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2021-02-04

映画「哀愁しんでれら」と、幸せがもたらす超ダークサイド|東紗友美の"映画の読みかた"

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 児童相談所に勤める裕福ではないものの、真面目で優しい女性・小春(土屋太鳳)。

彼女は運命の出会いを果たしたエリート医師・大悟(田中圭)とのシンデレラストーリーを駆け上るが、その後少しずつ自分自身を見失っていく。

そして、ついには社会を震撼させる前代未聞の凶悪事件を起こす人物となっていく。そんな姿を描く“裏おとぎ話サスペンス”とも呼ばれる哀愁しんでれら。

あまりにも過激な役柄のため「覚悟できないまま取り組む物語ではない」という理由から主人公・小春を演じる土屋太鳳さんが3回出演を断ったことも話題に。

一方、そんな土屋さんとは反対にエリート医師を演じる田中圭さんは脚本を読み「おもしろい!」と出演を即決したそうです。

キャストの初見の反応からも伝わりますが、観る人によって180度意見が異なる可能性を持つ興味深い問題作です。

「運動会をやり直してほしい」



数年前、小学校の校長先生に包丁を突きつけて要求し逮捕された夫婦がいたという。

そんな実際に起きたモンスターペアレンツのエピソードから渡部亮平監督はこの作品のインスパイアを受けたそうです。
「アホなモンスターペアレンツだ」と決めつけてしまえばそこで終わってしまう話だけれど。
「その家族にも、愛があったのでは。」
はたから見たら奇行に見えるその行動と行き過ぎた家族愛にフォーカスして、今回のオリジナル脚本が生まれたそう。
 
この映画がとにかく秀逸なのが、愛のために狂っていく様子が、意外にも腑に落ちるという不思議な感覚を味わってしまうこと。

“幸せなものがたり”の続きを覗きたい人々に、たしかな気付きを与えてくれる映画でした。

幸せなシーンも、不幸の足音が聞こえてくるようなシーンも、上映中は終わらない緊迫感がどこまでも果てしなく続き、目を離すことができません。

急上昇、急降下するタイプの一見映画的な人生ですが圧倒的な演出力でリアリティを感じます。

 『嘘を愛した女』や『ルームロンダリング』などの話題作を続々誕生させたTSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILMのグランプリ脚本の映画化作品である『哀愁しんでれら』は、新鮮で、斬新で、映画の世界に新しい風を舞い込んでくれたダークファンタジーとも言える力強い作品、ぜひこの目でご覧ください。
 

「あの子って、誰と結婚したの?」

どれだけ成功した女性であっても、
結局女たちのシアワセのバロメーターは”良い結婚をしたか”が大きく作用した状態で計測されていたりする。

物心ついた時から、女たちは“シンデレラ”は幸せの象徴だった。

 
学校のこと、友達のこと、仕事のこと、外見のこと。成長のステージによって悩みは絶えないけれど。

最終的な悩みの共通項は、

私はシンデレラになれるのか。

 

小さいころ読んでもらってきた絵本も、

映画も、ものがたりのさいごは、

お完璧な王子様に見初められ、

優しく微笑むヒロインが主人公の物語に溢れていた。



これこそ幸せの象徴と、

ごくごく自然に刷り込まれてきた女たちの数はおそらく途方もない。

 

誰もが、

幸せな愛を手に入れたい、と。

そう願っているはず。

 

けれども覚えておかないといけないこと、

それは、王子様探しの方法でもなく、

理想の男と結婚することでもなく。

 

愛には朝日が登り、夕陽が沈むことのように

生活にしている中で、

憎しみや執着といったB面が生まれてくることもある。

 

それは、

1つの強固な愛。

それさえあれば、正常な人間でも

いくらでも狂えてしまうという事実。

 

愛は人を豊かにする、そんな側面ばかりを切り取って、煌びやかに飾り立てたような物語が、世には溢れているけれど。

 

でも愛には見えていたものを見えなくし、どんな犠牲を払ってでも死守しようとする刃のような一面も、孕んでいる。

 

時にシーソーのように反対側に負荷がかかり、戻れなくなってしまう可能性が、

誰にだってあることを。

 

愛のためと大義名分を掲げて

罪を犯す人のことを

決して許すわけにはいかないけれど、

誰にだってその可能性が潜んでいることを

この作品は示してくれる。

 

幸せを願う人こそ、

これを肝に銘じておかなければならない。




映画ソムリエ東紗友美
元広告代理店勤務。テレビやラジオでの映画紹介、各種媒体での映画コラム執筆、映画イベントMCなどが主な活動領域。映画ソムリエと名乗り、映画をコンセプトとしたカフェのプロデュースや映画祭審査員などにも携わりながら、映画業界を盛り上げる存在になるべく日々奔走中。Instagramでは毎日、映画情報を配信している。

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