【閲覧注意】映画ライターがコラムを1本書き上げるまでにかかるコスト
※本記事は【閲覧注意】と謳っている以上、ここから先のリアクションには責任は持てない。心と時間に余裕がないなら今すぐ記事を閉じるべきだ。
「映画ライターって好きな映画観て何か書けば金もらえるんでしょ? いい仕事だねぇ!」
映画について何かを書き、原稿料を稼いでいる方ならば、一度は言われたことがあるのではないだろうか。私もある。
「いやぁそうなんですよ! 映画観て適当ブッこいてりゃ映画とポップコーン代くらいにはなりますからね! あはははははは!」
言われる度にこう返してきたのだが、適当に書いて金を貰えはしないし、好きな映画について書けるわけでもない。毎度、心中では井筒和幸が「こちトラ赤字じゃ」と叫んでいる。
そう、映画について書くためには(少なくとも私の場合は)結構コストがかかるのだ。以下に実例を示す。(コロナ渦以前の話です。念の為)
まず映画館に行く(試写・オンライン視聴などもあるが)。
この時点で交通費がかかっている。
館内でもパンフレットや糧食の確保などによる支出は止まることを知らない。
上映後、恵比寿または新宿三丁目のバーに行き、1杯目を飲みながら鑑賞作品を反芻する。
忘れないうちにメモもとっておく。
大体3杯目くらいになると常連がやってくるので、映画の感想を話す。
相手の反応を見てどのような切り口が面白いのかを探るのだが、5杯目くらいからの話はほぼ記憶にない。
会計を済ませてもう一軒行く。行きつけの店同士が近いのだから仕方がない。
店を出る頃にはすっかり終電を回っているのでタクシーを捕まえる。
帰宅後は映画の情報をまとめようとするも、チューハイの缶を開けた2分後には気絶する。
翌日、映画や会話の内容が思い出せず、頼みの綱であるメモも悪筆すぎて解読できない。
なのでもう一度映画を観に行く。
これを2回程繰り返し、監督の過去作、インタビュー、テーマに関する関連書籍などをできるだけ読み込む。
そしてやっと原稿を書き始める。8割ほど書けたら飲みに行く。
環境を変えて原稿を読むためである。泥酔して読んで面白かったら、その原稿は普通である。
翌日、二日酔いで絶不調な状態で読み、それでも面白かったら悪くない。推敲し入稿する。
と、この程度のコストがかかるのだが、たぶん原稿料の5倍くらいは金がかかっている。
無駄な支出は何一つないものの、自分で書き出しておいて驚いた。
今から本原稿を確認するため家で酒を飲む。
安い。
これでは儲かってしまうではないか。
コロナは私のコストをカットし、豊かな時間を奪った。
少しでも速く、アホのようにコスパの悪い世界の復活を願う。
(文:加藤広大)
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