映画コラム

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2019年04月05日

『4月の君、スピカ。』の魅力を解説!佐藤大樹の両手壁ドンと“真顔力”に注目!

『4月の君、スピカ。』の魅力を解説!佐藤大樹の両手壁ドンと“真顔力”に注目!



(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会



4月5日より、映画『4月の君、スピカ。』が公開となります。本作は累計発行部数120万部を突破している杉山美和子による少女マンガの実写映画化作品で、(パッと見のビジュアルでもわかるように)いわゆる“胸キュン”映画となっています。

結論から申し上げれば、本作は実力派の若手キャストの魅力がたっぷり、原作マンガからのアレンジも抜群に上手く、恋愛だけに囚われないメッセージ性もあり、何より胸キュンのつるべ打ちが超楽しめる、優秀な作品に仕上がっていました!その魅力を以下にお伝えします!

1:佐藤大樹のイケメン行動がすごい! 
“黄色い声”も代弁してくれていた!


最初に断言してしまいますが、本作の最大の魅力は佐藤大樹さんです(異論は認める)。『HiGH&LOW』シリーズでもおなじみで、胸キュン映画では『ママレード・ボーイ』と『センセイ君主』にも出演していたことも記憶に新しい、佐藤大樹さんが最高だったんですよ! もうマキシマム・オブ・イケメンだったんですよ!



(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会




その役柄を端的に説明すれば……金髪で一見するとチャラい、だけど実は学年一の秀才、素直に言いたいことを言えないところがある一方で、不遜なまでにグイグイ迫ってくるけれど、一途であり時々しおらしくて可愛いという、少女マンガの理想的な男子を全盛りしたかのようなキャラになっています。こうした胸キュン映画を観ていて常々感心するのは、「こんなやつは3次元には存在しねえ!」と(良い意味で)心底思える現実離れしたキャラを実力派の若手俳優が見事に演じきっていることなのですが、今回の佐藤大樹さんと胸キュン映画との相性は抜群という言葉では足りませんでした。マンガからそのまま飛び出して来たっていうか、もう佐藤大樹さんはマンガそのものだよ(褒めています)!

今回の役でさらに素晴らしいのは、その“真顔”の力。劇中でヒロインがとあるセリフを口にすると、彼は真顔になってじっーと正面から見つめてきて、「どうしたの?」な感じになるのです。真顔ということはほぼ表情が変わらないはずなのに、佐藤大樹さんの存在感と卓越した演技のおかげで「この子!ヒロインにときめいちゃってる!可愛いと思っちゃってる!そんなお前の方が可愛いよ!」な感じでキュンキュンできるのです。しかもクライマックスでは(ネタバレになるので具体的に書けませんが)“意外な角度から”の真顔力を全開で見せてくれるのですからたまりません。こうした“静的”なシーンでこそ、佐藤大樹さんの俳優としての実力を思い知らされました。

さらに、少し前から胸キュン映画の定番となっていた“壁ドン”もしっかり繰り出してくれます。しかも今回はなんと“両手壁ドン”!よく考えれば片手で壁ドンしたところで相手は物理的には逃げられますよね。しかし両手でドンをすれば逃げ場が完全に失われてしまうため、さらに「俺のものになりな…!」な感じに被支配欲を満たされることになるのです。その他にも“俺様”キャラの佐藤大樹が全編に渡って一途なイケメン行動の限りを尽くしてくれるので、こんなのファンは劇場で興奮して鼻血を出しかねないよ!(要準備:ティッシュ)

さらにさらに、あの“体育館の朝礼”でのシーンも素晴らしい!詳しくは観て欲しいので詳細は書きませんが、ここでの佐藤大樹さんの行動に対して、劇中の女生徒からの「キャーーーーー!!!」という黄色い声がめっちゃ聞こえてくるのです。映画館で観ていると(周りのお客さんの迷惑にもなりかねないので)声を出すことをためらってしまいますが、ここで黄色い声を出せない観客の気持ちを存分に代弁して叫んでくれる……いやはや、掛け値なしに感動しましたよ!



(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会




2:福原遥の“本気”の演技にも注目! 
その他キャストも最高だ!



佐藤大樹さん以外のキャストも超・魅力的です。ヒロインを演じる福原遥さんで感動したのは“本気”の顔を見せる演技でした。




(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会




初めは頼りない内気な性格に見えるのですが、次第にしっかりと芯のある精神的な強さを感じさせるようになっていき、クライマックスのとあるシーンでは、表情を含めて全身全霊で“迷い”や“悩み”を表現しきっているのです。福原遥さんは早くも5月3日に公開の『映画 賭ケグルイ』でも出演されるとのことで、さらにその活躍を追ってみたくなりました。

佐藤大樹さんと福原遥さんのヒロインを取り合う(?)ことになるのは、ドラマ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』でも注目を集めた鈴木仁さん。やや寡黙で優しくて博識だけど、その過去にあった“後ろめたさ”も存分に感じさせる奥行きのあるキャラにもう大ハマり。佐藤大樹さんとのイチャイチャっぷり(友情)も実に萌えさせてくれました。



(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会




さらに、もう1人のヒロインを演じる井桁弘恵さんもどこかミステリアスでありながら繊細さとか弱さも同居している役にバッチリ。その他、ヒロインにアドバイスをしてくれる購買のお兄さん役の大谷亮平さんが原作のビジュアルに激似だったり、酒井美紀さんが“大人”として接してくれる天文台の管理人として登場すると言うのも嬉しいところですね。

さらに楽しいのは、「何なのあの子!」「私たちの王子に馴れ馴れしいんですけど~!」とヒロインに突っかかってくるという、良い意味で紋切り型の“ヒロインに嫉妬をしてくるイケメンのファンたち”が登場すること。夏目かなさん、南山あずささん、大原優乃さんの3人が実に楽しそうに演じられていて、もう好感しかありませんでした。主役から脇役まで誠実なキャスティングがされており、それが存分に実を結んでいることが嬉しくって仕方がなくなってくるのです。



(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会



3:原作からのアレンジも上手い! 
ロケーションも美しかった!


