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『ラスト・フル・メジャー』レビュー:オールスター・キャストによるヴェトナム戦争秘話

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戦後50年の時を必要とする?
戦争に対する「人間」の復権



本作はヴェトナム戦争終結からおよそ30年後に明らかになったひとりの兵士の真実を、そこからおよそ20年の時を経て映画化したものです。

アメリカの敗北で終わったヴェトナム戦争ですが、この戦争に携わった兵士たちの多くは帰国後さまざまな差別に遭い、またPTSDに苦しみ続ける者も多数いました。

(シルヴェスター・スタローン主演の人気戦争アクション映画『ランボー』シリーズも、1982年に作られた第1作[はランボー』は帰還兵の差別と迫害をモチーフにしたものです)



映画もまた、戦時中は『グリーン・ベレー』(68)のような戦意昂揚映画が作られて賛否の渦が巻き起こったり、海外で『ベトナムから遠く離れて』(67/フランス)『ベトナム』(69/日本)などの反戦運動映画が作られたりと、激しい状況が見られたものでした。



1970年代は『ソルジャー・ボーイ』(72)や『タクシー・ドライバー』(76)『ローリング・サンダー』(77)『帰郷』(78)など帰還兵の苦悩を背景とする作品が多く見受けられます。



そして1980年代半ばに入ると『プラトーン』(86)の大ヒットに伴うヴェトナム戦争映画のブームが起きます。

もっとも今振り返ると、あの当時はまだまだ生々しい感情が先に立った作品が多くを占め、冷静な目線であの戦争を見据えたものの登場を待つには、やはり半世紀ほどの月日が必要だったのかもしれません。



その中で『ラスト・フル・メジャー』は、戦争そのものの是非はさておき、そこに携わった多くの者たちの献身までも無為にしてはいけないというスタンスが敷かれています。

そして、ひとりの兵士の勇敢な行動を、あくまでも「人間」として讃えようという、さらなる多くの人々の行為が讃えられていきます。

戦争映画は数々の無為の「死」を描いてきましたが、そのひとりひとりに「生」があったことまで見逃してはいけないことを、本作は真摯に訴えています。

また、それを具現化するために今回多くの名優たちが参加していることも大きな特徴でしょう。



ウィリアム・ハート、ダイアン・ラッド、エイミー・マディガン、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン……!

特に、先ごろ惜しくも亡くなったクリストファー・プラマーの、息子の名誉を信じ続ける父親の姿は、もう彼が画面に映っているだけで涙を禁じ得ないほど。

また本作が遺作になったピーター・フォンダは、かつて『イージー・ライダー』(69)などアメリカン・ニューシネマの旗手として君臨してきた事実を鑑みると、大いに感慨深いものもあります。

ハノイのシーンで『ディア・ハンター』(79)のジョン・サヴェージが登場したときは、それだけで鳥肌ものでした。



こうした実力派のオールスター・キャストに支えられながら、本作はアメリカの、というよりも人間そのものの復権を問うていきます。

この問いかけに至るまで50年の月日が必要とされること自体、戦争という惨禍が人々の心にもたらす闇の深さまでも改めて思い知らされますが、そこを乗り越えていこうという姿勢もまたアメリカ映画ならではの賜物でしょう。



さて、昨年はフランシス・F・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(79)デイレクターズカット版がアイマックス上映され、スタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』(87)が4KUHDソフト化されました。

また4月には1980年代ヴェトナム戦争映画ブームのさなか、知る人ぞ知る“隠れた名作”としての誉れ高い『ハンバーガー・ヒル』(87)がリバイバルされます。

今また再び、ヴェトナム戦争を見直そうという気運が、自然に高まってきている証左なのかもしれません。

(文:増當竜也)

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