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2020-04-02

コラム

勇気と希望!素晴らしきミュージカル映画オススメ選!

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Photo by Noom Peerapong on Unsplash


この春始まったNHK朝のテレビ小説『エール』はいきなり原始時代から始まるなど、楽しくもぶっとびながら“音楽”を意識した構成がなされてますが、その中にはミュージカル・シーンも含まれていて、昨今のミュージカル映画ブームを彷彿させるものがありました。

2016年の『ラ・ラ・ランド』が世界的に大ヒットしたことで俄然注目されるようになったミュージカル映画のジャンルですが、その後も19世紀の興行師P・T・バーナムを主人公に据えた『グレイテスト・ショーマン』(17)などが話題を集め、またミュージカルではないものの音楽映画としての流れからクイーンのフレディ・マーキュリーの生涯を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(18)もそこに連なっているように思われます。

日本でも「どうしてミュージカルは突然歌いだすのか?」という疑問から生まれたコメディ『ダンスウイズミー』(19)や、今年も人気漫画をミュージカル仕立てでお届けする『ヲタクに恋は難しい』(20)が公開されたばかり。

一方、現在世界中に蔓延する新型コロナ・ウイルス・ショックのため、子どもから大人まで外に出られなくなった方々も多数いらっしゃるかと思われます……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街453》

そこで今回は、数あるミュージカル映画の名作の中から、ご家族で楽しめるものを中心に、いくつかご紹介していきたいと思います!

ミュージカル映画の黎明と
不滅の名作『オズの魔法使』


まずミュージカル映画の歴史をざっと振り返っていきますと、1920年代に映画がサイレントからトーキーへ移行していく時期、画と音を合わせることで魅力を放つジャンルということで、ミュージカルや音楽映画は大いに重宝されるようになっていきました。

ハリウッドで本格ミュージカル映画の土台が築かれるようになったのは1933年の『四十二番街』からだと言われていますが、これは当時の世界大恐慌のあおりを受けて、一流のダンサーがハリウッドに活路を見出すようになったことともシンクロしています。




これ以降、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースのコンビや、ジーン・ケリーなど多数のミュージカル映画スターが輩出され、ハリウッドはその華やかさに拍車をかけていくのでした。

特に映画会社のMGMは優れたミュージカル映画を量産するようになっていきますが、それらの作品群の名場面を編集した『ザッツ・エンタテインメント』3部作は、ミュージカル映画の愉しさを手っ取り早く知るとともに、収録された作品群をじっくり見てみたいという欲求に駆られること必至といった格好のテキストになることでしょう。

また1939年の『オズの魔法使』は、少女ドロシーの冒険ファンタジーをミュージカル仕立てで描いた名作であり、80年以上経った今も全く色あせることのない名作です(戦前の作品なのにカラー映画という仕様にも驚かされますね)。




現在公開中の伝記映画『ジュディ 虹の彼方に』(19)のモデル、ジュディ・ガーランドが健気に歌う《虹の彼方に》(アカデミー賞歌曲賞受賞)は今も様々なところで歌われ続けています(最近では日本のアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』でも、そのメロディが印象深く使われていましたね)。




なお『オズの魔法使』はその後もダイアナ・ロスやマイケル・ジャクソンなど黒人アーティストのみで編成されたミュージカル映画『ウイズ』(78)や、『オズの魔法使』続編としての『オズ』(85)や前日譚としての『オズ はじまりの戦い』(13)といったノット・ミュージカルとしてのファンタジー作品も存在しています。

彷徨するミュージカル映画の
時代を乗り越えて


ハリウッドのミュージカル映画そのものは1940年代から50年代にかけて絶頂期を迎えますが、家族で楽しめる作品となると1960年代に入ってからの『メリー・ポピンズ』(64)や『チキ・チキ・バン・バン』(68)『オリバー!』(68)などに代表されるような気もします。




これは当時台頭してきたテレビに対して映画界が大型映画ブームを巻き起こし、その中でファミリー層を狙おうといった趣旨と連動している感もあります。

実写とアニメの融合で不思議なナニー(乳母とか子どもたちの教育係みたいな存在)の活躍を描いた『メリー・ポピンズ』は、最近続編の『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)も公開されたことで、今の若い世代にも知名度はあることでしょう。双方続けてみるのも面白いかと思われます。




いろいろな意味でミラクル・カー“チキ・チキ・バン・バン”を作った貧乏発明家とその子どもたちの大冒険を描いた『チキ・チキ・バン・バン』は、特撮も駆使したスケール豊かで大らか、また個人的に最も愛してやまないミュージカル映画です。映画を見たことがなくても主題歌を聞いたことがないという人はほとんどいないことでしょう。

『オリバー!』はチャールズ・ディケンスの長編小説『オリバー・ツイスト』のミュージカル映画化で、アカデミー賞6部門を受賞しています。主演は後に1970年代の少年少女たちのバイブル映画と化す『小さな恋のメロディ』(70/こちらもビージーズの音楽が話題になりましたね)のマーク・レスターとジャック・ワイルドでした。




