映画コラム

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2021年02月05日

鬱々とした日々に捧げる不快度120%ホラー『ゴーストランドの惨劇』

鬱々とした日々に捧げる不快度120%ホラー『ゴーストランドの惨劇』



コロナ禍が始まり早くも1年経ちますが、なかなか収束の気配を見せないまま、再度の緊急事態宣言もひと月延長され、ワクチン投与も日本では未だにあやふやな状況です。

こうした陰々鬱々とした時期だからこそ、あえて救いのない不快度数の高い作品を見るのも一興でしょう。
(暗い気分のときに暗い歌を聴くと、妙にすっきりするのと同じ理屈です)

たまさかそういった不快度数100%、いや120%といってもいいトラウマ的バイオレンス・ホラー『ゴーストランドの惨劇』(18)がSVOD化され、全国に配信されています。

この作品、あまりのむごさゆえ逆にリピーターが続出するという、人間の不可思議な心理を露にしてくれる作品でもあるのでした!

おぞましき過去をひきずる
双子の姉妹の更なる地獄



 
『ゴーストランドの惨劇』は、シングルマザーのポリーン(ミレーヌ・ファルメール)が叔母の家を相続し、10代の双子の娘ヴェラ(テイラー・ヒックソン)とベス(エミリア・ジョーンズ)を連れて、そこに移り住むところから始まります。

姉のヴェラは外向的で明るい現代っ子、一方で妹のベスは内向的でラブクラフトを崇拝しています。

そんな一家が引っ越してきた夜、新居に二人組の暴漢が押し入ってきました。

二人の娘を護るため、ポリーは必死に反撃し、暴漢をめった刺しにしてしまいますが、その光景を姉妹は目撃していました……。

それから16年後、妹のベス(クリスタル・リード)は家を出て小説家として成功し、家庭も築いて幸せに暮らしていました。

が、そこに姉ヴェラ(アナスタシア・フィリップス)からの電話が……。

ヴェラは精神を病み、今も母と一緒にあの惨劇のあった忌まわしき思い出の家に暮らしています。

やむなくベスは帰省せざるをえなくなるのですが、そこで彼女を待ち受けていたものとは……!?

ニュー・ウェイブ・オブ・フレンチ・ホラー”の旗手




本作はネタバレ超厳禁の作品なので、これ以上のストーリーを記すわけにはいきません。

ただし、この後さまざまな仕掛けがめぐらされて、見る者を悪夢の迷宮へ誘ってくれることだけはお約束いたします。

全編にわたってかなりの伏線と謎が張り巡らされていますので、おそらく一度見ただけではすべてを解き明かすことはできないでしょうが、だからこそ何度でも見直したい欲求に駆られてしまいます。

これほど戦慄のトラウマ映画はないと思えるほどなのに……。
(いや、だからこそかもしれません!)
 
家の内装などの美術、そこに置かれた人形などの不気味さも特筆的で、本作のおぞましさをさらに増幅させる機能を果たしています。

本作の監督パスカル・ロジェは、2000年代初頭に台頭した“ニュー・ウェイブ・オブ・フレンチ・ホラー”の旗手のひとり。

2004年にホラー映画『MOTHER マザー』(日本劇場未公開)で監督デビューを果たした彼は、続いて2007年に『マーターズ』を発表。

これは幼い日に監禁虐待を受けた少女と、その後の彼女を支え続ける少女にもたらされる10数年後の地獄を描いたもので、その残虐シーンのオンパレードは世界中に賛否両論を巻き起こしました(その衝撃ゆえ、2015年にはアメリカでリメイクされています)。

一転して連続幼児失踪事件の真相を描くサスペンス・ホラー『トールマン』(12)では、ストーリーテラーとしてのサスペンスを披露。

そして本作は前2作の長所を巧みに融合させながら、究極の地獄絵図を披露してくれています。

このように、今回は煽るようなことしか記せませんが、煽ることでしかこの映画の魅力をネタバレなしに語ることは、もはや不可能!

何はともあれ、腹を括っての鑑賞をお勧めいたします!

(文:増當竜也)

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