インタビュー

2019年05月10日

横浜流星「今の自分を壊したいっていう気持ちはすごく分かる」映画『チア男子!!』インタビュー

横浜流星「今の自分を壊したいっていう気持ちはすごく分かる」映画『チア男子!!』インタビュー

直木賞作家・朝井リョウが実在する男子チアリーディングチーム「SHOCKERS」をモデルに書き上げた人気作『チア男子!!』が待望の実写映画化。5月10日(金)より、全国公開となります。


そこで、本作でハルを演じた横浜流星さんに、本作の見どころはもちろん、実際にチアを体験してみての印象などを伺ってきました。



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──まずは役作りで意識されたことを教えてください。

横浜流星(以下、横浜):僕が演じたハルは、誰かが怒ったり笑ったり泣いたりすることを自分のことのように思える優しい男の子です。だから撮影中は日頃から周りを見て、誰かの変化に気づけるようにと思いながらやっていました。

ハルは柔道一家に生まれてずっと柔道をやってきて、でも怪我をキッカケに柔道から離れいる。大学に入って新しいことを始めたいけど、でも柔道もやめられないという葛藤を抱くんです。そんな中でいろんな人から言葉をもらって、チアをやるという覚悟を決めます。そこまでの気持ちは丁寧に繊細に描いていきたいと監督と話していました。だから、特にその部分はすごく大切に作っていきましたね。

──アニメ版でハルを演じている米内佑希さんも本作では友情出演をされています。実際に共演されてみていかがでしたか?

横浜:アニメも全話観ていたのですが、やっぱり声が素敵でした(笑)。

──アニメのハルのイメージを意識されたりはしましたか?

横浜:ハルのイメージが、原作と映画とアニメとで、それぞれ全部印象が違ったんですよね。原作だと少し暗い印象があって、そのまま本読みをしたらちょっと暗くなりすぎだなって思っていて。そこからアニメを見たんですが、アニメは柔らかい雰囲気だったので、そこをすごく参考にさせてもらいました。



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──撮影に入る前に3か月間の練習期間があったとのことですが、実際にチアをやってみていかがでしたか?

横浜:やっぱりすごく難しかったですし、最初にこの作品のモデルになっている早稲田大学のSHOCKERSさんのパフォーマンスを見させていただいたのですが、素敵すぎて3か月で足りるのか?という不安がありました。でも、コーチの杢元良輔さんとSHOCKERSのみなさんによる、愛のある指導のおかげでなんとかやりきることができました。

──SHOCKERSのパフォーマンスを見て、素敵だと感じたポイントはどこでしたか?

横浜:ひとりひとりの笑顔がキラキラ輝いていました。みんなで1つの目標に向かって頑張っている姿が印象に残りましたね。あとは掛け声からも見ている人たちを心から応援しているなというのを感じたので、そこがすごく素敵でした。

実際にチアをやってみて、応援のパワーのすごさに改めて気づくことができたんです。日頃、自分もファンの皆さんから応援していただいていますが、ファンの皆さんへの感謝の気持ちがより強くなりましたね。



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──本作を拝見して、横浜さんの笑顔もすごく素敵だなと感じたのですが、そこはやはり意識されたのでしょうか?

横浜:そうですね、笑顔はすごく大切にしていました。練習をしているときからも、笑顔を忘れないようにと言われていたのですが、やっぱり最初は余裕がなくて笑顔を作るのが大変でした。でも徐々に余裕が出てくると、自然と笑顔が溢れてきたんですよね。できあがった作品を観たときに、自分でもなんてフニャフニャしているんだと思うくらい…(笑)。自分のフニャフニャ加減に笑っちゃいましたね。

──チアをやる上で一番大変だったところはなんですか?

横浜:意外と、大技とかではなくて最初の基礎の部分ですね。僕は空手をやっていたので、筋肉は人並みよりはついていると思うんですけど、チアはまた違った部分の筋肉を使うんです。だからイチから筋肉をつけるというのが結構大変でした。

──チアは難しい大技をくり出すことも見どころのひとつではありますが、実際にパフォーマンス中は観客のみなさんの顔を見渡す余裕というのはあるんでしょうか?

