『空母いぶき』超ド級の日本映画となった「5つ」の理由!



4:堂々とした大作日本映画ならではの“ルック”も秀逸!
セットを完全に使いこなすための工夫もあった!


作劇や役者の演技のことばかりに触れてきましたが、映画作品において最も肝心とも言える“ルック”にも優れていることにも言及しなければならないでしょう。

その理由の1つは、セットを完全に使いこなすための様々な工夫がされていることでしょう。撮影の効率を考えてセットは実際の護衛艦よりもほんのわずかに広めに作られ、シーンごとにセットの壁を外したり移動しながら撮っていたのだとか。そのセットは2つのスタジオにそれぞれに組み、交互に使い分けてもいたそうです。言うまでもないことですがそのセットそのものにも手が込んでおり、送電版、モニター、時計、レーダーなどのディテールを細かく再現、非常灯の明るさまで綿密に計算されていました。

その実際の護衛艦よりもほんのわずかに広めに作られたセットであっても、撮影は“隙間がほとんどない”という状況だったようで、撮影監督の柴主高秀はその中でも重いカメラを担ぎながら縦横に移動し、カットごとのセッティングを淀みなく行ったのだとか。俳優の熱演を様々なアングルで魅せていくという躍動感に満ち満ちていたのも、苦労の連続だったことが想像に難くない撮影のおかげでしょう。

また、“空母いぶき”は最新システムを備えた護衛艦という設定であるため、CIC(戦闘指揮所)にはタッチパネル型の大型ディスプレイが鎮座し、それ取り囲むように海上のレーダーを映し出すモニターがズラリと並んでいたりもします。リアルとフィクションを織り交ぜた“近未来”な(閉塞感もある)このビジュアルも、映画全体を貫く緊張感とエンターテインメント性に繋がっていました。

その他、スペクタクルシーンのCGや、スケール感のある終盤の画にも全く安っぽさはなく、堂々とした“大作日本映画”としてのルックを常に保ち続けます。それは、予算や体制ではハリウッド大作には到底かなわない状況であっても、持ちうる技術と知恵を駆使したスタッフたちの尽力の賜物でしょう。


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©かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ

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