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2021-02-06

『樹海村』レビュー:まるで見ているだけで呪われそうな臨場感!

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増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

昨年2月、コロナ禍に伴う非常事態が始まりつつあった時期に公開されるも、自粛期間に突入するまでクリーンヒットを飛ばした(何と興収14億円!)清水崇監督の『犬鳴村』。

その勢いに乗せて、清水監督が新たな路線”恐怖の村”シリーズを目指すかのように取り組んだ意欲作が、この『樹海村』です。

そう、あの富士山西北麓に広がる青木ヶ原樹海を舞台に、日本独自の風土に根差した新たな恐怖が描かれていくのでした!

コトリバコを見つけた姉妹と
樹海とのおぞましき関係性



古くから自殺の名所(?)として知られ、さまざまなオカルト的な都市伝説が横行する富士の樹海。

その中に、呪いたい人に送ると確実にその相手は死に至らしめるという“コトリバコ”というものがあります。
(ネット検索してはいけない言葉としても伝えられている存在。特に妊娠が可能な女性や子どもには強烈な呪いが降りかかるそうで、“子取り箱”とも称されています)

樹海の監視員・出口(國村隼)らの目を盗むように、能天気にこの地へ入り込む連中は後を絶ちません。

今日もまた明るいボッチ系YouTuberアキナ(大谷凜香)が配信のため、樹海に入り込んでいきましたが……。

さて、そんなさなか、鳴(山口まゆ)と響(山田杏奈)の姉妹、鳴の彼氏で寺の息子の真二郎(倉悠貴)が、美優(工藤遥)&輝(神尾楓珠)の新婚カップルの引越しの手伝いをしていた最中、不可解な箱を発見します。

その直後、家の大家が交通事故死……。

そう、これこそ凶悪な呪いの箱“コトリバコ”なのでした。



「お姉ちゃん知ってる? この箱が置かれた家はね、みんな死んで家系が絶えるの……」

引きこもりがちの響は、なぜかコトリバコの秘密を知っているようで、不可解な言葉を連発することで、鳴に嫌悪感を抱かせます。

ところが、まもなくして鳴と響の周囲の者たちが次々と変死を遂げていきます。

また同時期、樹海では行方不明者が続出……。

やがて姉妹は運命に吸い寄せられていくかの如く、樹海の中に存在すると言われる“樹海村”と向き合わざるを得なくなっていくのでした……。

日本古来の村の因習
犬神憑き、そして樹海



本来“樹海村”とは「富士の樹海の奥で自殺し損ねたり、今さら外の世界に戻っても仕方がないと思う人たちが集って作られた集落である」という都市伝説から生まれた異界の地として知られています。

もっとも本作の“樹海村”はその域に留まらず、もっと哀しくも辛くおぞましい設定が用意されています(それは見てのお楽しみ!)。

前作『犬鳴村』は日本に古来より伝わる“犬神憑き”とも呼応する恐怖の秘境が、今も日本の奥深くに存在しているという仮説のもとで、さまざまな惨劇が繰り広げられていきました。

そもそも日本特有ともいえる閉鎖的な村社会は、これまで数多くの恐怖や猟奇的かつファンタジックな民話をもたらしてきています。

映画だけ採っても『獣人雪男』(55)『大怪獣バラン』(58)『九十九本目の生娘』(59)『多羅尾伴内 鬼面村の惨劇』(78)『丑三つの村』(83)など多数存在します。

1970年代半ばより大ブームとなった横溝正史ミステリ小説の数々も、村の古き因習を巧みに利用した殺人事件のものが多くうかがえます。



横溝小説の映画化の中でも、1977年の野村芳太郎監督『八つ墓村』は、祟りを利用した連続殺人事件の真相が、実は本当に祟りだったのではないかと思わせる作りになっていたことで、原作ファンの賛否両論を生んだものでした。

また同年には犬神憑きを題材にした伊藤俊也監督の社会派ホラー『犬神の悪霊(たたり)』も作られています。



一方、樹海をモチーフにした映画となると、『樹の海』(05)や『青木ヶ原』(13)など意外とヒューマニズムに基づいて、自殺しようとしている人々の心理を露にした作品も目立ちます。

もともと松本清張の小説や、それを原作とする同名映画(60)およびTVドラマ(61・64・70年など多数製作)『波の塔』の中で「青木ヶ原樹海は自殺の名所」と紹介したことから、かの地は有名になったという説もあります。



樹海は海外でも知られる存在で、『追憶の森』(15)は渡辺謙とマシュー・マコノフィ共演のヒューマン・ファンタジー。かたや『JUKAI-樹海-』(16)は、妹を探しに樹海に足を踏み入れたアメリカ人の恐怖体験を描いたホラー映画でした。

鬱蒼とした大自然の中で
鳴り響く姉妹の絆



さて、今回の映画『樹海村』ですが、もちろんジャンルとしてはホラーであれ、さらにダーク・ファンタジーとしての色が強められている感もあります。

姉と妹、そしてその母(安達祐実)との切っても切れない絆、その出自などをミステリアスに描出しながら、さまざまな怪異事件をこけおどし風に見せるのではなく、むしろ日常の延長のように淡々と描いているのが、逆に見る者の胸に恐怖を植えつけていきます。



清水崇監督といえば『呪怨』シリーズが代名詞的存在ではありますが、あの頃のお化け屋敷的ショッキング描写は前作以上に抑え目で、静けさに満ちたテイストがある程度貫かれています。

逆にそのほうが怖くなるのが人情というもので、あたかもこの映画を見続けていくと、そのうち自分も呪われていくのではないか……といった背筋が凍りつくような想いにまで囚われていくのでした。

樹海の中の奥深い森の緑の濃さは、単に美しいだけでなく、どこかしら狂気の念をも感じさせます。

人は鬱蒼とした大自然の中に居続けると、次第に常軌を逸してしまうといった説もあります(その伝にのっとって作られた映画が、柳町光男監督の『火まつり』でした)

その鬱蒼とした大自然の樹海の中で、鳴と響の姉妹はその名の通りに鳴り響き合うことで、自分たちの呪われた宿命の因果を切り崩すことができるか否か?



その意味でも今回の主人公姉妹を演じた山口まゆと山田杏奈という、このところ若手女優の筆頭として活躍中の二人の存在感がここでも映画を映え渡らせています。

と同時に、彼女たちの母を演じる安達祐実のはかなげな風情と、一転して樹海の安全を守る監視員役の國村隼のいつもながらのいぶし銀の貫禄は、作品にさりげなくも大きくインパクトを与えてくれています。

クライマックスからラストにかけての展開は人それぞれ好みが分かれるかもしれませんが、私自身はそこに至るまでの呪いの恐怖をしかと堪能させていただきました。

それにしても清水監督、この作品が成功したら、次はどのようなおぞましき『村』を映画化してくれるのでしょうね!

(文:増當竜也)

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