『サイバー・ミッション』、「ずっと楽しい」その魅力を解説!



(C)2018 SIRENS PRODUCTIONS LIMITED BONA ENTERTAINMENT COMPANY LIMITED MORGAN & CHAN FILMS LIMITED


現在公開中の中国・香港合作の映画『サイバー・ミッション』は、観ている間じゅう「楽しい!」に溢れる素晴らしい娯楽作でした!

掲げられているキャッチコピーは「60秒で世界を救え!」「最強のホワイトハッカーVS最凶のブラックハッカー」「史上最悪のサイバーテロを阻止するために選ばれたのは、ハッカーに憧れる自宅警備!?」などといったケレン味いっぱいのもの。その通りの味わいを期待すれば、もう大満足できるのではないでしょうか。本編の魅力を、大きなネタバレのない範囲でたっぷりとお伝えします。

1:山下智久演じる悪役が怖くて最高!
流暢な英語も披露するぞ!


日本人にとっての本作『サイバー・ミッション』の一番の注目ポイントは、やはり山下智久がメインキャラクターとして出演しているということでしょう。押しも押されもせぬ大人気アイドルにして、主演ドラマおよび映画の『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』などを大ヒットに導いた国民的俳優が、初の映画での海外進出、しかも初となる“悪役”を演じているのですから。

結論から言えば、「山下智久が悪役にめちゃくちゃハマっている」という1点だけでも、彼のファンであれば是が非でも観なければならないと断言します。しかも、ただ権力や暴力を振りかざす安っぽい悪役というわけではなく、その山下智久でしかなし得ない“人間的な魅力”や“カリスマ性”を生かした役柄になっていたのですから!

どういうことか言うと、山下智久演じる実業家は“敵か味方か判断できない”立場、“信用していいか”と頭を悩ませる存在として登場するのですが、山下智久の美しさと醸し出される魅力にうっとりしてしまい、ついつい心を許してしまいそうになる……(危ない!)という、観る人を良い意味で安心させてくれない役柄になっているのです。これまでに演じた役には「愛想がなくてクールだけど根は善人」な印象もありましたが、今回はその山下智久へのパブリックイメージ(思い込み)さえもプラスに働き、良い意味で疑心暗鬼にさせてくれるのです。

さらに、美形かつその表情が読みにくいということ、人心を掌握する術に明らかに長けているということからは、かなり“サイコパス”な印象さえあり、『十三人の刺客』で稲垣吾郎が演じていた最悪の暴君、『悪の教典』で伊藤英明が演じていた殺人鬼の教師をも彷彿とさせました。演じている俳優が美形かつ普段は善人に見えるからこそ、悪役としての恐ろしさもむしろ際立つようになる……その“逆手にとった”ようなキャスティングが見事にハマっており、山下智久がその期待に最大限に応えていることに感動しきり、「もっと他の作品でも悪役を演じてほしい!」と心から願えるほどでした。

なお、山下智久はこの悪役を演じるにあたって、体重を6キロ減量した他、体毛を剃って“気味の悪い感じ”を出そうともしていたのだとか。それは画面では映りようもないことでもあるのですが、“自分の気持ち”として最大限の努力をする俳優としての姿勢も、賞賛されてしかるべきでしょう。

しかも、山下智久は映画の全編で英語(一部は中国語)を話しており、それがまた流暢で素晴らしい! 彼は以前から“海外志向”が強く、日本に住むネイティブスピーカーの友人との会話やメールを全て英語で行い、ロサンゼルスに赴きアクターズスクールで発音のレッスンも受け、番組内でアメリカ横断を体験したほか、英会話番組でもMCを務めてアンジェリーナ・ジョリーへもインタビューするなど、英語力をつけ仕事にも生かしてきたのだとか。それが初めて海外進出した映画で、これまた存分に生かされたというのは……山下智久本人はもちろん、彼のファンにとっても感無量なのではないでしょうか。


2:主人公はボンクラオタク青年!
しかしホワイトハッカーとしての才能を持っていた!


