2018年マンガの実写映画化作品ベスト10!歴史に残る名作が続々誕生!
2018年もそろそろ終わり。映画ファンが年間ベストを「どうしよう…どれが一番とか上だとか、とてもじゃないけど決められない!」と喜びつつも悩む時期でもありますね。ここでは、2018年に公開された“マンガの実写映画化作品”の中から、筆者が独断と偏見で選んだベスト10を紹介します。先にはっきり書いておきますが、これまでの「マンガの実写映画化作品は難しい」という先入観を覆す、その魅力を挙げればキリがないほどの、歴史に残る名作が続々と誕生していましたよ!
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10位:『覚悟はいいか、そこの女子。』
©椎葉ナナ/集英社 ©2018映画「覚悟はいいかそこの女子。」製作委員会
幼い頃からチヤホヤされていたイケメンなのに、恋愛対象にはならない“観賞用男子”を主人公にした中高生向けの恋愛映画です。監督はなんと『片腕マシンガール』や『電人ザボーガー』や『デッド寿司』などの井口昇!「血がブシャブシャと出まくるスプラッター低予算B級アクション映画を得意とする監督が、まさかの胸キュン映画を手がけるって大丈夫か?」と失礼ながら思ってしまいましたが……いやはや実際に観てみると、脚本や演出を含め見事な出来栄えで驚きました。別に血も出ません(当たり前)。
井口監督の作家性の1つは、過剰なまでに己の道を突き進むような“極端さ”にもあります。この『覚悟はいいか、そこの女子。』の主人公は「あの手この手で意中の少女に気に入られようと頑張る」という点で突き抜けており、そうしたギャグおよびアツさが井口監督との相性が抜群だったのです。ドラマ版『監獄学園』でも井口監督とタッグを組んでいた中川大志が、これまた猪突猛進かつ優しい主人公にぴったりでした。ボンクラな男友だちのノリも『監獄学園』を彷彿とさせますね。その他、クールなヒロイン役にハマりまくりの唐田えりか、荒川良々の借金取り、小池徹平の優しい美術教師などのキャスティングも見事。大人が観ても十二分におもしろい作品に仕上がっていました。
ちなみに井口監督は、2019年秋公開予定の『惡の華』でもメガホンを取ります。こちらの原作は思春期特有のドロドロした感情を「これでもか!」とねちっこく描いた作品であり、映画版『先生!、、、好きになってもいいですか?』や『さよならの朝に約束の花をかざろう』などの岡田麿里による脚本とこれまた相性が良いだろうと大期待しています。伊藤健太郎が主演を務める他、『ういらぶ。』も公開中の玉城ティナ、数百人以上のオーディションを経て大抜擢されたという15歳の秋田汐梨がキャスティングされています。
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9位:『いぬやしき』
人知を超えた力を得てしまった高校生とおじいさん(実際の年齢は50代)の戦いを描いたSFアクションです。新宿の上空を駆け巡るシーンのVFXに超気合が入っているのはもちろん、映画オリジナル部分も含めた脚本も素晴らしい出来! 2人の主人公が「食べようとしていたもの(人間ではなくなっているので実際には食べられない)」や「誰を殺そうとor誰を助けようとしていたか」や「何を信じ、何のために行動するのか」など、それぞれの行動の“対比”に注目すると、さらなる感動があるでしょう。高校生が初めての殺人を犯してしまう前の、原作にはない“ある行動”も(原作ファンからは賛否があるかもしれませんが)心理描写として見事でした。
キャスティングもこれ以上は望めないというほどで、家族に邪険にされようとも“無関係の人を助ける”ヒーローとして頑張る木梨憲武演じるおじいさんに随所で泣かされます。佐藤健が演じる高校生は「29歳で高校生役はさすがに…」と思ってしまいましたが、実際に観ると「ダークサイドに堕ちた高校生」を完璧に演じていて怖くなるほど!終盤の厭世的で皮肉に満ちた彼のセリフは名言の域です。その他、本郷奏多や二階堂ふみも個性の強いキャラにバッチリ!
