映画コラム

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2019年01月22日

第91回アカデミー賞、7つの注目ポイント【ノミネーション一覧付き】

第91回アカデミー賞、7つの注目ポイント【ノミネーション一覧付き】



Photo credit: lincolnblues on Visualhunt / CC BY-NC-ND 


第91回アカデミー賞のノミネートが発表され、日本の作品も大健闘。今回の記事ではノミネート一覧を確認し、その後で注目ポイントを編集長コラムとして見ていきたいと思います。

ノミネート一覧


作品賞


・ブラックパンサー
・ブラック・クランズマン
・ボヘミアン・ラプソディ
・女王陛下のお気に入り
・グリーンブック
・ROMA/ローマ
・アリー スター誕生
・バイス

監督賞


・アルフォンソ・キュアロン(ROMA/ローマ)
・ヨルゴス・ランティモス(女王陛下のお気に入り)
・スパイク・リー(ブラック・クランズマン)
・アダム・マッケイ(バイス)
・パヴェウ・パヴリコフスキ(COLD WAR/あの歌、2つの心)

主演男優賞


・クリスチャン・ベール(バイス)
・ブラッドリー・クーパー(アリー スター誕生)
・ウィレム・デフォー(永遠の門 ゴッホの見た未来)
・ラミ・マレック(ボヘミアン・ラプソディ)
・ヴィゴ・モーテンセン(グリーンブック)

主演女優賞


・ヤリーツァ・アパリシオ(ROMA/ローマ)
・グレン・クローズ(天才作家の妻 40年目の真実)
・オリヴィア・コールマン(女王陛下のお気に入り)
・レディー・ガガ(アリー スター誕生)
・メリッサ・マッカーシー(Can You Ever Forgive Me?)

助演男優賞


・マハーシャラ・アリ(グリーンブック)
・アダム・ドライヴァー(ブラック・クランズマン)
・サム・エリオット(アリー スター誕生)
・リチャード・E・グラント(Can You Ever Forgive Me?)
・サム・ロックウェル(バイス)

助演女優賞


・エイミー・アダムス(バイス)
・マリナ・デ・タヴィラ(ROMA/ローマ)
・レジーナ・キング(ビール・ストリートの恋人たち)
・エマ・ストーン(女王陛下のお気に入り)
・レイチェル・ワイズ(女王陛下のお気に入り)

脚本賞


・女王陛下のお気に入り
・魂のゆくえ
・グリーンブック
・ROMA/ローマ
・バイス

脚色賞


・バスターのバラード
・ブラック・クランズマン
・Can You Ever Forgive Me?
・ビール・ストリートの恋人たち
・アリー スター誕生

撮影賞


・COLD WAR/あの歌、2つの心
・女王陛下のお気に入り
・Never Look Away
・ROMA/ローマ
・アリー スター誕生

編集賞


・ブラック・クランズマン
・ボヘミアン・ラプソディ
・女王陛下のお気に入り
・グリーンブック
・バイス

美術賞


・ブラックパンサー
・女王陛下のお気に入り
・ファースト・マン
・メリー・ポピンズ リターンズ
・ROMA/ローマ

衣装デザイン賞


・バスターのバラード
・ブラックパンサー
・女王陛下のお気に入り
・メリー・ポピンズ リターンズ
・ふたりの女王 メアリーとエリザベス

メイキャップ&ヘアスタイリング賞


・Border
・ふたりの女王 メアリーとエリザベス
・バイス

視覚効果賞


・アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
・プーと大人になった僕
・ファースト・マン
・レディ・プレイヤー1
・ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

録音賞


・ブラックパンサー
・ボヘミアン・ラプソディ
・ファースト・マン
・ROMA/ローマ
・アリー スター誕生

音響効果賞


・ブラックパンサー
・ボヘミアン・ラプソディ
・ファースト・マン
・クワイエット・プレイス
・ROMA/ローマ

作曲賞


・ブラックパンサー
・ブラック・クランズマン
・ビール・ストリートの恋人たち
・犬ヶ島
・メリー・ポピンズ リターンズ

主題歌賞


・「All the Stars」(ブラックパンサー)
・「I'll Fight」(RBG)
・「The Place Where Lost Things Go」(メリー・ポピンズ リターンズ)
・「Shallow」(アリー スター誕生)
・「When a Cowboy Trades His Spurs for Wings」(バスターのバラード)

アニメーション映画賞


・インクレディブル・ファミリー
・犬ヶ島
・未来のミライ
・シュガー・ラッシュ:オンライン
・スパイダーマン:スパイダーバース

外国語映画賞


・Capernaum(レバノン)
・COLD WAR/あの歌、2つの心(ポーランド)
・Never Look Away(ドイツ)
・ROMA/ローマ(イタリア)
・万引き家族(日本)

長編ドキュメンタリー映画賞


・Free Solo
・Hale County This Morning, This Evening
・Minding the Gap
・Of Fathers and Sons
・Won't You Be My Neighbor?

