映画コラム

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2020年02月08日

『ヲタクに恋は難しい』レビュー:ヲタクとミュージカルの融合が醸し出すロマンティシズムにあふれたラブコメディ!

『ヲタクに恋は難しい』レビュー:ヲタクとミュージカルの融合が醸し出すロマンティシズムにあふれたラブコメディ!



ヲタクと歌は相性バツグン
それでも恋は難しい!?


本作は『銀魂』シリーズ(17・18)などで知られる才人・福田雄一監督がメガホンを取っていますが、もともとヲタクチックなギャグの数々をゆるく、しかしながら過剰に真面目に醸し出しながら独自の世界観を構築してきた彼も、今回は少女漫画原作で、またヲタクだけではないライトユーザーにも楽しんでいただきたいという意向もあってか、従来より我を抑えてロマンティシズム色を強調しながらヲタク讃歌を奏でるよう腐心している節が見て取れます。

その大きな象徴として挙げられるのが、やはり全編にわたってのミュージカル仕立てでしょう。

アニソンの21世紀における市民権の確立など、ヲタクと歌はどこかしら相性がよろしいようで、そこに目をつけての今回のアイデアもお見事と思われます。

そもそも主演の高畑充希は舞台ミュージカル・キャリアの持ち主でもあって、歌って踊っての身のこなしなどは画的にもエレガント。福田監督作品には『女子ーズ』(14)の洗礼も受けているので、ところどころのヘン顔やヲタ丸出しシークエンスの狂騒なども実に違和感なく演じ切れています。

山﨑賢人も同じく『斉木楠雄のψ難』(17)に続いての福田作品への参加ですが、前作同様の無表情キャラは既にお手の物といった安心感、プラスその奥に潜む感情の繊細な揺れまでこちらに伝わるかのようでした。

ミュージカル・シークエンスの数々には、よくぞこの場所で自然な雰囲気で撮れたものだなと感心しきりのものも多く、『ラ・ラ・ランド』に倣ったものもあったりで、実に楽しい仕上がり(正直、昨年の『ダンスウイズミー』で観客が真に見たかったのも、こういうテイストのものだったのではないかとも……)。

ミュージカル楽曲の作編曲は『新世紀エヴァンゲリオン』などでおなじみ鷺巣詩郎が担当していますが、これまでの日本映画におよそなかったロマンティックな世界観が見事に楽曲として結実しているのに驚かされました(あと、エンドタイトル曲にもご注目を!)。


一方で福田監督ならではのギャグ・パートを佐藤二朗やムロツヨシなどの個性派常連俳優陣が例によって繰り広げてくれますので(特にアイドル・ヲタ役の賀来賢人はイっちゃってます!)、福田作品ファンも一安心。

さらには今回そこに菜々緒や斎藤工といったツワモノも加わっていくのですが、原作未読の方のためにそれ以上のネタバレは避けておきます。どうぞ実際の画面でご確認ください!

モノづくりの世界では以前から「ヲタクこそが未来をクリエイトする」といった考えが浸透して久しく、事実、ひとつの事象に対して時に狂気すら伴う愛情をもって対峙する者こそが新たな時代や流行などを作り続けていることは古今東西未来永劫間違いないでしょう。

これからはもう本作の成海のようにヲタバレを恐れるのではなく、堂々と自分の夢の世界へ邁進していくほうが、ある意味クールなのかもしれません。

それに「ヲタクであろうがなかろうが、恋は難しい」ものですからね。

ところどころヲタク同士の日常会話が何を言っているのかわからなくなる瞬間があり(もっともそのときご丁寧に、ニコ動的な字幕を入れてくれるのが実に親切)、オールド・ヲタクのはしくれとしましては、急流のごとく目まぐるしく変動していく今のヲタク文化に思わず嘆息してしまったことも正直に白状しつつ……ヲタクの人もそうでない人も大いに楽しめる映画だと確信しております。

(文:増當竜也)

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