佐藤信介監督はビジュアル的にも予算的にも「絶対に難しい!」と思われる実写映画化作品を続々と手がけており、『アイアムアヒーロー』という後世に残る傑作ゾンビ映画も世に送り出しています。日本映画としては最大規模の予算をかけたという、2019年4月19日公開予定の『キングダム』にも大期待していますよ。
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8位:『愛しのアイリーン』
Ⓒ 2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ
42歳になっても恋愛を知らないパチンコ屋勤めの男が、フィリピンまで行って嫁を見つけて連れて帰ってくるというあらすじで、良い意味で地獄のようなラブストーリーが展開していきます。最大の特徴は「誰1人として正しくはない」ということでしょうか。行動や言動のどこかに客観的に見れば間違っている偏見や差別が垣間見え、一方でそれらの行動原理のほとんどが「誰かに愛されたい」「誰かを愛したい」という切実なものでもあるのです。R15+指定も大納得、バイオレンスや性欲や愛情などの要素がごちゃ混ぜになっているかのような、頭がクラクラしてしまうほどの衝撃がありました。
吉田恵輔監督は『銀の匙』や『ヒメアノ〜ル』というマンガの実写映画化作品をすでに手がけており、今回の『愛しのアイリーン』でも原作のエッセンスを大切にしつつ、“登場人物のイタさを「もうこれ以上見せないでくれ!」と願ってしまうほどに描き切る”といった監督自身の作家性も見事に作品に生かしていました。予算や作品規模はミニマムであっても、「これを良く実写映画化した!」と、誰もが感心できるのではないでしょうか。主演の安田顕はもちろん、フィリピンでは実績のある女優でもあるナッツ・シトイ演じるヒロイン、木野花演じる映画史上最高のインパクトを届ける母親(断言)も必見です。
7位:『響 -HIBIKI-』
Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館
15歳の天才小説家の躍進を描いたドラマと思いきや(そうなんだけど)、やがて“才能”どころか“暴力”についても寓話的に物語る内容になるとは! 恋愛などの余計な描写はほとんどなく、文芸の世界における価値観を多用の視点で描く作劇に感動しました。原作マンガから、とくに極端な部分がとくにピックアップされている印象もありますが、個人的には限られた上映時間で“焦点が絞れている”物語を描いたことを賞賛したいです。
そして、変人という言葉では足りないほどにエキセントリックな主人公を演じた欅坂46の平手友梨奈のハマりっぷりは半端なものではありません。映画を観終わった後は「本当にこういう人なのかも…」と失礼すぎる邪推をしてしまうほどでした。親の七光りに悩んでしまう女の子を演じたアヤカ・ウィルソンも確かな存在感で、平手友梨奈にある意味では“百合”にも近い愛情入り混じったライバル心を持つ様には「尊い…!」となりました。その他、不遜かつビビリな若手作家を演じた柳楽優弥、ずっと芽が出ないまま中年になってしまったベテラン作家の小栗旬など、豪華俳優陣が新たな魅力を見せてくれています。
なお、月川翔監督は本作と『となりの怪物くん』と『センセイ君主』で、2018年だけでも3本もマンガの実写映画化作品を手掛けるという大活躍でした。『センセイ君主』は浜辺美波の良い意味で常軌を逸したホラー演技と、アラサー世代直撃のギャグにゲラゲラ笑わせてもらったので大好きです。小説を原作とした月川翔監督最新作『君は月夜に光り輝く』(2019年3月15日公開予定)にも期待しています。
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6位:『累-かさね-』
(C)2018映画「累-かさね-」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社
“キスをすると顔が入れ替わる口紅”に翻弄されてしまう、2人の女優が織り成す愛憎劇です。正直に言って、キャスティングや予告編の時点では「いやいや…芳根京子が醜い顔という設定は説得力なさすぎでは…いくら特殊メイクで大きな傷を描いたとしてもそれはないだろ…」と思ってしまいました。しかしながら、本編を観てみるとそんな先入観を持っていたことが心から申し訳なくなるほどに芳根京子と(もう1人の主人公を演じた)土屋太鳳は、その演技だけで“心が醜い女性”はもちろんのこと、『フェイス・オフ』と同様に“顔が入れ替わった時の変化”をも見事に表現していました!
