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2020-07-07

コラム

『SKIN/スキン』レビュー:“短編と長編は、表裏一体”必ず両方を見るべき理由

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■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

61回目の更新、今回もよろしくお願いいたします。

映画館でも、注目の作品が続々と日本にやってきて、見逃すものかとスケジュール調整をしている日々です。コロナということもあり、予防をしつつ、お客様が少なそうな時間帯や場所を狙っての鑑賞。新しく、大変なこの環境、少しでもストレスなく対応できるようにしたいものです。

色々ある作品の中、悩んだ結果、今はこの作品をご紹介すべきなのではないかと強く思いました。

それではお楽しみください。今回はコチラをご紹介!

『SKIN / スキン』『SKIN - 短編』





2009年、アメリカのオハイオ州。反ファシスト団体に襲いかかるスキンヘッドの集団。その集団は、白人至上主義グループ「ヴィンランダーズ・ソーシャル・クラブ(VSC)」であった。

そのうちの一人である、ブライオン(ジェイミー・ベル)は、小さい頃に親に捨てられたが、VSCの主宰者であるクレーガー(ビル・キャンプ)とシャリーン(ヴェラ・ファーミガ)に拾われ実の子のように育てられ、いまやグループの幹部となり、完全な差別主義者になっていた。タトゥーショップで働く彼の全身には、差別的なメッセージの込められた無数のタトゥーが彫られていた。

ある日の集会で、ブライオンはシングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)と出会う。ジュリーは、差別主義者ではまったくないが、生活費を稼ぐために仕方なく、集会で3人の娘に歌を歌わせるなどして生計を立てていた。

そして、反ヘイト集団の活動を続けているダリル(マイク・コルター)は、ファシストの姿をカメラにおさめて、その顔と名前をネット上に公開するなどの運動を続けている。

ブライオンとジュリーは、すぐに付き合い始める。ジュリーはブライオンに、"子供のためにも、差別主義者たちにはもう近づかない"と訴える。その夜にブライオンの元に、仲間たちが迎えに来て、活動のためにある場所に行くことに。その場所とは、モスクであった。彼らはそこに火をつけようと計画していた。

ブライオンは、参加することになるが、モスクの中に寝泊まりしていた不法移民を見つけ、仲間にバレないように彼らを逃してやる。その放火に罪悪感を抱いたブライオンは、ジュリーにVSCには二度と戻らない」と誓うのであった。

二人は結婚し、新しい街で幸せな生活を築きあげるはずであったが、全身にはタトゥーの入ったブライオンはなかなか真っ当な仕事に就くことが出来ない。

そんなところに、クレーガー達が新居にやってくる。家族に危害を加えると半ば強引に脅し、ブライオンを連れ去る。連れ去った先には、ブライオンがコソッと逃した不法移民数人が捕まっていた。クレーガー達に、拳銃を持たされトドメを刺せと強要されるが、拒否するブライオン。そのためリンチにあい、大怪我を負ってしまう。

恐れるブライオンは、反ファシスト団体のダリルに連絡し助けを請うことに。新しい人生を歩むために、ブライオンは全身にびっしりと刻まれたタトゥーの除去を行うことを決断する、、、




あらすじをドバドバと書きましたが、コチラは「スキン」"長編"のストーリーです。短編は20分くらいの尺で、あらすじはまったく違う作品。両方をみるとネオナチのことや、差別主義者へ教育されていく過程など、より理解が深くなります。

短編と長編は、表裏一体のような関係。短編ではどのようにヘイトグループに入っていくのか(タトゥーを入れることによる影響)を描き、長編では、どのようにグループから抜けられるのか(タトゥーを除去していく状況)を描いています。信念の強さ、意志の強さで、今まで歩んできた己の人生を変えていく人間の話。



監督は、イスラエル出身でユダヤ人のガイ・ナティーブ。元々はコマーシャルを多く手掛けていたが、短編作品でサンダンス映画祭でグランプリを取るなどして、世界的にも注目され始める。短編『SKIN』では2019年のアカデミー賞で短編映画賞を受賞している。長編『SKIN』は企画立ち上げから7年かかり、ようやく実現した。北米の配給は、いま最も勢いのある団体"A24"が担当し、世界で大きな賞賛を集めている。

一部の映画館では、長編に合わせて、短編の上映も行なっていたので、上映開始とともに映画館へ駆け込みました。(大評判の短編もみれるという恵まれた機会は、今だけかもしれないですし)

「これは!両方を"必ず"見るべきです!!!」

確実にこう言えます。

短編と長編は話が違いますが、題材がもちろん同じなので、両方観なくてはこの作品は語れません。

個人的には短編のほうが、インパクトの強い作品で、心に深く刻まれたというのが正直な印象です。

差別主義者は先天的には存在せず、すべて後天的な"教育"によって生まれるのだという事実に、深い恐怖を感じます。

全身に深く刻まれたタトゥー。彫る際には痛みを伴うものですが、除去する場合にはその3倍以上の激痛ときく。作品内にそのシーンが入ってくるたびに、画面からこちらにも痛みが飛び火する感覚でした。

こういったネオナチ集団やヘイトな活動が、今まさに行われているリアルな現実。この作品を通して少し学べたことは、自分にとってもとても大きなことです。

日本人にとって人種差別が遠いものという考えは、すでに過去のもの。

今はコロナ後の世界。世界に出ればアジア人は差別に合う対象です。島国で守られて、ぬくぬくと育ったゆるい感性から脱却しなくてはならないのだなと強く感じます。

まさに今観るべき作品。
観なくてはならない作品。

だと、思います。

ぜひ皆様も映画館で鑑賞してくださったら幸いです。

もちろんマスクなど、感染予防はきっちりとしてご鑑賞くださいね。

それでは今回もおこがましくも、紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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