「リッチな体験だった」|『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』監督インタビュー
「リッチな体験だった」|『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』監督インタビュー
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ある日、遺伝子上533人の子どもがいることが発覚した男の人生を描いたハートウォーミングストーリー『人生、ブラボー!』が世界で評価されたケン・スコット監督の最新作が公開されます。タイトルは『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』。その名の通りクローゼットに閉じ込められてしまったインド人青年が、思いがけず世界を巡っていく御伽噺のような物語。
ベストセラーとなったフランスの小説「IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅」を映画化した本作について、実際に主人公アジャのように世界を巡り撮影を行ったケン・スコット監督に話を伺いました。
──原作はフランスのベスト・セラー小説ですが、読んだときの感想を教えてください。
「原作には様々なクオリティーがあると思ったんだ。心にしんみり来るお話で、それでいて可笑しくて、非常に不可解で、それなのにどことなく哲学的。楽しい話でありながら根底には非常に重要なテーマが潜んでいると感じたんだ。映画のテーマにふさわしい内容だと思った。エンターテイニングであることは重要だし、同時に心動かされるドラマもある。だからプロデューサーから声がかかったとき、原作を説明してもらって、ダヌーシュを筆頭にキャストの顔ぶれもよくて・・。凄くやりたいと回答したんだ」
──御伽噺のような要素もあり、その点で子供たちが容易に理解できるという点でも魅力的ですね。
「そう思う。特に映画の構成が御伽噺風だと思う。ダヌーシュの演じるアジャが潜り抜ける体験を通して、ある種の教訓が語られていると思うんだ。御伽話のような形をとることで、非常に能率よく言いたい事が表現されていると思った。世界中いろんな国を旅するという展開によって、重要なテーマに次々と取り組むあたりが・・」
──主人公が過去を振り返り、若い世代に口述するという形で映画は進行しますが、それは原作の形なのですか。それともあなたが適用した形式ですか。
「原作はそうでなくて、僕が適応したスタイルなんだ。映画のために。アジャが語ることで、次々に重要な箇所だけをかいつまんでいく事が出来たから。」
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──本作を制作するにあたって参考になった映画や本はありますか。
「例えばピーター・セラーズが作った映画で『チャンス』とか。スピルバーグの冒険ものとかも参考にした。エンターテイニングであると同時に根底に込められた哲学的なテーマにも触れることが重要だと感じたよ」
──ダヌーシュとの仕事はいかがでしたか。彼はインドでは多くの映画に出演していますが、彼の過去作を観ましたか。
「全部は観られなかったが(笑)、彼に主演を演じてほしいと感じたのは勿論過去作を見たからだよ。彼はインドの大スターだからね。大きな才能の持ち主だよ。オーラがたっているんだ。演技も非常にうまいし、特に彼の演技の魅力と言えば見ている人がキャラクターに共感できるように演じるところだよ。彼がスクリーンに登場するや否や、誰もがキャラクターについてもっと知りたいと欲するんだ。彼にはそんなスターの資質が備わっている。それはこの映画の物語を語るうえでとても重要なものだよ。観客は彼の身にこれから何が起こるんだろうと興味をそそられるからね」
──映画の中で人の涙を誘うことより、笑ってもらうというのは難しいことですが、どうやって本作の笑いを生み出したのですか。そのコツも教えてください。
「確かにコメディーは難しい。映画の中で人を笑わせるのは難しい。笑いを生み出すコツはコラボレーションだよ。脚本において。原作にも笑いはあったから、ただそれをいかにスクリーンに上手く移行するかが鍵たった。例えばアジャがトラックの中で難民と出会うようなシーンはドラマチックでシリアスでもあるから、そこから上手く笑いを引き出すために気を配った。笑いがテンションを和らげる効果があるというのかな。感情を掻き立てると言うか。そうるすことでフィール・グッド・ムービーになると思うんだ。シリアスさを笑いへと自然に導くというのかな、そんな方法が僕は好きなんだ」
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──原作者のロマン・プエロトラスさんにはお会いになりましたか。
「実のところこの映画の制作に深く関わったんだ。脚本の執筆にも関わったし、撮影に参加してくれて、そんなこともあってキャストとして出演もしてもらったんだ。ベレニス・ベジョのキャラクターの元彼でイタリア人ではない方を演じているんだ。彼がロマンだよ。彼に敬意を表す意味もあり出演してもらった。彼は映画の脚色にとても満足してくれている。この原作はフランスをはじめ世界中で大ベストセラーになったから、映画も同様に成功することを祈っているよ。彼とは最初から気が合って意気投合した。彼と一緒に仕事できてとても楽しかったよ」
──インテリアショップのシーンについて教えて下さい。
「セットを使っての撮影は挑戦だったと同時に楽しくもあった。とてもインターナショナルな映画だよ。インテリアショップでの撮影もそんな世界感覚の一部なんだ」
──インテリアショップで女性に一目惚れするシーンは原作にもあるのですか。
「それも映画のオリジナルだよ。原作にあるインテリアショップのシーンを映画風に脚色したかったんだ。それで女性と出会うというのを提案したんだ」
──さまざまな国での撮影には苦労しましたか。それとも楽しかったですか。
「それはいろんな所に旅をした。明らかに多くの国での撮影を準備するのは大変だった。同時に多くの国で撮影したのがこの映画の強みでもあるから。映画の制作自体が旅だったんだ。いろんな国へ行って、そこから思い切り影響を吸収しようとした。撮影の方法も進化していった。インドで撮影したシーンは色で溢れている。フランスやイギリスの部分では色彩がすこし消えてくる」
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──映画に出てくる旅の順番で撮影できたのですか。
「残念ながらそれはできなかった。不可能だよ。イギリスのシーンでは、イギリスのコメディーに影響をうけたダンスを入れた。イタリアでは、イタリア映画から影響をうけたシーンをいれた。ローマの部分や、音楽に関しても。だから実際に僕らが旅をしながら撮影したというのは、とてもこの映画にとって重要なことだったんだ。また異なる国で異なるスタッフと様々な方法で映画が作れたのも良い体験だった。ダヌーシュはほとんどのシーンに登場するから、行く先々の国で、彼を含めスタッフとも話しあいながら撮影していったんだ。その点でコラボレーションの要素が強いんだ。リッチな体験だったよ。いろんな国での映画制作の方法を学んだ。映画監督としても人間としてもね」
(取材・文:高野裕子)
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