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『タイタニック』「7つ」のポイント解説〜当時の格差社会から読み解く〜


5:自由なジャックからの贈り物



自由奔放で理想的な男性のようにも見えるジャックですが、同時に未熟でもあります。その象徴と言えるのが、船頭に立った時に「世界は俺の物だ(I'm the king of the world)!」と叫んだこと。客観的にみれば、乗っているタイタニック号そのものがバリバリの格差社会ですし、まだ世界も夢も何も我が物にはできているはずがありません。しかし、ジャックは「自由」という圧倒的なものをすでに手に入れているのですから、無邪気にもそのことを心から喜んでいるとも言えるでしょう。

だからこそ、ジャックがローズの自殺を止めてから、三度船頭に来て、ジャックが後ろからローズを抱き、ローズが腕を大きく広げて風を感じる、という名シーンが感動的になっています。檻の中に入れられたような生活で絶望していたローズが、ジャックから「自由」の瞬間を与えられ、鳥のように飛ぶ喜びを知ったのですから。

ジャックは「人生は贈り物。だから、それを無駄にするようなことはしない」と言っていました。彼は未熟で無邪気だからこそ、格差なんか全く気にすることなく、あらゆることを諦めていたローズに、自由という贈り物を与えた。身分違いの悲恋は元より、そのことにも大きな感動がある物語になっていたのです。

また、ギャンブルで勝って出発寸前のタイタニック号に乗り込む根なし草のジャック、母から政略結婚を強要される上に婚約者から支配されそうになるローズというキャラクターは極端にも思えますが、前述してきたような当時の移民たち、および上流階級の者たちの普遍的な姿だったのかもしれません。ジャックとローズは架空の人物ですが、実際のタイタニック号に彼らと同じ境遇の若い男女がいなかったとは、誰にも言えないでしょう。だからこそ、多くの乗客の命が理不尽に奪われてしまうという悲劇が、より際立つのです。

6:実在の人物である「不沈のモリー」とは



後に「不沈のモリー」と呼ばれることになる、ふくよかな女性であるマーガレット・ブラウンは実在の人物です。ローズの母は彼女のことを「成り上がり者」と侮蔑に捉えていましたが、実際にモリーは貧しい男性と結婚していたものの、後に夫の鉱山工学の技術を生かして金と銀を発掘し富裕となったため、上流階級の人々にはとっては除け者の忌々しい「ニューマネー」であったそうです。モリーが憧れていた上流社会に仲間入りできたのは、タイタニック号の生存者としての名声が高まった後のことでした。

そんなモリーは、劇中ではジャックに好意的であり、礼服を貸してあげたり、食事のマナーを耳打ちしたりするなど、影ながら応援をしていました。それは、彼女自身の出自が貧乏であり、自分の姿を重ね合わせていた、夢を手にしてほしいと心から願ったためでもあったのでしょう。彼女こそ、当時の階級社会(それが凝縮されたタイタニック号)の排他的な価値観だけに囚われない、真に「平等」な人物であったと思うのです。

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