイン」

© Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017

ティム・バートン、ギレルモ・デル・トロ、デヴィッド・リンチら今世紀の鬼才たちにも絶大な影響を与えた、ゴシック小説の金字塔「フランケンシュタイン」誕生から200年―恐ろしい〈怪物〉の物語を描いたのは、当時18歳のメアリー・シェリー。英文学史に名を残す女流作家でありながら、これまでヴェールに包まれてきた彼女の波乱に満ちた人生を初の映画化。小説家を夢見る少女メアリーは妻子ある詩人パーシーと出会う。2人は互いの才能に惹かれあい、情熱に身を任せて駆け落ちするが、メアリーは数々の悲劇に見舞われてしまう。失意の中にあったメアリーは詩人バイロン卿の別荘で「みんなで1つずつ怪奇談を書いて披露しよう」と持ちかけられ……。

『ライ麦畑の反逆児／ひとりぼっちのサリンジャー』（1/18公開）

作家：J・D・サリンジャー
小説：「ライ麦畑でつかまえて」

© 2016 REBEL MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

世界中で累計6,500万部を突破した”青春のバイブル”。発売直後から社会現象となるほど爆発的に売れ、現在でも世界で毎年25万部ずつ売れ続けている不朽の名作。20世紀半ばの華やかなニューヨークを舞台に若きサリンジャーが自分の作風を見つけ出そうと試行錯誤を重ねる姿、社交界のセレブとの恋の顛末、恩師との運命的な出会い、第二次世界大戦の最前線での経験によるトラウマにもがき苦しむ姿…圧倒的な名声と富を手に入れながら、なぜその絶頂期に文壇から姿を消したのか？

ストーリー概要

1939年ニューヨーク。大学中退を繰り返していた20歳のサリンジャーは、作家を志しコロンビア大学の創作学科に編入する。愛読書「グレート・ギャッツビー」さながらマンハッタンの社交界に顔を出し、セレブのウーナ・オニールと電撃的な恋に落ちる一方で、大学教授ウィット・バーネットのアドバイスのもと書き始めた短編を出版社へ売り込むが、ことごとく断られつづける。ようやく、自分の分身ともいえるホールデン・コールフィールドを主人公にした短編「マディソン・アヴェニューのはずれでの小さな反抗」がニューヨーカー誌に掲載決定という吉報が舞い込むがその矢先、太平洋戦争の勃発により、掲載はキャンセルとなってしまう。
招集を受け失意のまま戦地に赴いたサリンジャーに追い打ちをかけるように、アメリカに残して来た恋人ウーナがチャーリー・チャップリンと結婚するというニュースが届き、やがてノルマンディ上陸作戦に参加し、最前線の地獄を経験するサリンジャー。終戦後も戦争のトラウマから長らく執筆にとりかかることができなかったが、もがき苦しみながら完成させた初長編「ライ麦畑でつかまえて」は文壇の常識を破って発売直後から大反響を呼んでベストセラーとなり、サリンジャーは一夜にして時の人となる。突然スターダムに押し上げられ名声も富も手に入れたサリンジャーだったが、次第に世間の狂騒に背を向けるようになる…。