映画コラム
『女王陛下のお気に入り』壮絶なレディ・バトル映画!映画ファンも気に入るはず!
『女王陛下のお気に入り』壮絶なレディ・バトル映画!映画ファンも気に入るはず!
(C)2018 Twentieth Century Fox
このところ英国王朝を題材にした映画がブームなのか、日本でも1月にヴィクトリア女王とインドの若者の交流を描いた『ヴィクトリア女王 最期の秘密』が公開され、3月には従姉妹でもあるフランス王妃とイギリス女王の確執を描いた『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』が公開予定となっています。
そして2月15日から公開される『女王陛下のお気に入り』は第75回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(審査員大賞)、女優賞(オリヴア・コールマン)を、第76回ゴールデングローブ賞では、ミュージカル・コメディ部門の主演女優賞(オリヴィア・コールマン)を受賞した話題作ですが、それよりも何よりも……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街361》
これが邦題に偽りなく、女王陛下のお気に入りである女性たちの壮絶バトルを描いた衝撃の宮廷ドラマなのでした!
三大名女優が織りなす
壮大なる確執!
『女王陛下のお気に入り』の舞台18世紀初頭、フランスと戦争状態にあるイングランド。
英国王位にあるアン女王(オリヴィア・コールマン)は気まぐれで虚弱で、ちと頼りなさげです。
実は彼女の幼馴染でもあるレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)が女王を影で動かし、絶大なる権力をふるっていたのでした。
そんなある日、サラの従妹で没落貴族の娘アビゲイル(エマ・ストーン)が職を求めて現れ、召使いとして宮廷内に入ることに。
サラはアビゲイルに目をかけますが、まもなくしてアン女王もアビゲイルを気に入り、何かと近くに置こうとし始めていくことから、次第にサラは疑心暗鬼の念を隠せなくなっていきます。
実は、アビゲイルは再び貴族の地位に返り咲こうという野心を秘めており、いつしかそれが露になっていくにつれ、サラの存在が邪魔になっていき……。
本作は豪華絢爛たる宮廷内に3人の名女優オリヴィア・コールマン×レイチェル・ワイズ×エマ・ストーンを迎え、女ならではのすさまじい確執と駆け引き、そして友情と対立を描いた歴史ドラマです。
一応、ニコラス・ホルトやジョー・アルウィンなどの男優も登場しますが、はっきり申し上げて上記の3人の前では男どもはタジタジにならざるを得ません(また、そういう趣旨の作品でもあるので、彼らのスタンスも決して間違ってはいません)。
要するに男なんて本作の中では刺身のツマみたいなもので、とにもかくにも女がすごい! 怖い! すさまじい!
それが『女王陛下のお気に入り』の本領なのでした。
(C)2018 Twentieth Century Fox
愛と欲望に満ちた女たちの
壮絶なるエゴにひれ伏せよ!
本作はまず無能なアン女王と影の実力者サラの権威、そしてアンとサラの肉体関係も伴った愛情か友情かといった関係性が巧みに描かれていきます。
総じてアンはM、サラがSといったスタンスではありますが、それはそれでバランスが取れているようにも思えます。
そんな二人の間に割って入ってくるのがアビゲイルで、若い彼女がしたたかにアン女王に取り入ろうとしていくことにサラは嫉妬します。
ここで面白く思えるのがキャスティングの妙で、今やベテランの域に達しつつあるレイチェル・ワイズと、『ラ・ラ・ランド』などの愛らしいイメージのエマ・ストーンでは、どうしても前者に貫禄勝ちのイメージを抱きがちですが、ここでは後者がどんどん野心むき出しになっていき、徐々に前者を圧倒していくのです。
(もちろんそれは二人の名優同士の見事な演技プランから導き出されたものでもあります)
そして一見無能な女王を装いつつ、実は一番したたかなのがはアンなのではないか? ということも徐々に見えていきます。
ここでのオリヴィア・コールマンは、サラに対する愛情とコンプレックスを交錯させながら、どこかしら彼女をいじめてみたいというMのS的欲求を具現化しようとしているようにも思えてなりません。
だから彼女はアビゲイルをひいきし始め、サラをやきもきさせていくのです。
やがてそんな3人の大胆かつ繊細なエゴむき出しの関係性は、ある事件によってすさまじい展開を示していきますが、そこはもう見てのお楽しみということで……。
いずれにしましても、男の目線でこの映画をずっと見続けていきますと、「美しいものにはトゲがある」どころではない女のおっかなさに、ただただひれ伏するしかありません。
監督は『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』などで知られるヨルゴス・ランティモスですが、ここではやはり男性として三大名女優に最大限の敬意を表しながら、おぞましくも美しい陰謀劇を繰り広げていく3人のヒロインに身震いしつつ演出しているかのような印象すら受けてしまいます。
いや、もう映画そのものの豪華絢爛たる美麗な画に酔いしれながら、男などとても足元にも及ばない女たちの壮絶なる愛と欲望のバトルに恐れおののきながら、ご覧になっていただけたらと思います!?
(文:増當竜也)
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