『恐怖に襲われた街』ジャッキー・チェンに影響を与えた超絶アクションを目撃せよ!



PEUR SUR LA VILLE a film by Henri Verneuil © 1975 STUDIOCANAL - Nicolas Lebovici - Inficor - Tous Droits Réservés



今回ご紹介するのは、10月30日から開催される「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」の上映ラインナップの1本『恐怖に襲われた街』です。

1975年の日本公開以来、ビデオ発売のみで未DVD化だった本作ですが、今回HDリマスター版による実に45年ぶりの劇場公開が実現!

CG合成に頼らない数々の危険なアクションが、後のジャッキー・チェン映画にも影響を与えたことでも有名な作品なのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー


パリの高層マンションから一人の女性が転落死した。パリ警察きっての腕利き警部ルテリエ(ジャン=ポール・ベルモンド)が捜査にあたることになったが、ミノスと名乗る謎の男から彼に電話がかかってくる。事件の犯人だと話すミノスは、連続殺人を予告してくるのだった。
パリの街が恐怖に包まれる中、ルテリエは次の標的である看護婦のエレーヌの警護にあたるが、エレーヌはミノスの罠にはまり殺されてしまう。
彼女の死によって意外な犯人の正体が明らかになるのだが、ルテリエは次の犠牲者がポルノ女優のパメラ・スイートであることを突きとめると、彼女の自宅であるマンションへと向かう。だが、すでに到着していたミノスは、パメラを人質に取った上に部屋に爆弾を仕掛けていた。果たしてルテリエはミノスの計画を阻止できるのか?


CG合成なし、命がけで挑むスタントが凄い!


本作が製作された1975年といえば、ベルモンドの良きライバルだったアラン・ドロン主演のアクション映画『アラン・ドロンのゾロ』が世界中で公開され、ドロンが披露する素晴らしいアクションが話題となった年。

それだけに、この『恐怖に襲われた街』に賭けるベルモンドの意気込みは凄まじいものがあり、CG合成によるド派手なアクションシーンに慣れた現在の目で観ても「これ、下手すると死ぬんじゃ?」と思わせる超絶アクションを次々に披露してくれるのです。



ダンテの「神曲」に登場する判事ミノスを名乗る連続殺人犯と、敏腕警部ルテリエの対決を描く内容なのですが、当時のアクション映画としては、かなり長い126分の上映時間にも関わらず、後述する高所での追跡や走る電車の上でのアクションなど、観客に退屈する暇を与えないサービス精神は見事!

例えば、銀行強盗犯の捜査が一瞬で銀行強盗一味との激しい銃撃戦へと変わり、そこから車で逃走する犯人とのカーチェイスへと続く冒頭部分だけでも凄いのですが、更に運転中の刑事が撃たれて死亡、助手席のルテリエが銃で応戦しながら車のハンドルを操作する中、後続車に追突されてルテリエの車が大破する! という、大満足の展開が用意されているのです。

もちろん、これ以外にも数々の見せ場が用意されているのですが、中でも映画の中盤に登場する、急勾配のビルの屋根を飛び移りながら延々と繰り広げられる犯人追跡シーンは、CG合成に頼らない命がけのアクションシーンとなっています。

加えて、犯人追跡中に足を滑らせたルテリエが屋根の端にぶら下がったまま横移動したり、ビルの間の平均台のような部分を渡るといったアクションだけでなく、この連続殺人犯を追うシーンが、そのまま途切れることなく因縁の銀行強盗犯との追跡シーンに繋がる展開は見事!

実際、地下鉄に逃げ込んだ銀行強盗犯を追って電車の屋根に上るルテリエのアクションは、後のジャッキー・チェンやスティーブ・マックイーン、チャック・ノリスなど、多くのアクションスターに影響を与えているのです。

犯人追跡中に入手した"ある証拠"から、ついにミノスの正体が判明。彼の部屋にあった遺留品から次の犠牲者を特定したルテリエは、その女性が住む高層マンションへと向かうのですが、残念ながら一足遅く、すでに女性を人質に部屋に立てこもっていたミノスの手には爆弾が!

果たしてルテリエは、どうやってこの危機的状況に立ち向かうのか? その結末は、ぜひ劇場で!

最後に


今回、久々に観返して驚いたのは、ラストの高層ビルでのアクションがジミー・ウォング主演の『スカイ・ハイ』と、ほぼ同じ展開だったこと! 日本公開は『恐怖に襲われた街』の方が早いのですが、ハンググライダーで空から高層ビルに乗り込んだジミー・ウォングに対して、後に『ダイ・ハード』や千葉真一主演の『ドーベルマン刑事』、更に特撮ヒーロードラマ『快傑ズバット』にまで影響を与えることになる、ルテリエの華麗な進入方法は必見!

他にもデパートの中へ逃げ込んだミノスを追うシーンが、ジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー/香港国際警察』を連想させるなど、45年前に製作された本作が後のアクション映画にどれほど影響を与えたか? その偉大さが実感できる点も、この映画の大きな魅力と言えるのです。

まさに時代を先取りしていた傑作アクション映画と呼ぶに相応しい『恐怖に襲われた街』。

この貴重な機会に、ぜひ劇場の大きなスクリーンで観て頂きたい作品なので、全力でオススメします!

「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」





(文:滝口アキラ)

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