また、世間でよく言われていること以上に、本編を観ると芳根京子と土屋太鳳は容姿がとても似ています。片方が絶世の美女、片方が(傷がなくても)醜い顔であった原作マンガとは最も異なるポイントですが、映画で“顔そのものが似ている”ことは、一種のパラノイア的な恐ろしさや、心と体を支配されてしまう危機感がむしろ際立っているとも言えます。佐藤祐市監督は『キサラギ』(原作がそもそも演劇)や『脳内ポイズンベリー』などで良くも悪くも“演劇っぽい演出”をすることが多いのですが、この『累 かさね』はまさに演劇そのものが主題であるため、まさに監督らしい演出こそが見事にハマっているのです。
脚本担当の黒岩勉は『GANTZ:O』でも「原作を読んだ人と知らない人とで違った感動が得られる」見事な物語を構築しており、本作でも“過去にあった出来事を提示するタイミング”と“クライマックスの対比構造”には鳥肌総立ちになるほどの感動がありました。主人公2人の心理状態に何重のも深読みができ、14巻にも及ぶ原作からの脱構築に全く無駄がありません。劇中の「ニセモノが本物を超える」というセリフを踏まえると、ラストがさらに印象深いものになるでしょう。なお、黒岩勉は前述した『キングダム』(2019年4月19日公開予定)では、佐藤信介監督と原作者の原泰久と共同で脚本を手がけています。
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5位:『ギャングース』
©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社
未成年犯罪者への実際の取材を元に、裏社会の実態をフィクションとして描いた作品です。特筆すべきは、圧倒的なエンターテインメント性の高さと、監督との相性の良さでしょう。社会の最底辺に身を置いている3人の主人公に心から感情移入でき、ハラハラドキドキのサスペンスも展開し、『SRサイタマノラッパー』や『太陽』など閉塞感のある環境にいるしかない者たちを描いてきた入江悠監督の資質もこれ以上なく作品にプラスに働いていました。“犯罪映画”という括りにおいても、最も万人受けする作品なのではないでしょうか。
役者がみんな素晴らしく、とくに高杉真宙とMIYAVIには“普段のイメージと違う”こともあって震えるような感動がありました。林遣都が補佐的かつメンター的役割に徹しており、『悪の教典』や『僕だけがいない街』のおとなしい役とは正反対の飄々とした演技と存在感を見せ、原作のイメージにもぴったりでした。『箱入り息子の恋』を連想させる「牛丼を食べるだけで泣ける」シーンがあるのも最高です。ここまで素晴らしい作品であったのに、興行成績は芳しくなく、あっという間にシネコンでの上映が終わってしまったのは悔しい!
ちなみに、入江監督の次回作は主演の大沢たかおの他、賀来賢人、岩田剛典、広瀬アリス、三浦友和などの豪華キャストが集結した完全オリジナル映画『AI 崩壊』(2020年公開予定)です。こちらは『22年目の告白 私が殺人犯です』を大ヒットに導いた入江監督と北島直明プロデューサーが再タッグを組んだ、20稿を超える改稿を重ね、『藁の楯』を超えるアクションもあるという、巨費を投じたビッグプロジェクトなのだとか。もちろん、大期待しています。
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4位:『恋は雨上がりのように』
冴えない中年のファミレス店長に片思いをした、女子高生の恋の行方を描いた作品です。脚本を手がけたのは『かぐや姫の物語』の坂口理子で、その素晴しさを一つひとつ挙げていくとキリがないほど! 原作マンガからの再構成・再解釈もほぼ完璧で、とくに“映画館デート”のギャグにはゲラゲラと笑い、“焦げたサンドイッチ”というアイテムに持たせた役割には大いに感動しました。永井聡監督は『帝一の國』で勢いのある演出によるエンターテインメント性と、原作のエッセンスの抽出を見事に両立していましたが、今回の手腕はもうそれ以上!
