人生のどん底だった時代を思い出した『ドント・ウォーリー』
どうも、橋本淳です。
33回目もよろしくお願い致します。
どうしようもなく辛いときってありますよね。もう今が、どん底だという時。それが過去であった場合、その当時はただ苦しさに踠いていて実際そうだとは感じる余裕すらもないとき。
全くそんな経験ないよっ!って方ももちろんいるかと思います、そんな方にはそのままで居てほしいものです。出来ることなら経験しないほうがいいですものね。
思い返すと私にもありました、嗚呼人生のどん底だなという時期。
20代に入ったばかりの時。まだ若いくせに人生のどん底だなんて大仰だなと思いますが、その時は最高に苦しかった。他人から見たら大したことはないでしょうし、人によって思い悩みの程度は異なりますが、自分にとってはとても大きいことでした。
誰も信じることなんて出来ず、優しい言葉を掛けてくれてた人のことも疑うほどに周囲に不信になって、腐心していた。でも、そんな底から、救い出してくれたキッカケとなったは、やはり人の言葉であり思いやりであり優しさでありましたが、最終的には自分が自分を赦してあげることでした。自分を赦すことで、視野や視点が変わり開けていった。
今回この映画を観て、そんなことを思い出してボンヤリ考えてしまいました。今観て割と深く回顧したということは、当時の橋本が観たらどうなっていたことやら、、でも確実に救われたのだろうなとは思います。
今まさに、辛いところから抜け出せずいる方にはすぐ観てほしい映画です。
心に突き刺さる、実話ベースのこちらの作品をご紹介。
『ドント・ウォーリー』
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ガス・ヴァン・サント監督作品。
オレゴン州ポートランドの風刺漫画家ジョン・キャラハンの実話を元にした映画。彼の半生に感銘を受けたロビン・ウィリアムズが、1998年にキャラハンの自伝「Don't Worry,He Won't Get Far on Foot」の映画化権を取得。そしてウィリアムズは、ガス・ヴァン・サントに監督をしないかと持ちかける。キャラハン本人の手を借りながら、脚本を練るもなかなか上手くいかず、ロビンも忙しく、スタジオもやりたがらずといった状況で、企画は頓挫してしまう。
そんな中、2010年にジョン・キャラハンが、2014年にロビン・ウィリアムズが他界してしまった。まだ残っていた企画をガスが引き継ぎ、20年を経て2018年にようやく、この映画は完成した。ロビンからガスに引き継がれた本作は、サンダンス国際映画祭、ベルリン国際映画祭に公式出品され話題になる。
〈ネタバレ注意〉
若い頃から酒浸りの生活をしていたジョン・キャラハン(ホアキン・フェニックス)は、珍しく二日酔いではない状態で目を覚ます。しかし、すぐに酒の販売している店に駆け込み、さりげなさを装いながら、酒を手にし車の陰に隠れながら、また飲酒をしてしまう。
その夜、パーティーに参加したジョンは、酒飲みでおしゃべりのデクスター(ジャック・ブラック)と知り合う。2人はすぐに打ち解け、何軒ものパーティーや店をはしごして2人共に泥酔状態に。かなり泥酔しながらも運転をするデクスター、その車にジョンは乗ってしまう。そして、、フラフラの車は、猛スピードで電柱に激突する。
気づいた時には、ジョンは胸から下が麻痺した状態で、病院のベッドに横たわっていた。命は失わずに済んだものの、一生続く麻痺へのショックと絶望に苦しむ。回転ベッドに横たわった絶望状態のジョンを救ってくれたのは、セラピストの女性、アヌー(ルーニー・マーラ)だった。定期的にやってくる彼女と話す内に、ジョンは少しづつ笑顔と持ち前のユーモアを取り戻していく。やがて、電動の車イスを与えられ、街を駆け抜けたりと自由を満喫するがそれも長くは続かなかった。
退院後、アパートに移ったジョンは、食事や排泄、風呂までと介護人なしではいられない生活に耐えられなくなっていく。そして、また酒に溺れ、周囲の人間に当たり散らす自暴自棄な状態になってしまう。
しかし、とあることからジョンは禁酒を決意し、裕福なスポンサーが主催している禁酒会に参加をする。そこは皮肉まじりのユーモアで場を和ませていた穏やかな男ドニー(ジョナ・ヒル)が仕切っている禁酒会。ジョンは最初、衝突してしまうが、そこに集まっている人達も辛いことを知り、徐々にこの集まりを気に入っていく。
ジョンは、ドニーの導きもあり禁酒のステップをゆっくりと確実にあがっていく。やがて、ジョンは過激だがユーモアのある風刺漫画の才能を開花させていき、、、
と長く書いてしまいましたが、大体のあらすじです。まだ公開1週目でもあるので、大事なところは触れない程度に。
本当に素敵な映画でした。
自伝的な映画によくある、感動の押し売り的なものもなく、皮肉たっぷりのユーモアと穏やかで小気味よいテンポで進んでいく。自伝からの創作もありながらも、しっかりとジョン・キャラハンというパーソナルな部分が見えてくるのは、ガス・ヴァン・サントの手腕でしょうね。
そしてなにより、ホアキン・フェニックスの芝居が素晴らしい。決してモノマネではなく、その人物として生きていました。
撮影の数週間前には、すでに身も心もキャラハンになっていたと監督に言わしめるほどに、リサーチを重ね役作りに没頭していたみたいで、その繊細に作る丁寧さに舌を巻きます。
そしてドニーを演じる、ジョナ・ヒルがこの作品をさらに高みに持ち上げています。コメディ映画に多く出ていますが、近年では『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『マネー・ボール』などに出演している姿を観て、ガス監督がキャスティング。
その予想が見事にハマり、ユーモアと穏やかな雰囲気を醸し出す魅力的なドニーがそこに存在していました。
大きな事件おこすことになってしまう、デクスター役にはジャック・ブラック。パーティシーンは言わずもがなですが、ジョンに再会をするシーンが印象深い。(ちょっとネタバレなので読むのは控えたほうがいいかもです)
そのシーン自体は、初め台本にはなかったらしく、さらにはそのシーンの撮影時には、音楽で処理するか、声が入るのかはまだ決まっていなかったようです。台詞自体も、2人のアドリブで、完成品でその言葉が実際使われているのを観たジャックは驚き大変喜んだと語っています。
許しにくるジョンとずっと罪の意識を抱いたまま生きてきたデクスター、その2人のやり取りに、僕が救われました。
印象深いセリフも多いです。
観ていて、これ絶対宣伝のキャッチコピーで使われているだろうなと思いながらも、響いた台詞を。(実際鑑賞後に調べたらやはり使われていました)
「弱いほど、強い人間になれるんだ」
是非多くの方に観ていただきたい作品です。
それでは今回もおこがましくも紹介させていただきました。
(文:橋本淳)
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