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『風が踊る』レビュー:名匠ホウ・シャオシェン監督の原点が垣間見えるラブ・ストーリー

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

1980年代台湾ニューシネマの旗手として世界的にその名を知られ、2020年に監督生活40周年を迎えて、第57回金馬奨で終身成就奨を受賞した侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督。

わが国でもこれを記念して、現在日本で上映可能な彼の監督作品に加え、出演作やプロデュース作まで網羅した大回顧展「台湾巨匠傑作選2021 侯孝賢監督40周年記念《ホウ・シャオシェン大特集》」が4月17日より東京・新宿K’s cinemaほかにて順次開催されます。

そして今回の大きな目玉として挙げられるのが、ホウ監督のデビュー2作目となる『風が踊る』デジタルリマスター版の特別上映でしょう。

『風が踊る』は台湾ニューシネマが勃興していく直前の1981年にホウ監督が取り組んだデビュー2作目にあたるもので、今回はデジタルリマスターにて上映。これまでなかなか見られる機会のない作品だっただけに今回は快挙ともいえるものでしょう。

ストーリーは女性カメラマン(フォン・フェイフェイ)と彼女の恋人(アンソニー・チャン)、そして事故で視力を失くした青年(ケニー・ビー)が織り成す三角関係を、愛らしくもさわやかな青春歌謡映画仕立てで描いたもの。

主演の3人はホウ監督のデビュー作『ステキな彼女』(80)にも出ていたトリオで、前作同様に歌謡映画としての作りがなされています(ヒロインを演じるフォン・フェイフェイは当時の台湾で国民的人気を博していた歌手でした)。

個人的には1970年代の松竹アイドル歌謡映画の懐かしいノリを彷彿させられたりもしますが、冒頭のロケ地となる澎湖島の一連のシーンからして、田舎と子どもたちを素朴に描くホウ映画の味わいが満ちあふれていて、そこには既に子どもをわんぱくに捉えることに長けた小津安二郎映画への傾倒が好もしくうかがえます。また同地は『風櫃の少年』(83)にも登場します。

その後舞台は台北に移りますが、これも都会と田舎の対比を好むホウ映画ならではの趣向。さらには後の『冬冬の夏休み』(84)同様、ここでも《仰げば尊し》の歌が日本とは異なる替え歌の歌詞で印象的に歌われます。

総体的に可愛らしい作りの中、もともと台湾本土に住む内省人と、国民党政府の移転に伴い中国大陸から台湾に渡った外省人(ホウ監督の家族も外省人でした)との微妙な関係性まで見え隠れさせていく妙味。

さらには劇中に登場する撮影風景や、カメラマンというヒロインの設定などから“キャメラと映像”を意識させつつ、ズームを効果的に用いた長回し撮影が本作をより映画的なものとして機能させていきます。

こうしたホウ監督の原点がいろいろと垣間見える本作以外にも、今回の特集上映では『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98)4Kリマスター版の上映や、フランスのオリヴィエ・アサイヤス監督によるドキュメンタリー映画『HHH:侯孝賢』(97)なども挙げられます。

上映スケジュールなどの詳細は公式サイトでチェックの上、ぜひこの機会にホウ・シャオシェン・ワールドに触れてみてください!

(文:増當竜也)

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