さらに素晴らしいのは、後述する『ちはやふる -結び-』と同様に“不器用な人”や“無為な時間を過ごしてしまった人”に向けて優しいメッセージがあること。もちろん原作でも描かれたことでもあるのですが、生身の人間が演じる(その人生経験を感じさせる)こと、必要な情報を言葉に頼らずに表現しきった脚本の工夫で、さらにそのことが実感できるようになっていたのです。中年になった大人が観ると、前向きに生きるためのヒントがもらえるのではないでしょうか。それは、原作への深い理解と愛情の賜物です。
ファミレスの厨房や店長の部屋などの美術も作り込まれており、観た後は登場人物が観た人の心に生きるほどの“実在感”もあります。言うまでもなく主演の大泉洋および小松菜奈は原作のキャラにぴったりで、他キャストも清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、吉田羊などと主役級の存在感と実力を持つ俳優ばかり。ネームバリューを備えつつ、原作の再現度、実力もしっかり考慮している見事な配役でした。老若男女を問わず、すべての人にオススメできます。
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3位:『ちはやふる-結び-』
かるた競技にかけた青春を真摯に描き、好評が相次いだ2016年公開の前後篇から2年を経ての完結篇です。この作品から観ても十分に理解できるところはありますが、可能であれば前後篇を観てから鑑賞したほうがいいでしょう。なぜながら「若手俳優の2年間の成長を実感できる」「2年間の時間経過が作中でも重要になっている」「前後篇の伏線が回収される驚きと興奮がある」のですから。後になって企画が成立したと思えないほどに、青春映画としても、数ある完結編と銘打った作品の中でも、間違いなく歴史に名を残すマスターピースと呼べる出来栄えに仕上がっていました。
音楽と音響もこだわり抜かれており、“固唾を呑んで見守る”という緊張感も半端ではないことになっています。“言葉で語り過ぎない”語り口、見事な編集と音楽のテンポ、勝つことにロジックのある戦い、何より”青春の輝き“でいっぱいの2時間……きっと、忘れられない映画体験になることでしょう。原作や百人一首に注いだ愛情がこれ以上なく伝わり、原作ファンにとっても驚きがある展開も用意されています。大人はもちろん、これから青春時代を過ごす全ての若者に観て欲しいです。
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2位:『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
(C)押見修造/太田出版 (C)2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会
うまく人前で話せない女の子と、音痴な女の子との友情と青春を描いた作品です。オープニングから秀逸で、学校という場所だからこその身につまされる辛さと悩みを描き切り、開始10分でスクリーンが涙で見えないほどに泣かされたのは初めての経験でした。思春期の頃に“居場所のなさ”を少しでも感じたことがあるという方にとって、間違いなく“ささる”内容でしょう。音楽が物語の主軸にあることも含めて、アニメ映画の(後に実写映画化もされた)『心が叫びたがってるんだ。』に近い内容とも言えるかもしれません。
なお、終盤の展開にはやや賛否が分かれています。それは“あえて嫌われるキャラにさらに嫌われることをさせる”ためで、完全に意図的な作劇であるのですが、必要以上にイライラしてしまう、前半の流れが台無しになってしまったと感じる方もいるかもしれません。しかし、個人的にはそれこそが作品に重要であり、安易な結末にしないラストも含め、真摯に原作の物語に向き合った結果であると大肯定できました。主演の3人に等身大の高校1年生の少年少女としての実在感があること、とくに主演の南沙良の歌唱力と“鼻水まで流す”熱演には感動させられました。
ちなみに、湯浅弘章監督は本作で長編商業映画デビューとなりましたが、過去には乃木坂46のミュージックビデオなども手がけており、逆光をうまく利用して画作りをしていることや、“バス”というモチーフが登場することなど、概ねで一貫する作家性を感じることもできました。また、押見修造によるマンガは、すでに『スイートプールサイド』という良い意味で変態チックな作品も実写映画化されており、前述した『惡の華』(2019年秋公開予定)も公開が控えていますよ。