短編ドキュメンタリー映画賞(短編)


・Black Sheep
・End Game
・Lifeboat
・A Night at the Garden
・Period. End of Sentence.

短編実写映画賞


・Detainment
・Fauve
・Marguerite
・Mother
・Skin

短編アニメーション映画賞


・Animal Behaviour
・Bao
・Late Afternoon
・One Small Step
・Weekends

注目ポイント1:最多ノミネートは?最有力候補は?


今回最多ノミネートとなったのはアルフォンソ・キュアロン監督のメキシコ映画『ROMA/ローマ』と『女王陛下のお気に入り』で10部門。

『ROMA/ローマ』は劇場公開ではなくNetflix制作の映画であり本日現在日本でもご覧になることが可能です。また、ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞も受賞をしています。



『ROMA/ローマ』 


1970年代のメキシコを舞台に描くモノクロ映画で、アルフォンソ・キュアロン監督の子供時代を投影した物語とんばっています。作品賞はじめ、監督賞、主演女優賞(ヤリッツァ・アパリシオ)、助演女優賞(マリーナ・デ・タビラ)、脚本賞、撮影賞、美術賞、音響編集賞、録音賞、外国語映画賞とノミネートを果たし最多ノミネートとなりました。ただし、作品賞と受賞作が被ることの多い編集賞を取りこぼしているのが気にもなります。

ヨルゴス・ランティモス監督作品『女王陛下のお気に入り』は、18世紀初頭のイングランドを舞台にした、女王と幼なじみと召使いの3人の宮廷ドラマです。こちらの作品は英国アカデミー賞でも最多ノミネートとなっています、



『女王陛下のお気に入り』 


(C)2018 Twentieth Century Fox  


では、アカデミー賞作品賞の最有力候補はこの2作品かというと、もう1作品あります。それが『グリーンブック』です。



『グリーンブック』 


© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION
CO., LLC. All Rights Reserved. 


『グリーンブック』は今回作品賞ほか5部門のノミネートになっていますが、アカデミー賞作品賞と受賞作品がほとんど同じのアメリカ製作者組合賞で作品賞を受賞しています。なぜほとんど同じになるかというと投票員が被っているためです。

ただし、この3作品以外になる可能性も当然あります。なぜなら、アカデミー賞には「風」があるからです。過去にはベン・アフレック監督作品の『アルゴ』がこの風に乗って最後に一気に受賞へと突き進みました。

今回のノミネート作品の中では『 ボヘミアン・ラプソディ』や『ブラックパンサー』が世界的に大ヒットしており、多くのファンの後押しで逆転受賞となる可能性もあるわけです。

注目ポイント2:『万引き家族』ノミネート


日本人として今回のアカデミー賞の最も大きなニュースは二つはあります。その一つが『万引き家族』のアカデミー賞外国語映画賞のノミネートになります。



『万引き家族』 


(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.  


第71回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞し、その後も63の海外映画賞の各部門で71ノミネート31の受賞を重ねています。

今回のノミネートを受けて2月8日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国200館規模での凱旋上映も決定しました

実際に外国語映画賞を受賞できるかは、前述の『ROMA/ローマ』という強力作品がいるため何とも言えません。しかし、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞をしているので、作品賞・監督賞などが『ROMA/ローマ』になれば外国語映画賞は『万引き家族』が受賞することも考えられます。

アカデミー賞授賞式の当日まで『万引き家族』の受賞を日本人として願いたいと思います。

注目ポイント3:『未来のミライ』ノミネート


もう一つ日本作品の話題で、細田守監督の長編アニメーション『未来のミライ』が長編アニメーション賞にノミネートされました。



『未来のミライ』 


 (C)2018 スタジオ地図 



『未来のミライ』もゴールデングローブ賞アニメーション部門にノミネートされるなど海外映画賞での評価が非常に高く、こちらも受賞に期待が高まります。長編アニメーション賞は、今回強豪揃いでして、アメリカにおいて歴代のアニメーション映画の史上最高興行収入を記録した『インクレディブル・ファミリー』やゴールデングローブ賞ほか多くのアニメーション賞を受賞している『スパイダーマン:スパイダーバース』がノミネートされています。 こちらも日本人として当日まで受賞を願いたいと思います。