キャストのことばかりに触れてきましたが、映画化にあたっての原作マンガからの再構成・脱構築も、実に上手く行われています。原作は9巻におよぶ長編で、物語は高校受験に失敗してうっかり超進学校へ入学してしまったということから始まり、高校3年生まで(それ以降も)の時間経過もありました。しかし、今回の映画では高校2年生の転校初日の自己紹介で大失敗してしまったということから始まり、ある区切りとなる展開までを“圧縮”して描くように変更されているのです。

時間の限られている映画という媒体で、この変更は英断でしょう。原作そのままに3年間の物語にしてしまうと当然“空白”となる部分が多くなってしまうでしょうし、おかげで99分というタイトな上映時間の中で胸キュンがつるべ打ちになるサービス精神満点な内容に仕上がっているのですから。それでいて原作の肝となる三角関係(後には四角関係にも発展)の描写がしっかりしていることはもちろん、種々の少女マンガにおける良い意味でのお約束的な“おいしい”要素を外すこともほぼないですし、映画オリジナルの“水泳”の描写や、その他の絶妙にアレンジされた要素も実に有効に機能していました。

また、原作ではヒロインは「“運”が悪い」と自分のことを卑下していたのですが、映画では「“運勢”が悪い」にしたのも上手いところです。本作では“天体観測”というモチーフがかなり重要になっていて、もちろん“星座(の中で輝く星)”も見ています。運勢とは言うまでもなく12星座から占うことが多い(劇中でもヒロインはスマホで星座占いを見ている)ため、この“運”から“運勢”へと微妙に言葉を変えていたことが、より作品の精神性をより汲み取っているとも言えるのです。

さらに感動したのは、“あえて観客に見せていなかった”ことを後で時系列を入れ替える形で提示し、「そうだったのか!」という驚きを与えてくれることでした。これもまた映画ならではのアレンジであり、物語のダイナミズムを作ることに成功していました。

また、実写映画ならではの大きな魅力として風景が美しいということも挙げられます。本作のロケ地は長野県北部の千曲市(ちくまし)で、物語のキーとなるシーンが日本三大車窓にも挙げられている姨捨(おばすて)で撮影されている他、日本の里山風景の代表と言える棚田も見え、千曲川が映るシーンではドローンを使ってダイナミックな画を演出、千曲市の独特の新旧が入り混じったかのような街並みも収まっています。しかも、この舞台は天体観測において“星が綺麗に見える”ことにも説得力も持たせていました。イケメンだけでなく、美しい画の数々にもうっとりできますよ。



(C)2019 杉山美和子・小学館/「4 月の君、スピカ。」製作委員会




4:胸キュンだけで終わらない! 
能動的に選択をしていく成長物語にもなっていた!


少女マンガおよび胸キュン映画では、概ねでヒロインが一方的にイケメンに好かれることになります。それはそれでもちろん良いのですが、下手をしてしまうと“受け身”のままのヒロインが振り回されるばかりになってしまう、“成長しない”物語にもなりかねません。本作のヒロインは序盤に自身の不幸を「運勢が悪いから」と言っており、それもまた対外的に原因を求めて逃げているだけではないか……という、まさに受け身な印象が強くなっていました。

この映画版『4月の君、スピカ。』が素晴らしいのは、そんなヒロインが“自らの意思で選択をしていく”過程にもあります。一方的に好かれたり、ただただグイグイ迫ってくるイケメンになし崩しになってしまうのではなく、自分の意思で能動的に選択および行動していくようになっていくのですから。終盤で購買のお兄さんが告げたとあるアドバイスはその象徴であり、ヒロインが“逃げない”ことを肯定することにも感動がある物語にもなっていくのです。

その物語を言い換えれば、(恋愛という)要素に限定することなく、現実で生きるためのヒントももらえる、種々の要素が絡み合っているということ。出演者の鈴木仁さんは「この映画には恋愛だけでなく、友情や1人1人の成長など、たくさんのものが詰まってます」とコメントをしていましたが、まさにその通り。胸キュンだけに一辺倒にならない、豊かな映画になっていることも賞賛したいのです。

ちなみに、原作ではそれなりに性的な描写もあったのですが、映画ではほぼほぼオミットされており、小さな子供が観ても大丈夫かな?と思っている親御さんにも安心できる内容になっています。何より思春期ならではの恋の悩みや、自分を好きでいてくれる異性2人だけがいる天文部に入部するという夢のシチュエーションは、大人から子供まで親しみやすい、万人向けと言えるものなのではないでしょうか。ぜひ、幅広い世代に向けて、この映画版『4月の君、スピカ。』をオススメします!

(文:ヒナタカ)

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