映画コラム
『ミッドナイト・スワン』レビュー:草なぎ剛が演じる“母”の切ない温かさ!
『ミッドナイト・スワン』レビュー:草なぎ剛が演じる“母”の切ない温かさ!
草なぎ剛の新境地たる
母と娘のラブストーリー
(C)2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS
草なぎ剛といえば、これまでいいひともやれば任侠のヘルパーさんもやれば、日本沈没を救う人もやれば……と、役者として変幻自在の活動を続けてきていますが、今回はまた新たな、そして大きなステップアップを遂げたなと、称賛に値する好演を示しています。
新宿の街を散策したことのある方なら、ここでの凪沙みたいな人をごく普通に認識することができるでしょう。
リアルの一言ではすまされないほどの存在感で凪沙を演じ切る草なぎ剛のひっそりとした佇まいは、一方では才能ある少女・一果のまぶしさも幼さもさらに引き立てることになっていきます。
一果を演じる新人・服部樹咲は実際にこれまで輝かしい成績を収めてきたバレリーナですが、演技未経験ながらもさすがはパフォーマー、草なぎ剛を相手に何ら臆することなく堂々とした個性を披露。
またクラブのオーナーに扮する田口トモロヲのベテランならではのいぶし銀のオーラ、虐待する母という嫌われ役に挑んだ水川あさみ、一果の裕福な友人に扮する上野鈴華など、周囲のキャラクターの魅力もさりげなく主演二人の”愛”をバックアップしながら映画に貢献してくれています。
監督は『下衆の愛』(16)やネットフリックス「全裸監督」(19)などの内田英治。
性別、年齢、才能など、人生におけるさまざまな光と影の対比から醸し出される、ささやかながらも温かい愛情の描出に長けた画と音の構築によって観る側の心に染み入る人間讃歌が見事になされています。
自分は陽の当たらないところにいるのではないか? そう思っている方にも思ってない方にも等しく奥深い感動を与えてくれる、“母”と“娘”といった疑似的関係をも優に越えた人間同士のラブストーリーとして、こちらもささやかながら(その実強く!)一見をお勧めします。
(文:増當竜也)
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