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2020-12-28

2020年、傑作日本映画20選!

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11:『ドロステのはてで僕ら』



前述の『前田建設ファンタジー営業部』でも脚本を担当していた上田誠が脚本と原案を務めた、人気劇団「ヨーロッパ企画」の初となるオリジナル長編映画です。「2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差でつながっている」という奇抜な設定のタイムテレビが登場し、その後はあれよあれよと物語がとんでもない方向へと向かう様が、面白くって仕方がありませんでした。

全編ほぼワンカット、リアルタイム進行で描いていることも重要で、観終わった時には「この世で一番面白い70分間(上映時間)だった!」断言できるほどの満足感がありました。極めて論理的に構築された物語、作り手の頑張りが劇中の役者の奮闘と重なっている様には、あの『カメラに止めるな!』に勝るとも劣らない興奮に満ちていました。『ドラえもん』でおなじみの藤子・F・不二雄氏が提唱した、日常の中の不思議な出来事を描くジャンル“すこし・ふしぎ(SF)”が好きな方にもオススメです。

12:『本気のしるし 劇場版』



会社員の青年が踏み切りで立ち往生していた謎めいた女性の命を救ったことから、際限のない“深み”にハマっていく物語です。元はテレビドラマとして放送されていた内容を、劇場用に再編集し公開したその上映時間は232分。その約4時間を全く飽きさせない、次々に起こる良い意味で地獄のような展開に背筋が凍り、凄まじい事実が提示された時には変な笑みもこぼれるという、濃密な時間を過ごさせてもらいました。

役者が実に素晴らしく、特に主演の森崎ウィンの「イケメンでしっかりしているようで絶妙に優柔不断のダメ男」というバランスの役回りに少しヒキつつも共感しまくりでした。これほどまでの戦慄のサイコサスペンスが、『りびんぐゲーム』や『ちゃんと描いてますからっ!』など、かわいい絵柄でも知られる星里もちる先生のマンガが原作ということにも驚きを隠せません。

13:『スパイの妻』



1940年、国家機密を公表しようと画策する夫と、ある決意を胸に行動を起こす妻との、関係をスリリングに描いたサスペンスで、こちらもドラマとして放送されていましたが、スクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として公開されました。評価はすこぶる高く、『座頭市』の北野武監督以来の、ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞するという快挙を成し遂げています。

確かな信念を持つ高橋一生、精神的に追い詰められる蒼井優、冷徹に物事に対処しようとする東出昌大と、それぞれが過去最高のハマり役と言えるほど。戦争の時代を描いていますが、小難しいところがほとんどない、一触即発の空気にハラハラできる内容なので、黒沢清監督作の中でも最も万人にオススメできます。それでいて、黒澤監督らしいホラー演出が炸裂していることも見どころです。

14:『朝が来る』



養子縁組により男の子を迎え入れた夫婦の元に、産みの母を名乗る女性が訪れ、「子どもを返してください。それがだめならお金をください」と衝撃的なことを告げるという物語です。時系列を入れ替えてそれぞれの想いが交錯する巧みな構成、様々な「母」の姿を知ることができる物語を通じて、切なくも尊い人間讃歌を紡ぎ出していきます。

永作博美と井浦新が素晴らしいのはもちろん、注目は『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』や『星の子』と出演作が続く蒔田彩珠。彼女の「抑えているけど溢れ出てしまう」感情表現が素晴らしく、この難しい役を見事に演じ切ったことをずっと忘れずにいたくなりました。河瀬直美監督の力量が最大限に発揮された、「光」の美しさをとらえた画にも注目してほしいです。

15:『罪の声』



昭和最大の未解決事件グリコ・森永事件をモチーフとし、過去の事件に翻弄される2人の男の姿を追った、フィクションのベストセラー小説の映画化作品です。ミステリーとしての面白さもさることながら、世代を超えて積み重なった悪意に対して「本当の正義」を通す物語にも大きな感動があります。そして小栗旬と星野源のブロマンスぶりも尊く、もはや「告白」と言ってもいいほどのシーンがあったので、この2人のファンは必見でしょう。

小栗旬演じる記者が上司の松重豊に「エンタメとして消費する以上の意義を見つけてこい」と言われる場面があるのですが、これはメタフィクション的なセリフと言えるでしょう。本作がまさにエンタメを超えた、普遍的な「悪意に巻き込まれた人のための物語」になっていくのですから。もう1人の主人公である星野源がテーラー(オーダーメイドでスーツを作る人)という設定に、素晴らしい意味が用意されていたことも大好きでした。

16:『おらおらでひとりいぐも』



第158回芥川賞と第54回文藝賞をダブル受賞したベストセラー小説の映画化作品です。表面上の物語だけを追えば、ほぼほぼ「孤独な老婦人の日常を追うだけ」と言っても過言ではない内容なのですが、“心の声”との掛け合いが楽しく、次々に予想外のことが起こるため、全く飽きることがありません。特に、オープニングには誰もが度肝を抜かれるものが待ち受けており、人によっては「別の映画を観ちゃった?」と思ってしまうかもしれません。

