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2020-02-13

コラム

『続・荒野の用心棒』が奇跡のリバイバル!あの名主題歌とラストの快感を体験せよ!



©1966 B.R.C. Produzione Film (Roma I talia) Surf Film All Rights Reserved.



一度聞いたら忘れられない名主題歌に乗って、伝説のガンマン"ジャンゴ"が帰ってきた!

日本での初公開が1966年ということもあり、若い世代の観客にとっては、タランティーノ監督作『ジャンゴ 繋がれざる者』の元ネタと言った方がイメージしやすいかもしれないが、その高いドラマ性と西部劇の常識を超えた銃撃戦により、数あるマカロニウエスタン作品の中でも、屈指の名作とされる『続・荒野の用心棒』デジタル・リマスター版が、1月31日からリバイバル公開された。

個人的にも過去にテレビ放映や映像ソフトで何回となく見返してきた作品なのだが、実は今回が初の劇場大スクリーンでの鑑賞となる本作。

そのため、かなりの期待を胸に鑑賞に臨んだのだが、4Kリマスターで蘇ったその映像は、果たしてどのようなものだったのか?

ストーリー


南軍の残党であるジャクソン少佐(エドゥアルド・ファヤルド)と、メキシコ独立運動の戦士であるウーゴ将軍(ホセ・ボダロ)の2つの勢力が対立しているため、ゴーストタウンと化してしまった、メキシコとの国境沿いにある村。ある日この村に、棺桶を引きずった謎の男、ジャンゴ(フランコ・ネロ)がやってくる。2つの勢力双方から追われる女性、マリア(ロレダナ・ヌシアック)を助けた彼は、過去に因縁のあるジャクソン少佐と対峙することになるのだが…。


4Kリマスターで蘇る、伝説の殺戮アクション!



ジャクソン少佐の部下たちが身に着ける衣装の赤が鮮やかになり、棺桶や靴に付いた泥の質感がより感じられるなど、オリジナルのネガから4Kスキャンでレストアされたデジタル・リマスター版の美しさは、すでに映像ソフトで何回も見返したという方にこそ、ぜひ劇場の大スクリーンで観ることをオススメしたいほど!

その高いドラマ性や後述する宗教的な側面も魅力だが、やはり本作の見どころは、何と言ってもアイディアと工夫に溢れたガンプレイにある。

例えば、一瞬のうちに数人の敵を倒すジャンゴの早撃ちや、中盤で明らかにされる"棺桶"の秘密など、今観ても新鮮なそのアクションシーンの数々だが、特にラストの1対6の不利な決闘でジャンゴが見せる一発大逆転の秘策は必見!

これからご覧になる方のために詳しく書くことは避けるが、できれば何も予備知識を入れずに劇場で体験して頂きたい見事なアイディア、とだけ言っておこう。

人種差別や暴力・拷問、更に大量殺戮と呼ぶしかない銃撃シーンなど、今観ても衝撃的な描写が数々登場するだけに、コンプライアンスに配慮した最近の映画に飽き足らない観客にこそ、ぜひ観て頂きたい作品です!

実は宗教的側面を持つストーリーだった!



主人公のジャンゴは他人を信用せず、自身の欲や利益のために動く孤独な男として登場する。

物語が進むに連れて、実はジャンゴが南北戦争に行っている間に故郷の村で恋人が殺されていたこと、その犯人がジャクソン少佐であることなど、ジャンゴが再び訪れたこの村に隠された、彼の悲しい過去が徐々に明らかになっていく。



ジャクソン少佐を次第に追い詰めていくジャンゴだが、彼の目当てはジャクソン少佐が警備する砦に保管されている黄金であり、その黄金で新たな人生をスタートさせたいと思っている。

そう、彼にとって恋人の死は自分の責任であり、その辛い過去から逃れるために、他人との関係や感情を捨てて今まで生きてきたのだ。

そんな彼が、薄幸の女性マリアに出会うことで本当の愛を得て、自身の過去に向き合い乗り越えるために、両手をつぶされ銃を握れない状態でジャクソン少佐一味との決闘に臨むラストは、マカロニウエスタン史に残る名シーンなので、必見!

こうした高いドラマ性に加えて、実は宗教的な要素が色濃く盛り込まれている点も、本作がマカロニウエスタンの中でも屈指の名作と呼ばれている大きな理由となっている。

例えば、ヒロインの名前がマリアだったり、ジャンゴの引きずる棺桶や焼かれる十字架、更にはラストの決闘が墓地で行われる上に、亡き恋人の墓標がジャンゴの最後の切り札になる展開まで、本編中に込められた様々な宗教的要素が、本作を単なる西部劇を超えた存在にしていることは間違いない。

中でも衝撃的なのが、ジャクソン少佐の部下で密告屋の神父が、ウーゴ将軍にナイフで方耳を削がれた上で背後から射殺されるシーンや、黄金を独り占めしようとして失敗したジャンゴが、二度と銃を握れないように両手を潰されるシーンの残酷さ!

現在の目で観ても、かなり残酷なこれらの描写だが、実は密告者が耳を奪われ、盗みを働いた者が手を潰されるという描写には、言わば"目には目を"のような、教訓めいた意味が盛り込まれていることに気付かされる。

深い人間ドラマに派手なガンプレイ、そして主人公が徹底的に不利な状況に追い込まれてからの、一発大逆転のラストの快感まで、先の展開を知っていても思わず感情移入してしまう大傑作! それがこの『続・荒野の用心棒』なのだ。

現在上映中のシネマート新宿では、セルジオ・コルブッチ監督没後30年を記念して、2月15日に彼の監督作品である『豹/ジャガー』と『殺しが静かにやって来る』の2作品が特別上映されるので、大きなスクリーンで鑑賞できるうちに劇場に駆けつけるのが、オススメです!

最後に



過去の西部劇の常識を破って、主人公が馬に乗らずに泥道を延々棺桶を引きずって歩く姿に、一度聞いたら忘れられない名主題歌が、なんとフルコーラスたっぷり堪能できるという至福のOPから、文字通り一発大逆転のラストの決闘まで、映画の面白さが満載の超エンタメ西部劇だけに、今回のリバイバルでの劇場鑑賞を楽しみに待っていた! そんな観客も多かったようだ。

早撃ちの腕や格闘には強いが、戦争中に恋人を失った記憶に苦しめられ、過去の亡霊から逃れ続けるジャンゴの姿は、西部劇の主人公としてはかなり異色の存在であり、彼の精神的弱さやトラウマが観客に共感を与えてくれる。

加えて、富=黄金と早撃ちの腕前という、他人を信じられないジャンゴが頼りにしていたものを2つとも失い、最後に残された希望=愛する女性を守るために、ジャンゴが死地に赴くという展開も、彼の精神的成長や亡き恋人への贖罪と過去への決別を表現していて実に見事!

更に、決闘を終えた彼が新たな人生を生きるために墓場から村に向かうラストは、まさにキリストの復活を思わせるものとなっているのだ。

伝統的な1対1の決闘に囚われない"大量殺戮"や、今観ても「うわっ」と思わされる残酷描写など、一見すると荒唐無稽なアクション映画でありながら、実は過去の悲しい記憶に苦しめられる男の復活を、宗教的な側面から描く人間ドラマの名作なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)