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2020-07-21

コラム

『WAVES / ウェイブス』レビュー:人に触れ、人の暖かさを感じたい。誰もが心にささる家族の映画

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■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

62回目の更新、今回もよろしくお願い致します。

人との距離を取らなければならない世の中。

それに慣れなければなりませんが、なかなかそうもいきません。しかし、今は我慢をし、少しでも感染拡大を抑えるべくやれることといったら、罹らないように予防をしっかりするということ。徐々に気持ちが緩んでくることも、気をつけて、日々思い直しながら、生活しています。

皆さまも本当に気をつけてくださいね。

また触れ合える日々を祈りながらいまは耐えましょうね。頑張ります。


映画館へは、時間と場所を考えて、なるべく人が来ない時間を狙って伺っています。

軒並み注目作品が公開されていますが、今回はずっーーーーと楽しみにしていた、こちらの作品をご紹介しようかなと思います。

『WAVES / ウェイブス』





フロリダのハイスクールに通うタイラー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)は、レスリング部に所属しスター選手として活躍していた。さらには裕福な家庭で育ち、美人な恋人アレクシス(アレクサ・デミー)も学校で人気者。アレクシスとは共に深く愛し合い、未来を見据えて歩み、彼はこの上なく輝かしい人生を送っていた。

タイラーの父・ロナルド(スターリング・K・ブラウン)は、息子のトレーニングにコーチとしてぴったりと寄り添い、息子に対して厳しく追い込み、タイラーを一流に育て上げようと毎日檄を飛ばし続ける。タイラーもそれに答えるべく、レスリングに勉強に、父親の教えを必死に守り食らいついていく。父ロナルドの厳しさに、不安に思う妻のキャサリン(レネー・エリス・ゴールズベリー)であったが、継母であることもあり、父と息子の関係になかなか立ち入る事が出来なかった。

ある日、肩に違和感を覚え始め医者に診てもらうタイラー。すると知らぬ内に肩を負傷してしまっていた。医者によると症状は深刻で、今すぐ引退し手術するべきだと伝えられるが、タイラーは大事な試合が近いこと、さらには父や周囲の期待を、絶対に裏切る事が出来ないと思い、怪我のことは誰にも話せずにいた。痛み止めを隠れて服用し、日に日に痛みが増す肩の負傷を隠しながら、タイラーは試合に出場する。当然、肩をさらに悪化させてしまい、タイラーは試合中に蹲ってしまう。唖然とする父ロナルドであった。

しかし、悲劇はそれだけではなかった、、恋人アレクシスが身篭ったのだ。アレクシスの決断に、タイラーは悩んでしまい、さらに追い込まれる。二人の意見がバラバラになり、最悪の悲劇へと向かっていく。。。

タイラーの妹のエミリー(テイラー・ラッセル)は、兄の影に隠れて、目立たない存在だった。兄の異変に、なんとなく気付いていたが、何も行動に移せなかったことを深く悔み、自分を責め続けていた。

家族はバラバラになり、学校でも妹のエミリーは周囲から白い目で見られる。家にも学校にも居場所がないエミリーであったが、ある日ルーク(ルーカス・ヘッジズ)というレスリング部の青年が声を掛けてきた。彼だけは、彼女のことを変なフィルターをかけずに、普通に接してくれた。彼の優しさに触れ、エミリーも徐々に心を開いていき、、




全世界が大注目する映画会社「A24」の新作。

公開前から騒がれていた超期待作が、ようやく日本にもやってきました。(私も公開初日の昼過ぎに観てまいりました)

素晴らしすぎる。

冒頭の360°カメラワークから、ぴったりとハマる音楽と芝居と画角の動き。こんなにも冒頭から没入感を感じることはなかなかない経験です。
タイラーの人生での、高揚感、充実感、幸福感が音楽の力を最大限に利用して表現されていました。

この作品は特に、音楽との結びつきが強いです。歌詞とその人物とのリンク、リズムと鼓動のリンク、その曲が掛かるだけで説明なしに、観客は無意識に理解するというなんとも新しい感覚。

ケンドリック・ラマー、フランク・オーシャン、レディオヘッド、カニエ・ウエスト、アニマル・コレクティヴなど、さまざまなミュージシャンの楽曲が使用されている。その数なんと31曲(オリジナル楽曲も含む)。権利の取得に苦労したが、監督のつよい思いと素晴らしいスクリプトで、ミュージシャン達が快諾したようです。

なかでもフランク・オーシャンの楽曲が多く、兄と妹を繋ぐシーンを演出する重要な使われ方をしています。

前半はタイラー、後半はエミリーを主軸に構成されています。光と影。タイラーが輝くほどエミリーは影となり、タイラーが闇に包まれると、エミリーに光が当たってしまう。二人の関係、そして家族の話へとなっていく。

ちょっと素晴らしすぎて、終幕後、街を歩きながらずっと考えてしまいました。

サントラを聞くだけで、そのときのシーン、そのときの人物の心情が、今だに浮かび上がってきます。ここまでストーリーと密になるプレイリストはないので、通しで聞くとまるでまた映画を観たくらいの充実感。

監督は、新鋭のトレイ・エドワード・シュルツ。

なんと1988年生まれ!(『イット・カムズ・アット・ナイト』の時にも思いましたが、、年下でこの才能、、、)

テレンス・マリック監督に、アシスタントとして参加。初監督作品「クリシャ」で様々な映画祭で賞を受賞し、自身の2作目であり同じくA24製作の『イット・カムズ・アット・ナイト』で、さらに世間の注目を集める。

次世代の波が次々と押し寄せる。幸せな波。

こういうものをひとつも残らず摂取していけるように、いつでも自身の感度を高めておきたいですね。

今後生きていく中で、この作品を観てないという方とは、今後会話したくないかもしれない、、というくらい必ず観なければならない作品です。通らなければならない作品です。

必ず映画館で。です。

なかなか厳しい世の中ですが、空いている時間帯や場所をなんとか見つけて、必ず駆け込んでほしいです。

このWAVESを、ぜひ全身に浴びてください。




今、世の中は人との距離を開けなくてはならない。

この作品を鑑賞し、人の暖かさを心から感じました。家族の大切さを再確認しました。

人に触れたい、そう思います。

物理的に、精神的に、触れるということ。暖かさを与え、そしてこちらも感じたい。今の世の中が、前進し、明るい未来を皆で迎えられることを心から願います。頑張りましょう。

それでは今回も、おこがましくも紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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