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「シン・エヴァ」をより深く楽しむためにおすすめの一冊。虚構を信じる力が人類を発展させた

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2021年3月8日(月)、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されました。様々な意見が出てくるでしょうが、ここではちょっと角度を変えて、『シン・エヴァ』をより深く楽しむためのおすすめの一冊を紹介します。

と言っても、この本は『エヴァ』シリーズに直接の関係はありません。そして、庵野秀明監督がこの本を参考していると明言しているわけでもありません。ただ、庵野監督の抱えるテーマを独自の視点で深堀りしてくれるのです。



おすすめしたいのは、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの世界的ベストセラー「サピエンス全史」です。

この本は、庵野秀明監督が挑み続けるテーマ「虚構と現実」について、人類史の大きな視点から重要な示唆を与えてくれます。

本書は、人類がなぜ地球の食物連載の頂点に立つことができたのかを説明しています。ハラリ氏は、約7万年前、人類史にとっても最も大きな革命、「認知革命」が起きたと言います。

認知革命とは、人間が虚構を信じる力を得たことを指します。例えば、私達は貨幣には価値があると信じています。しかし実際には、貨幣はただの紙切れや金属の塊に過ぎません。金銭的価値は実際には虚構で、みんなが信じることではじめて価値が発生するのです。法律もそういうルールがあるのだとみんなが信じる虚構に過ぎません。他の動物には貨幣の価値も法律も通用しませんよね。人間は、虚構を信じて突き進めるからこそ、文明を発展させることができたのだとハラリ氏は主張しているのです。

ハラリ氏は、本書の中で虚構を「物語」と頻繁に言い換えています。宗教や神話も物語と言えるでしょう。人間は、認知革命によって、神や神話を仲間に語ることができるようになり、それを信じることで人間は団結することができるようになありました。虚構によって集団が意思統一され、ただの動物の群れ以上の力を得たのです。



映画も虚構です。そもそも虚構の映画を観て泣いたり笑ったりできるのも、この認知革命によって人類が虚構を信じる力を得たおかげと言えます。そして、『エヴァ』の登場人物たちもそれぞれに信じる虚構があり、その虚構の実現のために動いているのだと解釈できるかもしれません。これはあらゆる物語がそういう構造になっていると言えるし、人間の行動原理全てがそうなっているとも言えます。

現実に向き合うことは大切です。しかし、同時に虚構を信じるからこそ人間は人間でいられるのです。本書を読むと、虚構も同じく重要なのだということに気付かされます。なぜなら、貨幣や国家や宗教など、人類社会の多くが虚構の上に成り立っているからです。

庵野監督がどんな現実と向き合い、どんな虚構を信じて「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を作ったのかを想像してみると一層面白く見られると思いますので、ぜひ読んでみてください。

(文:杉本穂高)


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