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映画『新聞記者』が真摯に訴える「この国の民主主義は形だけでいい」のか?

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©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ  



かつて日本映画界ではメジャーもマイナーも問わず、社会の闇を告発する勇気ある作品が定期的に、しかもエンタテインメントとして見事に屹立させながら作られていました。

しかし、いつからか商業主義的なヒット優先企画ばかりがまかり通るようになり、逆に社会派的要素を抱く作品の企画は通りづらくなってきています。

一方では政府によるマスコミへの規制や圧力などが徐々に、確実に浸透するようになったとする声も多々聞こえるようになって久しいものがあり、果たしてこのままでいいのかといった危惧感も大いに芽生え始めてきています。

そんな中、久しぶりに現代社会を告発する勇気あるエンタテインメント映画が日本から放たれました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街389》

『新聞記者』が訴える現代社会の闇、それは決して他人事ではない自分たちひとりひとりの問題でもあります。

新聞記者とエリート官僚
それぞれが追求する権力の闇



映画『新聞記者』は東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案としたポリティカル・サスペンス作品です。

日本人の父と韓国人の母のもと、アメリカで育ち、今は日本の東都新聞社の記者として働いている吉岡(シム・ウンギョン)に、ある日大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで送られてきました。

一方、内閣情報調査室の若きエリート官僚・杉原(松坂桃李)は、現政権に不都合なニュースの情報操作に従事ることでの理想と現実のギャップに戸惑いつつ、プライベートでは愛する妻(本田翼)の出産を間近に控えての「家族」の幸福を保たねばならないというジレンマを抱えています。

そんなある日、杉原は尊敬する上司・神崎(高橋和也)と再会して一献傾けますが、その数日後に神崎は自殺してしまいました。

さまざまな困難の中で大学新設計画の裏に潜む闇を追求しようともがき苦しむ吉岡と、神崎の死から真実へと辿り着いてしまう杉原は、やがて必然的に出逢い、それぞれの決断を迫られていくのですが……。

本作は、権力側が常に抱き持つ闇にマスコミはいかに対峙していくべきかを示唆しつつ、同時に闇に関わってしまった側=エリート官僚の苦悩を通して、果たして自分だったらどのような行動をとるのかを観客一人一人に問いかけ、ひいてはこのような事態を引き起こし続ける権力そのものを鋭く告発していきます。

とはいえ、決して堅苦しい姿勢ではなく、あくまでもエンタテインメントの形をとりながら展開されていくので、老若男女問わず楽しめる(そして考えさせられる)内容になっています。

アメリカ映画界ではこの手のものは昔も今も定期的に作られ、そのときそのときの政権へ厳しいカウンターパンチを繰り出し続けていますが、今の日本映画界で同じことをやれたという意味でも、これは画期的といってもいいでしょう。

少なくとも「この国の民主主義は形だけでいいんだ」という衝撃の台詞を言わせたことだけでも、本作の存在意義は大いにあるかと思われます。



©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ  



この映画はフィクションなのか?
そうでないのか?


韓国映画界の若き演技派シム・ウンギョンが画面の向こう側から観客に訴えかけるような真摯な眼差し、かたや今もっともノリに乗る日本映画界若手ホープ松坂桃李の繊細かつ他人事に思えないほど身近なリアル感を醸し出す演技に釘付けになること必至。

監督の藤井道人はこのところ『青の帰り道』(18)『デイアンドナイト』(19)と快進撃が続いていますが、その勢いに乗っての本作は、彼にとって大きなターニングポイントになるような気がします。

映画にメッセージは必要か否か、ただ面白ければそれだけでいいじゃないかという声もある一方、面白さを利用して訴えたいことを訴えていけるのも映画の大きな魅力です。

本作はサスペンスフルな面白さの中から、今の社会はこれでいいのか? と観客に真摯に問いかけていきます。

そもそも、この映画はフィクションなのかどうか、それも見る人に委ねられています。

そしてラスト、松坂桃李の口元に大いに注目してください。

彼が何を言うのか、それもまた見る人ぞれぞれによって聞こえ方が違ってくるはずでしょう。

いずれにしても「よくぞやってくれました!」

これこそ本作における今の偽らざる心情であり、この作品に関わった全ての人に拍手を送りたいと思います。

参議院選挙もまもなくですが、それに関してもこの映画は何某かの啓蒙を与えてくれることでしょう。

(文:増當竜也)
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