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『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』レビュー:スパイだった“東ドイツのボブ・ディラン”の数奇な人生



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

このところ東ドイツ時代の闇や苦悩の歴史を訴えるドイツ映画が数多く日本で公開されていますが、本作もその中の1本です。

1980年代に“東ドイツのボブ・ディラン”と謳われていた実在のシンガーソングライター、ゲアハルト・グンダーマン(1955~1998年)が、実は東ドイツの秘密警察・諜報機関である国家保安省、通称“シュタージュ”のスパイであった事実を基に、一人の人間の人生における理想と闇の矛盾を訴えていきます。



昼間は労働者として汗水流して働き、夜はステージに上がって自作の歌を披露し続けるグンダーマン(アレクサンダー・シェーア)は、東ドイツを理想の国にしていきたいと願う愛国者であったがゆえに、シュタージの甘い罠にはまり、“理想の実現”のために同僚や友人などを監視していきます。

しかし、やがてベルリンの壁が崩壊してドイツの東西統一が成されて以降、数々の著名人がシュタージに協力していた事実が明らかになっていく中、彼もまた衝撃の事実を知らされるのです……。



統一以前と以後、ふたつの時代を交錯させながら進む構成ということもあって、当時のドイツ史に疎い方などは少しおさらいしてから鑑賞に臨んだほうが得策ではあります。

ただし、人の理想が国に利用されていく悲劇と、そうした闇の要素を批判はしてもそこに携わった人々の人生までも非難することは避けようと腐心しているアンドレアス・ドレーゼン監督の演出姿勢は大いに認めたいところ。

当時を知る多くのドイツ国民にとってグンダーマンの生きざまは決して他人事でなく、いつ自分にふりかぶってくるかもわからない恐怖と不安を肌で体感してきた世代ならではのシンパシーを得ることに成功している映画であるともいえるでしょう。

本作は2019年度のドイツ映画賞で作品・監督・脚本・主演男優・美術・衣装の6部門で最優秀賞を受賞。

主演のアレクサンダー・シェーアはグンダーマンの楽曲15曲を自身で熱唱し、「本物が乗り移ったかのような神がかり演技」として本国で喝采されています。

そしてドイツでは2018年にホイルスヴェルダ市の文化センターに「グンダーマン・ネットコントロールセンター」が開設され、今も多くの人々が訪れているとのことです。

(文:増當竜也)

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