『ゾッキ』レビュー:竹中直人×山田孝之×齋藤工が仕掛けた素っ頓狂な“寄せ集め”快作!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」
竹中直人、山田孝之、齋藤工といった才人の存在を知らない映画ファンは、ほとんどいらっしゃらないことでしょう。
そしてこの映画『ゾッキ」は、何とこの3人が共同監督した作品となります。
なるのですが……ところで、これってどんな映画?
そもそも“ゾッキ”ってどういう意味?
正直、おわかりになってない方も多いことでしょう。
ならば、ちゃちゃっと検証していきましょう!
監督もキャストも寄せ集め(=ゾッキ)
しながら面白い映画を!
映画『ゾッキ』は、「音楽」などでも知られる大橋裕之の同名漫画を映画化したものです。“ゾッキ”にはいくつか意味がありますが、ここでは古本業界の用語にもなっている“寄せ集め”といった意味合いで捉えるとわかりやすいことでしょう。
原作漫画も短編エピソードの“寄せ集め”で成立しており、その映画化も同様。
原作に準じながら、竹中直人、山田孝之、齋藤工がそれぞれのエピソードを監督しています。
そもそも企画の発端はアニメーション映画『音楽』(20)にも声の出演を果たしている竹中直人が大橋漫画に魅了され、その中で「ゾッキ」を映画化したいと思い立った瞬間、自身の単独演出ではなく複数の監督で1本の映画として成立させるのが面白い! と閃いたのだとか。
そしてそのときパッと脳裏に浮かび上がったのが、山田孝之と齋藤工だったのだそうです。
つまりは天性の閃きで、山田&齋藤の両名を寄せ集めて(=ゾッキ)映画を作ろう!と。
さらにはキャスティングも吉岡里穂、松田龍平、鈴木福、倖田來未、松井玲奈、國村隼などなどユニークな面々を“寄せ集め”!
かくして日常世界ではありながらもどこか不可思議な、もはやジャンル分けすら不可能なワンダーランド、簡単にいってしまえば素っ頓狂な(!)映画が出来上がってしまったわけなのです。
小さなエピソードの積み重ねで
醸し出される「秘密」と「嘘」
最初に申したように、本作は小さなエピソードの寄せ集めで成り立っています。
祖父(石坂浩二)から「秘密は大事に、たくさん持て」と言われた孫娘(吉岡里穂)。
あてがないというアテを頼りに、ママチャリで南を目指す旅に出る男(松田龍平)。
やっとできた友達(九条ジョー)から“存在しない空想上の姉”に恋されて戸惑う少年(森優作)。
消息不明の父(竹原ピストル)と体験した幼い日の奇譚を思い出す青年(渡辺佑太朗/幼い頃は潤浩)。
そしてDVDレンタル店でアルバイトしている少年(鈴木福)が知る、ある事件……。
これらのエピソードは一見独立したオムニバス仕立てのように見せておきながら、実はどこかで連結しているという妙味を示しながら、あくまでも1本の映画として屹立させています。
また、それらの積み重ねから、いつしかこの地球は「秘密」と「嘘」で回っていることが示唆されつつ、そのことを否定するのではなく、飄々とした温かさで包み込んでくれています。
これは原作そのものの持ち味であるとともに、今回の仕掛人である竹中直人の資質とも大いにリンクしたものであることは、これまでの竹中監督作品を見続けてきた方なら一目瞭然でしょう。
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(C)2021「ゾッキ」製作委員会