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1位:『ミスミソウ』
いじめっ子たちが次々に血しぶきを撒き散らしながら殺されるという過激な内容です。R15+指定になるのも無理はなく、ある程度は観る人も選んでしまうでしょう。しかしながら、(ここまでの凄惨な事態にならなくても)思春期の頃に誰かに殺意に近い憎しみを抱いてしまう…というのは、実は普遍的に起こりうるものなのではないでしょうか。いじめがいかに人間を心理的に崩壊させるのか、その恐ろしさも丹念に描かれており、単なるスプラッターホラーに止まらない志の高さ、若い人(ただし15歳以上)にこそ観て欲しいメッセージ性も内包されているのです。
殺人者となってしまう少女を演じた山田杏奈はもちろん、『ちはやふる』や『ソロモンの偽証』でも強い印象を残した清水尋也、映画では初出演ということが信じられないほど鬼気迫る演技を見せる大塚れななど、演じているキャラの年齢に近い若手俳優が最高の演技を見せています。『先生を流産させる会』などで凄惨ないじめを主題とした他、『ライチ☆光クラブ』などでスプラッターホラーと悲しい物語を両立させていた内藤瑛亮監督と、原作との相性も抜群という言葉では足りません。低予算ながら役者、脚本、演出、ロケーションなど全てが完璧な仕上がりで、内容と見事にシンクロしているタテタカコの主題歌の「道程」にもまた泣かされます。個人的に、マンガの実写映画化作品の最高傑作どころか、映画におけるオールタイムベスト1位を塗り替えるほどに忘れらない作品になりました。
ちなみに、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』と『ミスミソウ』はどちらも田坂公章というプロデューサーの方が手がけています。ネームバリューばかりに頼らず、原作の登場人物の年齢にマッチした実力のある若手俳優と、これ以上のないほどに原作のエッセンスを抽出できる監督を選び抜いた功績のため、「これからもマンガの実写映画化作品をよろしくお願いします!」と心からお願いしたくなりました。
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おまけその1:ここまでの名作が続々と生まれた理由はこれだ!
『ちはやふる -結び-』というマンガの実写映画作品として、青春映画しても最高傑作がこの世に生まれた……と思っていたら、さらに『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』と『ミスミソウ』という、それをも(あくまで個人的にはありますが)上回るほどの作品が生まれるとは思いもしませんでした。この記事の最初に掲げたように、2018年はマンガの実写映画化作品における歴史の転換点と言っても大げさではないでしょう。
ここまでの作品が生まれた大きな理由は、「原作マンガとマッチした資質を持つ監督(もちろんスタッフも)が真摯に作品に向き合ったこと」「ネームバリューだけを重視しないキャストが見事にハマっていたこと」「原作への正しい理解と愛があること」「2時間弱でまとめる映画という媒体ならではのダイナミズムや面白さを追求していること」、そして「(無理に原作の見た目を再現することによる)コスプレ感がないこと」ことにもあるのではないでしょうか。上記の10作品は、その条件を全て満たしています。
その他で、2018年はマンガの実写映画化作品で本当に面白かったのは、松坂桃李がマインドコントロールでの殺人を繰り返す男を演じた『不能犯』、6人の元受刑者が寂れた港町にやって来る『羊の木』、転校前に“ハブ”にされてしまっていた女子高生の恋を描く『プリンシパル 恋する私はヒロインですか?』、中村ゆりかと葵わかなはもちろん石橋蓮司おじいちゃんも可愛い『ラーメン食いてぇ!』、ジャズに魅了された高校生たちの青春を綴った『坂道のアポロン』、イケメン男子高校生4人組を主人公にした『虹色デイズ』、三重県伊勢志摩のロケーションが美しい『青夏 きみに恋した30日』、前作に増して訴訟されてもおかしくない限界ギリギリのギャグがてんこ盛りの『銀魂2 掟は破るためにこそある』、岩田剛典が障がい者の青年を好演した『パーフェクトワールド 君といる奇跡』、ロボットの見た目も含めてバカバカしいのにホロリとさせられる『ハード・コア』などです。本当にどれもレベルが高い!
それと公開中の『ニセコイ』もすごかったです!主にビジュアルとテレビ的演出が(色々な意味で)すごかったです!でも終盤の展開はとても良く考えられていて(皮肉なしで)感心しました!
