2021年06月28日

『ナポレオンと私』:アジア代表アクション・スター武田梨奈だから体現できたラブ・ストーリー

『ナポレオンと私』:アジア代表アクション・スター武田梨奈だから体現できたラブ・ストーリー



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

6月24日、香港の日刊英字新聞「サウスチャイナ・モーニングポスト」電子版で「今、活躍しているアジアのアクション・スター10人」という記事が掲載され、その中でドニー・イェンやトニー・ジャー、マ・ドンソクら錚々たる面々の中に女性で唯一、そして真田広之と合わせて日本代表として武田梨奈が選出されました。

『ハイキック・ガール!』(09)でデビューして以降、特にアジア圏アクション女優としての評価が国際的な域にまで達して久しい武田梨奈ですが、同時に「アクションもまた俳優としての演技のひとつ」とでもいったスタンスでさまざまなジャンルの作品も挑戦し続けており、それが彼女の存在感にさらなる深みを与えているようにも思えてなりません。

それこそ大先輩の真田広之も同じスタンスで活動し続けてきたことで、今やハリウッドで活躍できる数少ない日本人俳優として屹立していますが、その伝でも武田梨奈の今後により一層の期待を寄せてしまう次第です。



本作『ナポレオンと私』もアクションどころか、何とまもなく三十路を迎えようとしている気弱なOL春子(武田梨奈)の前にゲームアプリのイケメン・ナポレオン(濱正悟)がスマホから飛び出し現れ、彼女の恋を応援するという、いってみれば妄想系恋愛映画であります。

しかし、文字通り「強い女性」を演じることに長けた武田梨奈だからこそ、逆に「弱さ」も知っているとでも言いますか、内気で心弱い女性の機微に共感しつつ、妄想と現実の狭間のファンタジーを決して否定することなく、その上で自らの体躯を以って演じることで彼女たちにエールを贈ろうというスタンスが巧みに図られているので、浮足立っているようで意外にリアルな情感が映画全体から巧みに醸し出されているのです。

(一方で、ナポレオンのさりげない仕草ひとつひとつも、きっと世の中の女子はこういうことをされたら嬉しいんだろうなあと一瞬思いつつ「でもそれってイケメンだから成立することであって、俺とかが頭ポンポンとかやった日にはセクハ……」などと溜息をついてしまう小生のようなボンクラ男子はさておき……!?)

いつまでも映画のような恋に憧れていて良いのかどうかのジレンマも理解しつつ、別段30歳が女の人生の節目と決められているわけでもなし、気持ち次第でどうにでも人生の意識は変えられることを優しく教えてくれる小品ながらも好印象の作品なのでした。



何よりも「アクション」とは「活動」することと熟知した、武田梨奈ならではの真摯なラブ・ストーリーであるともいえるでしょう。

(でも、本当はそろそろ爽快なアクション映画にもお目にかかりたいもの。「武田梨奈の主演でアクション映画をやって、世界に打って出よう!」などという、気骨のある日本のプロデューサーとかいないものでしょうか!)

(文:増當竜也)

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