注目ポイント4:『犬ヶ島』ノミネート


続いて『犬ヶ島』という映画が今回アニメーション賞にノミネートされています。そちらはウェス・アンダーソン監督作品で、既に日本では昨年に公開をされたアニメーション映画です。こちらをわざわざ注目ポイントに入れた理由は明確でして、日本を舞台にした映画であるからです。



 『犬ヶ島』


(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation 


『犬ヶ島』は、すでにDVDや配信などが開始されているので、是非日本を舞台にしたウェス・アンダーソン監督のオリジナリティ溢れるアニメーションをアカデミー賞までに堪能してみてはいかがでしょうか。

注目ポイント5:『ボヘミアン・ラプソディ』大健闘


注目ポイントの5つ目に差し掛かってしまいましたが、多くの方が今回のアカデミー賞のノミネートの発表を受けて最も喜んでいるのが『ボヘミアン・ラプソディ』の作品賞ほかノミネートではないでしょうか。



 © 2018 Twentieth Century Fox 


日本での興行収入も100億円を目前としており、2018年に公開された洋画邦画全ての映画の中で最高の興行収入記録を今も更新し続けています。何よりもこの作品は熱狂することができる作品でして、映画を見終えた瞬間からもう一度見たくなる圧倒的な魅力に溢れています。

実際、今回アカデミー賞のノミネート発表中も、『ボヘミアン・ラプソディ』の作品賞ノミネートの瞬間にその喜びをSNSで表している方が映画ファンに限らず数多くいらっしゃいました。

『ボヘミアン・ラプソディ』はゴールデングローブ賞のドラマ部門作品賞を受賞しており、当然今回のアカデミー賞に関しても作品賞受賞の可能性は低くありません。前述の通り、最有力ではないにしろ、アカデミー賞は番狂わせが比較的多く起こります。全世界がこの『ボヘミアン・ラプソディ』に熱狂している状況の中で作品賞まで駆け上がっていくことは十分に考えられると思いますし、そうなったらドラマティックだなと思います。

注目ポイント6:『ブラックパンサー』大健闘


もう一つ多くの映画ファン、そしてアメコミファンの方が喜んだのが『ブラックパンサー』が作品賞ほか7部門ノミネートされたことではないでしょうか。

ブラックパンサー (字幕版)


 『ブラックパンサー』



『ブラックパンサー』は作品の質が良いことなどから、アカデミー賞にノミネートするべきだという声は公開当初からありました。しかしアメコミ映画であり、過去には2008年に圧倒的な支持・評価を受けたにも関わらずクリストファーノーラン監督の『ダークナイト』が作品賞ほか主要部門からノミネート漏れしたこともありました。

アメリカンコミックに対するアカデミー賞での存在感はそこまで高くはありませんでしたので、今回の『ブラックパンサー』ノミネートは風が変わったなという印象です。

ちなみに、マーベル作品の作品賞ノミネートは史上初です。こちらも受賞をしたらドラマティックです。

注目ポイント7:作品賞・監督賞両方ノミネートの作品は?


作品賞と監督賞は同じ作品が受賞することが多く、今回この2つに同時ノミネートされているのは以下の4作品です。

・ブラック・クランズマン
・女王陛下のお気に入り
・ROMA ローマ
・バイス

そして、合わせて作品賞受賞作と被ることが多い編集賞にもノミネートされているのは以下の3作品です。

・ブラック・クランズマン
・女王陛下のお気に入り
・バイス



『ブラック・クランズマン』 


(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
 





『バイス』 


© 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved. 



そう、前述で最有力と書いた『ROMA/ローマ』や『グリーンブック』には漏れがあるのです。『グリーンブック』が監督賞・編集賞にもノミネートされていれば作品賞まで一気に突っ走ると思っておりましたが、漏れがある以上『ROMA/ローマ』、『グリーンブック』以外に『ブラック・クランズマン』『女王陛下のお気に入り』『バイス』の可能性もあり、圧倒的なファンを抱える『ボヘミアン・ラプソディ』、『ブラックパンサー』、そして『アリー スター誕生』も侮れません。



つまり、今回作品賞にノミネートされた8作品ともまだ作品賞レースから一切離脱をしていないわけです。近年稀に見る予想のしにくい情勢と言えるでしょう。

日本の作品もありますし、アカデミー賞当日までワクワクしながら過ごすことができそうです。

「シネマズPLUS」では、アカデミー賞にノミネートされた作品の関連記事も多く掲載をしております。この機会に是非合わせてお楽しみください。

関連記事


『万引き家族』
・『未来のミライ』
『ボヘミアン・ラプソディ』
『犬ヶ島』
『アリー スター誕生』


(文:シネマズPLUS編集長 ヤギシタシュウヘイ(柳下修平))

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