横浜:大技に挑戦しているときは正直周りを見渡す余裕はなかったんですが、ダンスをしているときは、ちゃんと観客の皆さんの顔を見ることができましたね。そこで皆さんが笑顔になってくれているなって分かると、そのお陰で自分たちの気持ちもさらに高まって笑顔になれるので、なんか不思議な感じでした(笑)。

──ラストシーンでは、実際に観客の方々の前でパフォーマンスをされていましたが、撮影はいかがでしたか?

横浜:あのシーンは、ハルたちと一緒で本当に初めて人前でパフォーマンスをしたんです。だから緊張感は全然違いましたね。でもたぶんいい緊張感を持ってできていて、みんながひとつになったって感じることができました。ちょうど撮影自体もクランクアップの日だったので、「今までやってきたものを、後悔しないように全力で出し尽くしたいね」っていう話をみんなでしていたので。カットがかかったらすぐモニターの前に行って、映像を確認して、誰かひとりでも微妙だなと感じたら「もう1回やらせてください」って監督に言っていました。だから妥協せずにみんなで作り上げることができました。



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──チアは特にチーム間の信頼関係が必要になってくると思いますが、今回、主演としてチームを引っ張っていく上で意識されたことがあれば教えてください。

横浜:一緒に主演を務めた中尾暢樹は、カズという役柄同様、明るく皆を照らしてくれて引っ張ってくれる存在だったので、そういう部分は彼に任せていました。だから俺は皆のことを見て、支えるような立場でいようかなと思っていて。元々グイグイ引っ張っていくタイプの人間でもないですし(笑)。

──カズとは幼馴染で親友という関係性ですが、役作りの上ではどういうやりとりをされましたか?

横浜:いや、キャストとは演技についてまったく話はしなかったです。最初の本読みのときに、監督を交えてカズとハルの関係性を大切にしたいという話はしたんですけど、2人で話すってことはなかったです。彼もいろいろと考えて現場に持ってきていると思うので、彼のお芝居を素直に受け止めて、彼がまた返しやすい形で投げ返すというのを意識してやっていました。

──改めて、チームメンバーの皆さんについて、おひとりずつ思い出や印象をお伺いできますでしょうか。

横浜:中尾暢樹は本当に引っ張ってくれる人です。年は一緒なんですが、スーパー戦隊の後輩なんですよ。だから最初の練習のときは「流星くん」って呼んでくれていたんですが、突然2日目から「流星」呼びになって(笑)。人との距離の詰め方がすごく上手いので見習いたくなりましたね。自分はそんなにグイグイいけないので。

──2日目から呼び方を変えるというのはなかなかすごいですね(笑)。

横浜:最初は「流星くーん」みたいな感じで、人懐っこい人だなぁと思っていたのに、次の日から「流星」ですからね。ビックリしますよね(笑)。でも、いいやつです。

──では瀬戸利樹さんは?

横浜:瀬戸利樹は、こんな整っている顔をしているのに抜けています(笑)。(瀬戸さん演じる)翔もイケメンでなんでもできるのに私服がダサいという役柄なので、そういうひとつ抜けているところがなんか似ていて、役とハマっているなと思いました。現場を和ませてくれる、愛されキャラだと思います。

(岩谷)翔吾とは、元々、高校の同級生なんですよ。でも、役者とアーティストで活動しているフィールドが違っていたので、絶対共演することはないだろうなと思っていたんですが、今回、この作品で共演できて嬉しかったですし、ちょっと恥ずかしい気持ちもありました。高校生の頃の自分を知られているので(笑)。彼もムードメーカーなタイプなので、現場を明るくして引っ張ってくれていましたね。



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──菅原健さんはいかがでしょうか?

横浜:彼は練習にあとから合流したんですけど、僕たちが一生懸命練習していた中にあとからポンッと入ってきて、すぐバク転ができていたので、ちょっと焦りました(笑)。でも、彼がそのタイミングで入ってきてくれたからこそ、より気持ちを引き締めることもできましたね。一見、強面っぽい感じだけど結構いじられキャラです(笑)。

──小平大智さんはどんな方でしたか?

