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映画『ムーンライト・シャドウ』レビュー:吉本ばななの生と死の世界観を幽玄なる映像美で映画化!



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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

吉本ばななの小説「キッチン」は1989年に森田芳光監督のメガホンで、1997年には日本&香港の合作でそれぞれ映画化されていますが、本作はその「キッチン」を表題作とする連作短編集に収められた同名短編小説の映画化であり、実は吉本ばななが日本大学の卒業制作として記したという、いわば彼女の世界観の原点的存在をワールドワイドな制作スタンスで映画化したものとも捉えられるでしょう。

キャストは原作に沿って日本人で占められていますが、監督はマレーシア出身のエドモンド・ヨウ。

原作は世界30か国以上で翻訳されてますが、ヨウ監督もまた吉本ワールドに魅せられたひとりでした。

一方で、彼は消息不明となった双子姉妹の妹の遺体が発見されたことで日本へ赴く姉の心の彷徨を描く『Malu 夢路』(20)を発表するなど、日本ともゆかりの深い人物でもありますが、生と死の境界線をあやふやにした世界観は今回も俄然健在……というよりも、本作はもうそのものズバリの生者と死者の繋がりがメイン・モチーフとして見事に貫かれています。



死んでしまった大切な人にもう一度会いたいといったモチーフそのものは、これまで映画のみならずさまざまなメディアで描かれてきてはいますが、本作に関しては従来のものとは似て非ざるトーンが感じられてなりません。

それはまるでこの世とあの世が本当は地続きになっているのではないかと思わせる映像センスであり、生者たちの日常描写にしてから、どことなく足が地から浮いているかのような浮遊感に満ち溢れているのです。



小松菜奈に宮沢氷魚、そして佐藤緋美に中原ナナといった若々しい「生」を感じさせるキャストたちは、突然もたらされる「死」によって、無慈悲にその関係性が引き裂かれていきます。

しかし、そこに臼田あさ美扮する謎の女性・麗が現れることで、生死の境目がどんどん曖昧になっていきます。



その意味では臼田あさ美の存在が今回実に際立っていて、一見死神のようでいながら、実は……といった不可思議なキャラクターを好演するとともに作品の世界観そのものを象徴する人物足り得ています。



徹頭徹尾幽玄な映像美と、生と死の世界を繋ぐかのような荘厳な音楽との融合も素晴らしい効果を発揮していて、まさに文字で記されたドラマ(=原作小説)を映像で描出する上での良質のテキストとしてもおススメしたい作品なのでした。

(文:増當竜也)

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