本作が題材としているのは、誰もが聞いたことがあるであろう“ハッカー”という職業の活躍です。ハッカーと聞くと悪人のようなイメージを持たれるかもしれませんが、ハッカーの中にはその能力を善良な目的のために行使している者もたくさんいるおり、一方で悪意を持ってシステムへの攻撃や侵入を行うハッカーは“クラッカー”などと呼称されています。前者はホワイトハッカー、後者はブラックハッカーとも呼ばれ、劇中ではこの両者の対決が描かれているのです。

本作で面白いのは、ホワイトハッカーの任務に選ばれるのがほぼほぼ“自宅警備員”なボンクラオタク青年(マンガ「ワンピース」の大ファン)であったこと。普段の彼は本当に冴えないのですが、ハッキングの能力は並々ならぬものがあったため、期せずとして世界を救うミッションに参加することになるのです。彼をスカウトするのが、ヨーロッパ系中国人のイケメンと、格闘技に長けた美女というミステリアスなコンビというのも楽しいところ。主人公が良い意味で平凡以下なキャラであるうえに、“巻き込まれ型”で物語が進むために感情移入しやすいというというのも、本作の美点でしょう。

なお、日本ではホワイトハッカーの人材不足が叫ばれており、育成のためのスクールが開講されているなど、国を挙げてホワイトハッカーの育成に乗り出しているようです。本作は良い意味で単純明快な娯楽作なのですが、ホワイトハッカーという職業の啓蒙になっている部分もあるかもしれませんね。



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3:ハリウッド仕込みのアクションが満載!
ひと時たりとも退屈させません!


本作のさらなる魅力は、飛んだり!跳ねたり!スタイリッシュな格闘術でザコ敵を倒しまくったり!スパイさながらの侵入ミッションをしたり!カーチェイスを繰り広げたり!なアクションの連発と、それぞれに気合が入りまくっていることでしょう。それもそのはず、アクション監督を務めているのは『ボーン・アイデンティティー』のニコラス・パウエルで、アクション演出がまさに“ハリウッド仕込み”だったのですから。

そのアクションの撮影現場はかなり過酷で、主人公を演じたハンギョンによると「アクション監督はクレイジーな人だった」「スタントマンはほぼゼロでビルの3階や8階から飛び降りた」「撮影後は全身あざだらけになった」などと文字通り“命がけ”であったことを告白しており、山下智久も「全治2週間の怪我をほぼ(ハンギョンと)お互いにしていた」と振り返るほどでした。

さらなる魅力になっているのは、編集および物語運びのテンポがかなり早く、「ハッキング!」「アクション!」「ハッキング!」「アクション!」な感じに、いい意味で矢継ぎ早に楽しませてくれること。上映時間は99分とタイトで、余計な会話シーンもほとんどなく、ちょっと間延びしそうなシーンがあれば「巻きで!」な早回しの編集すらしてくれます。

しかも、終盤では道路を封鎖して撮影された、タイムリミットとハッキングの要素までもが加わった怒涛の勢いの街中でのカーアクションが展開! とことん観客を飽きさせないアイデアが満載、徹頭徹尾エンターテインメントが詰め込まれ、「楽しんでいってね!」な気概が伝わりまくったため、大好きになれました。



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4:ツッコミどころが満載!
しかしキュートでニコニコしちゃう!


さてさて、ここまで申し上げていても、本作『サイバー・ミッション』の最大の魅力を申し上げておりませんでした。それは“ツッコミどころが満載”であること! もう5分に1回は「なんでやねん!」と気持ちよくツッコめる、ツッコミ待ちにもほどがあるエンターテインメントでもあったのです。

具体的なツッコミどころを述べるのであれば、「今時のハッカーってそんなに身体能力を求められるの?」ということ。序盤の“凄腕ハッカーのコンビがわざわざカジノに侵入してザコ敵を無双”だけでも大笑いしましたが、主人公も主人公で“スカウトされると即フィジカルトレーニングを強要される”ため、「これが今時のハッカーの常識なんだ!ハッカーって大変だな!」と膝を打つ思いでした(たぶん現実とは違います)。

その後も、主人公たちハッカーチームは、スパイ映画さながら、もはや「SASUKE」並みかそれ以上の身体能力を求められるミッションに赴きます。「いやいや、わざわざ侵入せずに遠隔からハッキングすればいいやんけ!」と誰もが思う常識はこの映画では通用しません。例えるのであれば、『ミッション・インポッシブル』シリーズでサイモン・ペッグが演じていたハッカーのキャラが、トム・クルーズ並みの身体能力をも両立しないといけない感じになっています。いやはや、本当にハッカーって大変だな(たぶん現実とは違います)。

