『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』と同じ時代の庶民を描いた映画たち
黒澤明監督の
乙女讃歌!『一番美しく』
木下惠介監督と同時期に監督デビューし、以後生涯の友でありライバルとして拮抗しあった名匠・黒澤明監督が、戦時下の軍需工場で働く女子挺身隊の姿を描いた作品が『一番美しく』です。
(『この世界の片隅に』のヒロインすずの妹すみちゃんも、こうした女子挺身隊の一員として軍需工場で勤労動員していました)
こちらも戦時下の1944年に作られたもので、やはり戦意昂揚を目的にしたものではありましたが、黒澤監督は軍国主義的なメッセージ臭を極力抑え、非常時に真摯に向き合う女子工員たちの日常をドキュメンタリー・タッチで描くことで、不思議なまでに登場する女子らの可愛らしさを醸し出していきます。
黒澤映画といえば『七人の侍』(54)をはじめ男臭いバイタリティに富んだ世界映画史上に残る名作群があまりにも有名ですが、本作はそんな“世界のクロサワ”が若き日に撮ったキラキラ乙女映画といっても過言ではなく(!?)、黒沢監督自身、自作の中で「もっとも可愛い映画」とコメントしています。
ここにも木下監督同様、戦争があろうとなかろうと青春の輝きに変わりはないといった黒澤映画ならではの前向きなメッセージに満ち溢れています。
なお本作の主演・矢口陽子はこの後、黒澤監督と結婚しました。
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