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おまけその2: 2019年公開の『チワワちゃん』と『がっこうぐらし!』も絶対に観て欲しい!
繰り返しになりますが、2018年は「マンガの実写映画化作品に先入観や偏見を持ってしまっている人ほど観て欲しい!」と強く訴えたい、素晴らしい作品が数多く公開された年でした。そして2019年1月、早くもその系譜に並べるべき、新たな名作と断言できる映画が続けて上映開始となります。それは、1月18日公開の『チワワちゃん』と、1月25日公開の『がっこうぐらし!』です。
『チワワちゃん』は、『ヘルタースケルター』と『リバーズ・エッジ』に続く岡崎京子のマンガの実写映画化作品です。演出がとにかく優れており、開始5分でガツンと心を掴まれ、その後も勢いのある編集と音楽と駆け抜け、いわゆる“パリピ”な登場人物がみんな愛おしくなって来るという……自主映画『SLUM-POLIS』などで注目された二宮健監督が、若干26歳(製作時)でここまでの作品を送り出すとは!
『チワワちゃん』は予告編(特報)の出来も素晴らしく、本編では予想を上回るほどの感動があります。主演の門脇麦をはじめ、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎などの若手俳優はいずれも言うまでもなくハマり役。『リリィ・シュシュのすべて』や『嫌われ松子の一生』が好きという方も気にいるでしょう。R15+指定納得の性描写もありますが、それも作品に必要なもの。若者にこそ、観て欲しいです。
そして、「第1話の衝撃」でも話題を集めた『がっこうぐらし!』も実写映画化となります。原作とアニメ版が可愛い絵柄で、いわゆる“萌え”要素もふんだんなため、実写映画化への反発は他の作品以上に強かったようです。見た目だけでなくキャラ描写も実写の人間とのギャップがあるので、それも致し方はないでしょう。
しかしながら、映画本編を観て驚きました。実写の登場人物の見た目に違和感はほとんどなく(髪色をピンクにするなどの原作の再現を良い意味でしていない)、原作のエッセンスも見事に抽出されており、何より「原作を知っている人と知らない人とで違った感動がある物語」が紡がれていたからです。主演の4人がとにかく魅力的かつ彼女たちの関係性が丁寧に描かれ、予想を超えるクライマックスでは何度も涙を流し、鑑賞後には「そうか、原作の精神と素晴らしさは、ここにあったんだ!」と気づかされるほどにまで、原作への深い愛情と理解を感じることができました。
柴田一成監督は「原作ファンが観ておもしろいものになっているか」や「原作もラストアイドルも知らない人が観てもおもしろいものかどうか」を意識して、実写映画版『がっこうぐらし!』の脚本執筆と撮影を進めていたそう。その作品への真摯な向き合い方が、出来上がった映画に見事に反映されていたと言っていいでしょう。アイドル映画として100点満点の出来であるだけでなく、娯楽作としても大人から子供まで分け隔てなくオススメできる内容であり、「実写映画化作品への抵抗感を覆すパワーがある」という意味でも記念碑的な作品になるのではないでしょうか。事実、完成披露上映会では、ラストアイドルのファンはもちろん、原作ファンからも賞賛の声が数多く挙がっていたのですから。
なお、実写映画版『がっこうぐらし!』の予告編は「第1話の衝撃」がネタバレしていると原作ファンから批判の声も挙がっていたのですが、個人的には宣伝のためにそこを推すのは仕方のないことであると思いますし(何も知らずに観てもいいけど!)、最も大切なことはネタバレしていない、内容を端的かつ魅力的にまとめた、高確率で「けっこう面白そうじゃない?」と思える良い予告だと思いますよ。
他に気になる作品と言えば、ヤクザが性転換してアイドル活動をするというギャグマンガを実写映画化した『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』(2019年2月8日公開予定)などでしょうか。筆者は未見ですが、こちらも「よくぞ実写した!」という感慨も含め、きっとおもしろい作品になっていることでしょう。これからも、実写映画化作品の新たな名作が生まれることを大期待しています!
(文:ヒナタカ)
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