映画コラム

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2021年06月10日

『Mr.ノーバディ』レビュー | “舐めてた相手が実は殺人マシンでした”系映画の最新系

『Mr.ノーバディ』レビュー | “舐めてた相手が実は殺人マシンでした”系映画の最新系



“舐めてた相手が実は殺人マシンでした”系映画は実は昔からありました。

チャールズ・ブロンソンの『狼よさらば』シリーズや、『ランボー』シリーズ、タランティーノが自分の映画会社の名前に引用した『ローリング・サンダー』などのベトナム帰還兵モノもそうです。
マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』などもカウントしていいかもしれません。

しかし、ここ数年のブームを創り上げたのはリーアム・ニーソンの『96時間』シリーズやデンゼル・ワシントンの『イコライザー』シリーズと言って良いでしょう。
そんな“舐めてた相手が実は殺人マシンでした”系映画の進化系・決定版が『Mr.ノーバディ』です。

何より素晴らしい主役の配役

何より素晴らしいのが主役にボブ・オデンカークをキャスティングしたことでしょう。



本人には申し訳ないのですが、映画やドラマを隅々までチェックしている人はともかくとして、一般的な人にとっては(少なくとも日本では)“えっ!誰?”という様な存在です。この無名性が今回は見事にはまりました。

このオデンカーク演じるハッチは朝、ランニングを欠かさず、バス停のひさしで懸垂をしたりしてなんとなく鍛えているのかな?という描写もなくはないのですが、交通手段は路線バスで、会社(工場)でも肉体労働側ではなく事務方、毎週火曜日のゴミ出しはたいてい間に合いません。
家の中でも幼い娘はまだなついてくれますが、年頃の息子とは会話も少なく、妻とはダブルベッドの間にクッションで境界線を敷かれている有様、何処からどう見てもさえない中年です。

ところが、この男、ただものではなかった。国防省の資料はほとんど黒塗りで、いざこざを起こしたロシアンマフィアの情報分析官は謝礼をボスに投げ返して関わり合いことから逃げようとするほどの過去の持ち主でした。

いざ、ハッチにスイッチが入っても、本当に大丈夫なのかと感じさせてしまうほどハッチというキャラクターは超人的ではありません。
ただものではないという表現がありますが、序盤のハッチは“ただもの”にしか見えません。特別なものではない(ノーバディ)感があまりにも印象的だったので、いざスイッチが入ってからのギャップに見事にやられてしまいました。

思えば、『96時間』のリーアム・ニーソンは190センチを超える巨漢。『イコライザー』のデンゼル・ワシントンも185センチ以上の巨漢。しかも二人ともあの隠しようがないオーラ。どう考えても最初から危険な香りがします。
キアヌ・リーヴスの『ジョン・ウィック』シリーズもこの系統の作品にカウントするという意見もありますが、キアヌも186センチあって、佇まいからしてどう見ても普通ではありません。

対して、『Mr.ノーバディ』のボブ・オデンカークは身長175センチと日本人の平均身長よりほんの少し高いくらい。まぁどこにでもいそうなオッサンです。

これが、まさか“舐めてた相手が実は殺人マシンでした”とは絡んできたロシアンマフィアも思わなかったでしょう。

映画はまさに「キャスティングが命」なのだと改めて感じる一本



ちなみに共演には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクことクリストファー・ロイド、ラッパーのRZA、『ワンダーウーマン』のコニー・ニールセンなどなど意外と豪華なメンバー揃っています。

プロデュースには『ジョン・ウィック』『アトミック・ブロンド』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のデヴィッド・リーチが名前を連ねていたりするので、バリバリのアクションを見せてくれます。

主演のボブ・オデンカークもプロデューサーとして作品に参加。元々が普通の人に近かったと言うことで、本作のためになんと2年間もトレーニングをしたという逸話も残っています。

(文:村松健太郎)

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