劇中の出来事は、ありえないファンタジーの描写のようで、実は年老いて孤独でいる人に共通していることなのかもしれません。心の声は誰もが口にしたことがある“独り言”そのものとも言えるし、懐かしい出来事を変わったイメージで思い出す、ということもきっとあるでしょうから。なお、新型コロナウイルスの影響で公開延期されていた、同じく沖田修一監督作『子供はわかってあげない』が、2021年夏公開予定となっています。

17:『滑走路』



幼馴染を助けたためにイジメの標的となった中学2年生、将来への不安を抱える30代後半の切り絵作家。非正規雇用が原因で自死した人々のリストを見る若手官僚という、3者の物語を通して「生きる」ことの苦悩と希望を描く作品です。原作は32歳で命を絶った夭折の歌人のデビュー作にして遺作であり、その短歌のエッセンスをしっかり映画作品らしい物語に落とし込むことに成功していました。

物語の根本に自死という重い出来事があるため、芸能人の自殺報道が相次いだ今年に観ることを躊躇する人もいるかもしれません。だけど、本作は「苦しい世界」の今だからこそ、誰もが社会に不安を覚え、物理的にも精神的に分断されやすくなった今に観てほしいと心から願える作品に仕上がっていました。

18:『アンダードッグ 前篇/後編』



森山未来、北村匠海、勝地涼という、3者の俳優の魂がぶつかり合うボクシングの試合と、負け犬の物語、前後編合わせて4時間半超えのボリュームで描ききった、いわば「3倍ロッキー」と言える内容です。3人の主役それぞれ最高ですが、特に「親の七光りのお笑い芸人」を演じた勝地涼は、本当に薄っぺらでつまらない奴にしか見えません(ということは役作りが素晴らしい)。

R15+相当の過激な性描写もありますが、それもキャラクターそれぞれの境遇の過酷さや、その必死に生きようとしている“意思”のためには必要と思えるものでした。なお、本作の配信版はABEMAプレミアムにて2021年1月1日より全8話が一挙配信開始予定となっており、劇場版が3人の男たちのドラマを中心に追った内容である一方、配信版は彼らを取りまく登場人物にも視野を広げた群像劇色の濃い内容となっているそうです。

19:『ミセス・ノイズィ』



大音量の音楽を流すなどして騒音を出し続け、「騒音おばさん」の名前で有名になった2005年の奈良騒音傷害事件をモチーフとした作品です。とは言え、事件をリアルに再現する実録ものというわけでなく、物語は完全にフィクション。時代も設定も現代となり、「SNS炎上」や「メディアリンチ」の問題も盛り込んだ内容となっていました。

「騒音おばさんを映画化する」というコンセプトを聞いた時は、正直に言って“ネタ”としか思えなかったのですが、実際の本編は、中盤のある物語の“転換”に驚き、終盤で嗚咽をするほどに涙した、2020年のダークホース的な大傑作でした。ぜひ、予備知識をあまり入れることなく観てほしいです。

20:『AWAKE』



棋士の夢に破れた青年がAI将棋のプログラミングという新たな夢を見つけ、同世代の天才棋士と対決するという物語です。将棋を知らなくても楽しめる工夫の数々、吉沢亮と若葉竜也のライバル関係に燃えるという、万人向けのエンターテインメントとなっていました。

2015年に現実で行われた「将棋電王戦FINAL・第5局」というプロ棋士と将棋ソフトウェアによる戦いに着想を得ており、そのことを踏まえたクライマックスと結末が、また素晴らしいものになっていました。実際の対局をリスペクトしつつも、創作となるストーリーに多大な“意味”を持たせたことを、心から称賛します。全てに置いて「面白い映画を作る」という気持ちがほとばしっているので、将棋映画の名作として語り継がれてほしいです。


その他でオススメの2020年の実写の日本映画には、不在の(亡くなった)人を物語ることの意義を問いた『ラストレター』、京都の寮で暮らしている学生たちの戦いを描く『ワンダーウォール』、衣食住が保証された謎の町を舞台にしたSF『人数の町』、草彅剛がトランスジェンダーの苦悩と生きづらさを見事に体現した『ミッドナイト・スワン』、高校生の息子が行方不明に家族に逃げ場のない生き地獄が訪れるサスペンス『望み』、両親が急死した28歳の女性がタワーマンションに暮らし始めるドラマ『空に住む』、かつての親友への想いを巡らせる青春物語『佐々木イン、マイ、マイン』などもあります。ぜひぜひ、これらの日本映画を観て、お気に入りを見つけてみてください!

(文:ヒナタカ)

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