他にもギリギリでネタバレにならないツッコミどころを挙げるのであれば「その変装はさすがに無理があるんじゃね」「お前らはセキュリティにもっと危機意識を持て」「◯◯シーンめっちゃ長かったな!」「やっぱり日本人のコミュニケーションは茶道だよな」「それで解決していいのかよ!」「それずっと持ち歩いていたのかよ(なんで都合よく落ちてるねん)!」などなど……皆さんも、それぞれが楽しいツッコミどころを心の中にしまい込む(または吐き出す)ことになるでしょう。

重要なのは、このツッコミどころ満載ということが、本作においてはデメリットになっていない、むしろニコニコと笑顔になり好感が持てる、キュートでさえあるということです。それは前述した通り、とことんエンターテインメントに振り切っていて、「楽しんでいってね!」な気概が伝わりまくるおかげでしょう。

確実に言えることは、映画におけるツッコミどころには“許されるタイプ”と“許されないタイプ”があり、間違いなく『サイバー・ミッション』のツッコミどころは前者であるということ。洋画であれば『バトルシップ』や『グレートウォール』や『大脱出』なども「ツッコミどころがあるが許す」「いやむしろツッコミどころこそが愛おしい」なタイプの作品でしたし、日本で熱狂的な支持を得た『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズは良い意味で荒唐無稽なキャラ設定や世界観を含めツッコミどころが愛されていました。

完璧な映画じゃないからこそ、「細かいところはいいから楽しんでいってね!」な気概に溢れているからこそ、気持ちよくツッコむことができる……そんなツッコミどころを愛せる映画として『サイバー・ミッション』はお世辞抜きで理想的な内容なのではないでしょうか。これは、ぜひ『HiGH&LOW THE MOVIE』と同様に“応援上映”を開催してほしい! 観客からの愛のあるツッコミを実際に聞くと、さらに楽しい内容になると断言します!


おまけ:オススメのハッカーが活躍する映画はこれだ!


最後に、『サイバー・ミッション』と同じく、ハッカーが活躍する映画を3本ご紹介しましょう。いずれも荒唐無稽さはありますが、エンターテインメントとして存分に楽しめる内容ですよ。

1:『ソードフィッシュ』






95億ドルという大金を強奪するまでの罠と策略を描いた犯罪映画です。ジョン・トラボルタとヒュー・ジャックマンという豪華共演もさることながら、『マトリックス』のフォロワーと短絡的に言ってしまってはもったいなさすぎるバレットタイム(マシンガン撮影)による大迫力の爆発シーンは圧巻! 衝撃的なオープニングからグイグイ惹きつける魅力がありました。劇中には “ハッカーの能力のテストのために銃を突きつけつけられる”シーンがあり、これは『サイバー・ミッション』でもオマージュされていたのかも?

2:『ピエロがお前を嘲笑う』




警察に出頭した天才ハッカーが、ある事件の経緯と顛末を語るというドイツ映画です。いわゆる“どんでん返し”が売りになっている作品で、そのオチはただ奇をてらっただけでなく、伏線をしっかり回収した、なるほど物語上の必然性も整合性もある、なかなか見事なものになっていました。主人公の1人称視点で語ったことにより、ミステリーとして強固になったとも言えるでしょう。ハリウッドでのリメイクも決定しているようです。

3:『蜘蛛の巣を払う女』





こちらは現在公開中、デヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』の事実上の続編にあたる作品です。主人公の女性はパンクな格好をした特異なキャラクターで、女性を虐げるクズ男を“処刑”するほか、超絶カッコいいバイクアクションを披露!“女性版『007』”と言ってもいいほどの痛快さとエンターテインメント性がありました。雪が積もりに積もる寒々しくも美しい舞台、“姉妹の因縁”というドラマ面にも注目です。

※『蜘蛛の巣を払う女』の紹介記事はこちら↓
□『蜘蛛の巣を払う女』の「5つ」の魅力!前作から変わった特徴はコレだ!

(文:ヒナタカ)

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