もっとも多数のエキストラを必要とし、さらには優れた歌とダンスの才能も要するミュージカル映画は、ヴェトナム戦争など世界的不穏な気配や、それに伴う反体制的映画運動アメリカン・ニューシネマの台頭などによって、1970年代以降は作られにくい状況に陥っていきます。

もっとも、その中でもミロシュ・フォアマン監督のヴェトナム反戦ミュージカル映画『ヘアー』(79)や、ボブ・フォッシー監督の自伝的要素の強いブロードウェイ演出家の生涯を描いた『オール・ザット・ジャズ』(79)、フランシス・フォード・コッポラ監督がオールセットで作り上げた『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)、反戦ミュージカル映画『素晴らしき戦争』(69)で監督デビューした名匠リチャード・アッテンボロー監督の青春群像劇『コーラス・ライン』(85)など注目を集めた作品もいくつかあり、オリヴィア・ニュートン・ジョン主演の『グリース』(78)『ザナドゥ』(80)も楽しい出来ではありましたが、そういった状況の中で異彩を放ったファミリー・ミュージカル映画が『アニー』(82)でした。




もともとは新聞連載漫画を原作とするブロードウェイミュージカルの映画化ですが、監督に巨匠ジョン・ヒューストンを迎え、画面の奥から前で飛び出すかのような縦の構図を駆使して躍動感あふれる逸品に仕上がっています(もちろん子役たちの可愛らしさも特筆的)。2011年には『ANNIE/アニー』としてリメイクもされています。

また1988年には知る人ぞ知るといった作品として、アストリッド・リンドグレーン原作の児童小説のミュージカル映画化『長くつ下ピッピの冒険物語』(88)も製作されています。こちらも監督は何と『史上最大の作戦』(62)や『素晴らしきヒコーキ野郎』(65)『バルジ大作戦』(65)など大型映画の名匠ケン・アナキン! 実は彼、その前に青春ミュージカル映画『パイレーツ・ムービー』(82/主演はクリストファー・アトキンスとクリステイ・マクニコルといった、当時人気の青春アイドル・スターでしたね)も撮っていたのでした。




1990年代以降は『エビータ』(96)『ムーラン・ルージュ』(01)『シカゴ』(02)『レ・ミゼラブル』(12)など徐々にミュージカル映画が作られるようになっていき、『ラ・ラ・ランド』の大ヒットに行きつく感もあります。




そんな中で大いに特筆すべきはディズニーのアニメ映画の数々で、それらの大半はミュージカルタッチで音楽を重視し、子供たちに夢と希望を与えるといったテイストを、それこそ『ファンタジア』(40)の昔から変わることなく繰り広げています。

個人的にそのピークは『美女と野獣』(91)ではなかろうかと思っています(まあ、『アナと雪の女王』みたいな最近のものはともかくとして、ですが)。




今さらストーリーを語る必要もない美女と野獣の恋物語を、『リトル・マーメイド』(89)で注目されたアラン・メンケンの音楽がさらに壮麗に盛り上がていきます(彼はその後も『アラジン』や『ポカホンタス』などの音楽を担当)。

後に実写リメイクもされていますが、やはりまずはこちらを先にご覧になることをお勧めしたいと思います。

今こそすべての人に
見てほしい作品とは?


さて、最後にファミリー向けミュージカル映画のベスト1を教えてくれと乞われたら、やはりこの作品を挙げるしかないでしょう。

ロバート・ワイズ監督、ジュリー・アンドリュース主演の1965年度作品『サウンド・オブ・ミュジック』です。




舞台は戦前のオーストリアで、お転婆な修道女見習いだったマリア(ジュリー・アンドリュース)が厳格なトラップ大佐(クリストファー・プラマー)の子どもたちの家庭教師をやることになり、その大らかな歌と存在感で子どもたちのみならず大佐のかたくなな心をも溶かしていきますが、そこに戦争の影が忍び寄ってきて……。

こちらも定番として意外性はないかもしれませんが、逆にこういったものこそを時折振り返りながら映画の魅力の原点に触れ親しむことも肝要かと思われてなりません。

ご存じ《ドレミの歌》《エーデルワイス》など名曲の数々は『オクラホマ!』(55)『王様と私』(56)『南太平洋』(58/年度はそれぞれ映画版)などの名作ミュージカル音楽を構築してきたリチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタイン二世の名コンビによって作られたもの。

また監督はサスペンスからSF、パニック、ホラー、メロドラマ、戦争、史劇など様々なジャンルを手掛けてきた名匠で、ミュージカルでは映画史上に残る名作『ウエストサイド物語』(61)を発表したロバート・ワイズ。




アカデミー賞では作品・監督、編集・音楽・録音賞を受賞。

落ち込んだマリアを修道院長が励ましながら歌う《すべての山にのぼれ》はラストにも流れますが、今の混迷と不安にさいなまれる状況の中、この歌を象徴としながら、本作は必ずや見る人の胸を打つとともに、明日への希望を再び見出してくれることでしょう。

(文:増當竜也)