横浜:この人はもう見た感じのままです(笑)。かわいいんですよね。人一倍、練習もしていたし、僕たちもそれもちゃんと見ていたので、努力家だなっていうのが伝わってきましたね。ただ、ご飯をいっぱい食べちゃうんですよ(笑)。ちょっと自分に甘い一面もあるんですけど、すごく頑張り屋さんです。

──最後に、浅香航大さんはいかがでしたか?

横浜:浅香さんは僕らよりも少し年上なので、一歩引いて僕らを見守ってくれていました。それがすごく心強かったですね。パッと見、冷静に見える人なんですけど、内に秘めているものはすごく熱い人で、良い作品にしたいって思っているのがすごく伝わってきました。

──本作では、ハルをはじめ、BREAKERSのメンバーそれぞれが壁にぶち当たっていきますが、横浜さんご自身は目の前に壁が立ちはだかったとき、どのようにしてそれを越えていきますか?

横浜:とりあえず悩みます。悩んで悩んで、どうしたら乗り越えられるかをずーっと考えて、失敗してもいいからそれをちゃんと行動に移すっていうのを意識してやっています。

10代の頃は完璧を求めすぎて、失敗することを恐れていたりもしたんですけど、それじゃ何も始まらないんですよね。20歳を過ぎてから、やっと失敗してもいいんだって思えるようになりました。やっぱり失敗するのって怖いですし、極力、失敗したくないじゃないですか、かっこ悪いし(笑)。でも、それをちゃんと受け止めて、受け入れて、行動に移すのが壁を越える近道なのかなって思っています。



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──本作はまさに青春というストーリーですが、横浜さんが演じながら思い出したご自分の青春時代のエピソードはありますか?

横浜:逆に青春ってこんな感じなんだって気づくことのほうが多かったです。学生時代はずっと空手をやっていて、空手は個人競技なので孤独だったので(笑)。だから今回、団体競技で、仲間と一緒に何かに熱中するという素晴らしさに気づくことができましたね。やっぱり仲間がいると、自分ひとりではできない部分を誰かが補ってくれたりしますし、仲間がいることで心強く感じることもありました。多分、この仕事をやっていなかったらその素晴らしさに気づくことができなかったと思います。だから今回、この作品に出会って本当によかったです。

──本作に出演されて、役者として人間として成長したなと感じる部分はありますか?

横浜:視野を広げることができたかなと思っています。ハルの役柄的に、役作りとして周りを見るというのを心がけていて、誰かの些細な変化に気づくっていうのは大事にしていたので。僕は結構、作品に入ってしまうとのめり込んでしまって一点しか見れなくなってしまうのですが、今回はそうはならずに、周りを見ることができたので、そこが成長できた部分かなと思います。

──BREAKERSというチーム名は、「今までの自分を壊したい」という想いが込められてつけられたものですが、横浜さん自身はそういう感情って分かりますか?

横浜:分かります。全然ありますね。



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──それはどういうときに感じますか?

横浜:この仕事をしていると、この人はこういう人っぽいよねってイメージがつきやすいじゃないですか。そういう世間からの見え方っていうのは、嬉しいことでもあるんですけど。いろんな作品でいろんな役に挑戦していく中で、ひとつのイメージがずっと付いてしまうとあんまりよくないなと、僕は思っているので。だからこそ、イメージの脱却は常にしていきたいと思っていますね。なので、今の自分を壊したいっていう気持ちはすごく分かります。

──最後に、改めて本作の見どころを教えてください。

横浜:見どころはやっぱり、約3か月間、本気で挑んだチアリーディングです。僕たちのパフォーマンスが誰かの心に届いて、何かを感じてもらえたらうれしいです。登場人物が7人もいるので、きっと誰かしらの気持ちに共感できると思いますし、誰に共感するかによってまた見え方や楽しみ方も変わってくると思うので、そういう部分も楽しんでいただけたらと。今、何かに挑戦している方や、これから何かに挑戦しようと思っている方の背中を押すことができる作品になっていればいいなと思います。

(撮影:山口真由子、取材・文:榎本麻紀恵)

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